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仕事上のミスで罰金を給料から差し引かれた(減給)場合


仕事上のミスで会社に何らかの損害を与えてしまったような場合に、会社から「罰金」や「減給」などといった名目で一定の金額を給料から差し引かれてしまうというケースが稀に見られます。

このように仕事上のミスを理由に会社が何がしかのお金を給料から差し引く場合には、「弁償費用の補てんを目的」として差し引く場合と、「ミスを犯したことに対する懲罰的な目的」で差し引く場合の2とおりが考えられますが、「罰金」や「減給」といった名目で差し引かれる場合には「ミスを犯したことに対する懲罰的な目的」を持つ「懲戒処分」の「減給」として差し引かれるものと考えるのが通常です。

なぜなら、「罰金」や「減給」として給料から一定額が差し引かれる場合には「実際に発生した損害額」ではなく「あらかじめ罰金や減給として定められている金額」が差し引かれることになるのが通常ですので「ミスを犯したことに対する懲罰的な目的」を有した「懲戒処分」が行われたものと考えるのが自然だからです。

しかし、使用者(会社)が労働者に対して懲戒処分をすることが認められると考えても、仕事上のミスで損害が発生したことを理由に「罰金」や「減給」が無条件に認められてしまうのでは仕事が困難になればなるほど「罰金」や「減給」のリスクを抱えてしまうことになり労働者としては安心して就労することも困難になってしまいます。

そこで今回は、使用者(会社が)労働者のミスを理由として「罰金」または「減給」などの懲戒処分として給料から一定の金額を差し引くことは認められるのか、といった点について考えてみることにいたしましょう。

※なお、懲戒処分としての「罰金(減給)」ではなく、「弁償費用の補てんを目的」として仕事上のミスで発生した損害額を給料から天引きされた場合の対処法などについてはこちらのページで解説していますので参考にしてください。
▶ 仕事上のミスで壊した物の弁償費用を給料から天引きされた場合

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仕事上のミスを理由に「罰金」や「減給」の名目で懲戒処分として給料から一定の金額を差し引くこと自体は(基本的に)違法ではない

前述したように、仕事上のミスを理由に会社が給料から一定額を差し引く場合には、「弁償費用の補てんを目的」とする場合と「ミスを犯したことに対する懲罰的な目的」とする場合の2種類がありますが、「弁償費用の補てんを目的」として給料からそのミスによって発生した損害額(又はその損害額の一部)を給料から差し引くことは明らかな違法行為として無効と判断されます。

なぜなら、労働基準法の第24条で「給料の全額払い」が義務付けられていますし、同16条では「賠償予定の禁止」が明文化されていますから、仮に労働者が発生した損害額の天引に同意していたとしても会社はそのミスをした労働者に対して給料の全額を支払わなければならず、発生した損害額を給料から差し引くことはできないからです。

(※詳しくは『仕事上のミスで壊した物の弁償費用を給料から天引きされた場合』のページを参考にしてください)

一方、仕事上で発生したミスについて「ミスを犯したことに対する懲罰的な目的」として「減給(会社によっては「罰金」という)」の懲戒処分が行われ、その懲戒手続として一定の金額が給料が差し引かれることは、使用者(会社)の懲戒権の一つとして基本的に認められることになります。

なぜなら、会社は企業秩序を維持して円滑な企業活動を行う必要がありますから、その企業秩序の維持という目的の範囲内で労働者に対して懲戒処分を与えることにも是認されるからです(※この点については過去の裁判例(関西電力事件:最高裁昭和58年9月8日)でも同様に判示されています)。

(※なおこの点については『懲戒処分はどのような場合に認められるのか?』のページで詳しく解説しています)

【仕事上のミスで会社に損害が発生した場合】
会社が給料から損害額を天引き……明らかに労働基準法違反
・会社が懲戒処分として減給(罰金)……会社の懲戒権として基本的に有効

このように、仕事上のミスで給料から一定の金額を差し引かれる場合であっても、それが「損害額の補てん」という意味合いを持つ「弁償(損害賠償)」として差し引かれる場合には労働基準法に違反する違法なものとして無効と判断されることになりますが、「懲罰的」な意味合いを持つ「懲戒処分」としての「減給(罰金)」として差し引かれる場合には基本的に給料の減額(罰金金額の天引)も適法と判断されますので、その違いを認識しておく必要があります。

もっとも、仕事上のミスを理由に会社が「懲罰的」な意味合いを持つ「懲戒処分」による「減給(罰金)」として労働者の賃金から一定金額を差し引く場合には、その「懲戒処分」が「有効」である必要があります。

そのため、後述するように「懲戒処分」としての有効性に問題がある場合には、仕事上のミスを理由に会社が労働者を「減給(罰金)」を命じて給料から一定金額を差し引く行為が無効と判断されるケースもあり得ますので注意が必要です。

仕事上のミスを理由に給料から一定額を差し引かれた場合に、それが「弁償費用の天引」なのか「懲戒処分としての減給(罰金)」なのかをどのようにして判断するか?

