勤め先の会社(個人事業主も含む)を辞める理由としては、自主退職の他、定年退職や場合によっては解雇など自分が望まない理由の場合も有ると思われます。
このように、労働者が使用者(会社※個人事業主も含む)の職場を退職する理由は様々ですが、いずれの理由にせよ、退職するまでその使用者の下で働いている事実は変わりませんから、その使用者の下で退職するまでに働いた賃金は、その退職理由に拘わらず受け取ることが出来るのは当然です。
例えば、社内で不祥事を犯し懲戒処分で解雇されることになったとしても、解雇されるまでの賃金はその懲戒処分とは全く関係がありませんから、仮に不祥事が発覚して解雇される場合であっても解雇されるまでの賃金を受け取ることが出来ますし、使用者は解雇するまでの給料を支払らなければならない義務があるといえます。
ところで、この退職する際に受け取る賃金はいつもらうことが出来るか皆さんご存知でしょうか?
「給料だから次の給料日にきまってるだろう?」
という声が聞こえてきそうですが、実は次の給料日まで待つ必要はありません。
このような場合、退職する際の給料は退職する労働者が「請求してから7日以内」に受け取ることが可能なのです。
退職の場合、会社は「請求から7日以内」にそれまでの賃金を支払わなければならない
労働者が退職する際の賃金(給料)の支払については、労働基準法の第24条に規定されています(労働基準法第23条第1項)。
「請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い」と規定されていますので、労働者が退職する場合には、その退職が自主退職・解雇・契約期間の満了などその理由、また、会社が取り決めた給料の締め日や支給日の規定の如何にかかわらず、使用者(会社※個人事業主も含む)は労働者に対して労働者から請求があってから7日以内にそれまでの給料の全額を支払わなければならないことになります。
例えば、給料の支払いが「毎月末締めの翌月25日払い」になっている会社の場合を例にとって考えてみましょう。
この場合、仮に労働者が退職するのが10月31日であったとすると、退職する際に受け取る給料の締め日は10月31日となりその支給日は翌月の11月25日ということになりますから、退職する労働者が会社に何も言わない場合には退職日までの給料は11月25日に支払われることになります。
しかし、この場合に退職する労働者が10月31日に退職する際に「退職するまでの給料は退職してすぐに支払ってください」と請求した場合には、使用者(会社※個人事業主も含む)はその請求があった日から7日以内に退職者が退職するまでの給料を支払わなければならないということになりますから、この場合の労働者は11月7日までに退職するまでに発生した賃金の全額を受け取ることが出来るということになります。
また、例えば仮にこの場合に労働者が退職するのが11月10日であったとすると、通常の給料の支払い日は12月25日となりますが、退職する11月10日に給料の支払いを請求した場合には、11月17日までに退職するまでの給料を受け取ることが出来るということになります。
もちろん、この労働基準法第23条の規定は労働者から「請求があった場合」に限られますから、退職する際に労働者が何も言わない場合は通常の給料日に支払われることになります。
しかし、会社を退職(解雇される場合も含む)する場合には、次の職探しなどの必要もあり何かとお金が必要になる場合も多いと思いますので、このような労働機銃法の規定が存在していることを覚えておくのも損ではないと思います。
なお、この労働基準法第23条の規定は、賃金だけでなく給料から天引きされていた積立金(社員旅行の積立金など)や保証金、貯蓄金などの名称の如何に拘わらず、労働者の金品を会社が一時的に預かっているような場合全て対象となりますので、そのような金品を会社に預けている場合には、退職から7日以内に会社に対して「預けている金品を支払ってください」と請求することが出来ることになります。
7日以内に給料が支払われない場合
以上のように、労働者が退職する場合には、その退職が自主的なものである場合だけでなく、解雇や契約期間の満了など労働者の望まない理由であったとしても、退職する際に請求さえすれば退職から7日以内に退職するまでに発生している給料の全額の支払いを請求することが出来ます。
なお、このような労働基準法の規定に違反して、会社が労働者から請求があったにもかかわらず退職から7日以内にそれまでの給料を支払わない場合の対処法については、社内旅行の積立金など会社に積立金がある場合に退職する際の注意点などについて解説した『社員旅行の積立金は退職する際に返してもらえるか?』のページに記載していますので参考にしてください。