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労働契約書に必ず記載されていなければならない事項とは?

採用面接に合格して働き始める際には、正社員・アルバイト・パートの区別なく、雇い主との間で労働契約書に署名押印を求められることになります。

この労働契約書は、雇い主側の会社が作成したものに署名押印するのが一般的ですので、雇い主側の会社が差し出す契約書に「こことここにサインして印鑑を押して」と、言われるがままにサインしてしまうことが多いでしょう。

しかし、この労働契約書は記載しなければならない事項が法律で定められているため、コンプライアンス意識の掛けた企業などではその記載事項に漏れがあったりして、後々いろいろとトラブルの原因になったりすることも多いのが現状です。

そこで、ここでは働き始める際にサインを求められる労働契約書の記載事項などについて考えてみることにいたしましょう。

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労働契約書に記載されていなければならない事項

働き始める際に雇い主との間で取り交わされる労働契約書には、次にあげる5つの事項を記載しておくことが法律により義務付けられています(労働基準法第15条1項、労働基準法施行規則第5条)。

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 就業の場所・従事する業務に関する事項
  3. 労働時間や残業の有無、休日に関する事項
  4. 賃金(給与)に関する事項
  5. 退職(解雇事由なども含む)に関する事項

以上の5つの項目については使用者から交付される労働契約書(雇用契約書)に必ず記載されていなければならないので、雇い主がサインを求めてくる契約書に以上の5項目がしっかり記載されているか確認しておく必要があるでしょう。

仮に雇用主が交付した労働契約書(雇用契約書)に上記の5項目のうち抜けている事項がある場合は、その会社は「法律を遵守していない企業」ということが推定でき、後々トラブルが発生する確率は高くなると思われますので注意が必要です。

(1)労働契約の期間に関する事項とは

雇用契約書に記載されていなければならない事項のうち、労働契約の期間に関する事項とは、雇用される期間のことを言います。

たとえば契約社員など有期雇用契約(いつからいつまでというように働くことのできる期間が定められた契約)の場合は、1年ごとの更新や3年ごとの更新などとされることが多いようなので、その更新期間などが労働契約書に記載されていなければなりません。

一方、正社員の場合は定年退職まで勤め上げることを前提としているのが通常であり「期限を定めない雇用契約」となりますので、多くの場合「定年退職する時期」が明記されることで「労働契約の期間」を記載したというようにされていることが多いと思います。

(2)就業の場所・従事する業務に関する事項とは

就業場所については、「本社」や「○○工場」など、働く場所についての事項になります。

従事する業務に関する事項とは、調理師なら「調理」、警備員なら「警備業務」など具体的な仕事の内容に関する事項となります。

(3)労働時間や残業の有無、休日に関する事項とは

労働時間や残業の有無、休日に関する事項とは、所定労働時間となる始業時間と就業時間などが代表的な記載事項となります。

また残業の有無や休日がいつになるか(土日が休みとか、週休2日制かどうかなど)などもこの記載事項に含まれるでしょう。

(4)賃金(給与)に関する事項とは

賃金(給与)に関する事項とは、月給や時給など具体的な金額、残業代を含む賃金の計算方法、給与の支払時期(給料日)や給与の支払い方法(銀行振り込みなのか手渡しなのかなど)などが該当します。

(5)退職(解雇事由なども含む)に関する事項とは

退職(解雇事由なども含む)に関する事項とは、定年制がある会社の場合は具体的な定年時期をさします。

また、懲戒解雇を規定している企業では、どのような場合に懲戒解雇となるかといった懲戒事由などについても具体的に記載されていなければなりません。

契約書は「書面」が「交付」されなければならない

前述したように、上記の5項目については労働契約書(雇用契約書)に必ず記載されていなければなりません。

そして、この労働契約書(雇用契約書)は必ず「書面」で作成しなければならず、さらにその書面は労働者に「交付」されなければならないと法律に規定されています(労働基準法第15条1項、労働基準法施行規則第5条3項)。

したがって、前述の5項目が記載されている労働契約書(雇用契約書)は必ず書面で作成され、また雇い主はその契約書の控えを労働者に渡さなければならないことになっています。

そのため、労働契約書(雇用契約書)を見せながらその内容を口頭で告知するだけだったり(口頭で告知するだけでは「交付」ではなく「提示」になる)、契約書を書面で作成していてもその控えを渡してくれないような雇い主の下で働く場合には、後々トラブルとなるリスクがあると思った方が良いかもしれませんので十分注意が必要です。

なお、労働契約書(雇用契約書)を交付してくれない場合の具体的な対処法については『労働契約書(雇用契約書)を交付してもらえない場合の対処法』のページで解説していますので参考にしてください。