前述したように、仕事上のミスを理由に会社が「弁償費用(損害賠償費用)の天引」として労働者の給料からその損害額(又は損害額の一部)を差し引くことができませんが、「懲戒処分としての減給(罰金)」としてであれば給料から一定の金額を差し引くことが認められることになります。

では、労働者は給料から一定額を差し引かれてしまった場合に、どのようにして「弁償費用(損害賠償費用)」として差し引かれたのか、それとも「懲戒処分としての減給(罰金)」として差し引かれたのかを判断すればよいのでしょうか?

会社側が「懲戒処分としての減給(罰金)」として差し引いていると主張していても、それが実質的には「弁償費用の天引」として差し引かれている場合には労働基準法に違反するものとしてその無効を主張できることになるため問題となります。

この点についてはケースバイケースで異なりますので一概には言えませんが、後述するように「懲戒処分としての減給(罰金)」として差し引かれる場合には就業規則であらかじめ定められた金額しか差し引くことが認められませんので、あらかじめ定められている一定額が給料から差し引かれているような場合には「懲戒処分としての減給(罰金)」として差し引かれたものと考えて問題ないと思います。

一方、あらかじめ定められた一定額ではなくそのミスによって会社に「発生した損害額(またはその一部)」が差し引かれているような場合には、そのミスによって発生した損害を補てんする「損害賠償請求」がなされているものと考えられますので、そのような場合には「弁償費用の天引」として労働基準法違反として無効を主張することができるのではないかと思われます。

仕事上のミスを理由とする「減給(罰金)」が無効と判断される場合

前述したように、労働者が仕事上のミスをして会社に損害が発生した場合に会社が懲戒処分としての減給(罰金)を命じ、労働者の給料から一定金額を差し引くことは懲戒権の範囲内の行為として認められることになります。

もっとも、仕事上のミスを理由に「減給(罰金)」することができるのはあくまでも「懲戒権の行使」として是認される場合に限られますので、懲戒処分としての有効性に問題がある様な場合には、その仕事上のミスを理由とした「減給(罰金)」も無効と判断されることになります。

この点、具体的にどのような「仕事上のミスを理由とした減給(罰金)」が無効と判断されるのかが問題となりますが、懲戒処分が有効であるためにはその懲戒事由について「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要とされていますので、仕事上のミスをした労働者に「減給(罰金)」をすることに「客観的合理的な理由」がなかったり、たとえ客観的合理的な理由があったとしても「社会通念上の相当性」がないような場合には、その「減給(罰金)」は無効と判断されることになります(労働契約法第15条)。

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。(労働契約法第15条)

なお、具体的には次のような場合には仕事上のミスを理由とした減給(罰金)はその懲戒処分に客観的合理的な理由や社会通念上の相当性がないものとして無効と判断されるものと考えられます。

(1)就業規則に仕事上のミスを理由とする懲戒事由や減給(罰金)という懲戒処分の種類や程度の定めがない場合

懲戒処分はどのような場合に認められるのか?』のページでも詳しく解説していますが、使用者(会社)が労働者に対して懲戒処分を与える場合にはその懲戒処分の対象となる事由(行為)や懲戒処分の種類及び程度が就業規則に明確に定められておかなければなりません。

なぜなら、使用者(会社)に懲戒権が認められるのは労働者が使用者(会社)に対して企業秩序を遵守しなければならない義務(企業秩序順守義務)を労働契約(雇用契約)負担していることが根拠となりますので、当然その懲戒事由や懲戒処分の種類及び程度なども就業規則に定められることによって労働契約(雇用契約)の内容となっている必要性があるからです。

この点、「仕事上のミスをした労働者」に懲戒処分としてを与える場合には、就業規則に「故意または過失により使用者に損害を与えたとき」というような懲戒事由が定められている必要がありますので、そのような懲戒事由が就業規則に定められていないような場合には前述した労働契約法第15条の「客観的合理的な理由」がないものとして無効と判断されることになります。

また、「仕事上のミスをした労働者」に対して「減給(罰金)」という懲戒処分を与える場合には、”解雇”や”降格”などと共に懲戒処分の種類である「減給(罰金)」や「いくらの金額を減給(罰金)するか」といった懲戒処分の程度が明確に規定されていなければならないことになりますので、このような就業規則の定めがない会社で仕事上のミスをした労働者が「減給(罰金)」と称して一定額を差し引枯れた場合にも前述した労働契約法第15条の「客観的合理的な理由」がないものとして無効と判断されることになるでしょう。

そのため、仮に仕事上のミスをして会社に損害を与えてしまった場合であっても、このような就業規則の定めがあるかないか確認し、就業規則の定めがないような場合には、「罰金」や「減給」として給料から一定の金額を差し引かれたとしてもその無効を主張して差し引かれた金額の返還を求めることが可能となるといえます。

なお、このような就業規則の定めのない会社で「罰金」や「減給」などと称して給料から一定金額を差し引かれた場合には、懲戒処分としてではなく「弁償費用の天引」がなされたものと解釈することもできますので『仕事上のミスで壊した物の弁償費用を給料から天引きされた場合』のページで解説した方法を利用して会社の違法性を追求することも可能と考えられます。

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