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労働契約書(雇用契約書)を交付してもらえない場合の対処法


使用者(雇い主)が労働者を雇い入れる場合には、労働者に対して賃金や労働時間その他の労働条件が記載された労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付することが法律で義務付けられています(労働基準法第15条1項、労働基準法施行規則第5条3項)。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。(労働基準法第15条第1項)
法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。(労働基準法施行規則第5条3項)

しかし、ブラック企業などでは、書面という証拠を残したくないからか、労働契約の締結に際して雇い入れた労働者に労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しない事例もあるようです。

そこで今回は、採用された会社が労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しない(契約書を渡してくれない)場合の具体的な対処法などについて考えてみることにいたしましょう。

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労働契約書(雇用契約書)を交付しない場合とは?

前述したように、雇用主は労働者を雇い入れる場合には、賃金や労働時間などその労働条件が記載されている「書面」を「交付」しなければならないと法律で義務付けられていますから、採用を受けた会社が労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を渡してくれない場合には、その会社に対して「契約書(労働条件通知書)を渡してください」と請求することが可能となります。

この場合に交付が義務付けられる労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)は、当然ながら法律で義務付けられている事項がすべて記載されている契約書でなければ意味がありませんので、仮に労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)の交付がなされていたとしても、その記載事項に法律上義務付けられた事項が記載されていないような場合には、その雇い主は労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付したことにはなりませんから、そのような場合にも「法令上義務付けられた事項がすべて記載されている契約書を渡してください」と請求することが可能です。

なお、雇い主に交付が義務付けられている労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)の記載事項にどのような事項が含まれているかという点についてはこちらのページで解説していますので参考にしてください。

▶ 労働契約書に必ず記載されていなければならない事項とは?

雇い主が労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しない場合の対処法

雇い主が労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しない場合の対処法としては、具体的には以下のような方法が考えられます。

(1)申入書(通知書)や請求書を送付する

採用された会社が労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しない場合において、口頭で「契約書をもらえませんか」と相談しても会社が労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しないような場合には、「労働契約書の交付を求める申入書」などを作成し「文書」という形でその交付を請求するのも一つの方法として有効です。

口頭で「労働契約書を交付しろ」と要求しても会社側が応じない場合であっても、文書(書面)という形で改めて正式に請求すれば、雇い主側としても「なんか面倒なことになりそう」と考える可能性があります。

また、会社との間で何らかの労働トラブルが発生して会社に対して訴えを起こそうと準備している際に、会社から労働契約書を受け取っていないことに気付いたような場合にも、「労働契約書(労働条件通知書)の交付を求める申入書」などの書面を作成し内容証明郵便で送付すれば「裁判を起こされるんじゃないだろうか」というプレッシャーになりますので、改めて申入書(通知書)や請求書という文書で通知するのもやってみる価値はあると思われます。

なお、この場合の申入書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 労働契約書(雇用契約書)の交付を求める申入書の記載例

(2)労働基準監督署に違法行為の是正申告を行う

使用者(会社※個人事業主も含む)が労働基準法に違反している場合には、労働者は労働基準監督署に対して違法行為の是正申告を行うことが可能で(労働基準法第104条第1項)、その場合、労働基準監督署は必要に応じて臨検や調査を行うことになるのが通常です(労働基準法101条ないし104条の2)。

この点、前述したように使用者が労働者を雇い入れる場合にはその労働者に対して法律上決められた事項がすべて記載されている契約書を交付することが労働基準法の第15条1項で義務付けられていますので、仮に労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しない使用者がある場合には、その使用者は労働基準法違反を犯しているということになり、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことが出来ることになります。

労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことによって労働基準監督署が立入調査や臨検を行うことになれば、使用者側が労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しないことの違法性を認め契約書の交付に応じる可能性もありますので、労働基準監督署に違法行為の是正申告をするというのも解決方法の一つとして有効と思われます。

なお、この場合に労働基準監督署に提出する申告書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 労働契約書(雇用契約書)の不交付に関する労基署の是正申告書

ちなみに、労働基準法第15条1項についてはその違反する使用者に対して罰則が設けてあり、労働基準法第120条により30万円以下の罰金に処せられることになっていますので(労働基準法第120条)、労働者を雇い入れたにもかかわらず労働契約書を交付しない使用者(雇い主)がある場合には、その雇い主は「犯罪を犯している」ということになります。

契約書を交付しないような会社は早めに辞めた方が良いかも…

以上のように、労働契約書を発行しない会社に対する対処法はいくつかありますが、労働者を雇い入れたにもかかわらず労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)を交付しないような会社は常識的に考えればまともな会社ではないと考えられますので、仮に上記のような方法で労働契約書(雇用契約書※労働条件通知書でもよい)の交付を受けたとしても、遅かれ早かれ何らかの労働トラブルに巻き込まれることは自明の理であるのではないかと思われます。

そのため、上記のような方法を用いて契約書の発行を求めるのは雇い主との間で何らかのトラブルが発生し雇い主を訴える上で労働契約書が必要になりその証拠集めの一環として契約書を手元に置いておきたいなどの特別な事情がある場合だけにして、そうでない場合には早めに退職し他の会社を探す方が良いのではないかと思います。