広告

退職届・退職願を内容証明郵便で送る際に注意すべきこと

会社を辞めようと思う場合には、上司に退職届(退職願)を提出して退職の意思表示をするのが一般的です。

この退職届(退職願)の提出については、通常は書面で作成した退職届(退職願)を上司などに手渡しで提出することが多いと思われますが、場合によっては内容証明郵便で送付することもあります(※例えば会社側が受け取りを拒否している場合など)。

内容証明郵便は送付した書面が確実に相手方に届けられていることが証明される郵便方法となりますので、会社側が退職届(退職願)の受理を拒否するなど会社側が不当に退職を妨害している場合には内容証明郵便を利用して退職届(退職願)を送付することは非常に有効といえます。

しかし、内容証明郵便はその送付した書面が証拠として確実に残される通知手段となりますので、内容証明郵便を利用することによってかえって自分が不利な状況に陥ってしまうリスクも存在しています。

そこで今回は、退職届(退職願)を内容証明郵便で送付する場合に注意しておきたい点について少し解説してみることにいたしましょう。

広告

内容証明郵便は会社側にとっても重要な証拠となることを理解しておく

内容証明郵便は、内容証明郵便を利用して送付した文書が送付先の相手方に確実に送付されていることを郵便局という公的な団体が証明してくれる郵便手段であり、送付した書面と同一内容の書面が送付する本人である「通知人」と書面を受け取る相手方である「受取人」、そしてそれを送付した「郵便局」の3か所に保管されるものです。

そのため、その送付した書面は通知を出す側の証拠となる反面、書面を受け取る相手方においても証拠とすることが出来ることになります。

これを退職届(退職願)を送付する場合で考えると、退職届(退職願)を内容証明郵便で会社に送付した場合には、その送付した退職届(退職願)はそれを送付する労働者本人だけでなく、それを受け取る会社側にとっても証拠にできるということになります。

したがって、仮に後に裁判になった場合には会社側もその内容証明郵便で送付された退職届(退職願)を裁判に「証拠」として提出することが出来ますから、仮に内容証明郵便で送付した退職届(退職願)に労働者が自分の不利になるような事実を記載してしまった場合には、その事実は会社側に有利な証拠として利用されてしまうことになります。

このように、内容証明郵便で退職届(退職願)を送付した場合には、その送付した退職届(退職願)は会社側にとっても有効な証拠となってしまうことも認識しておく必要があります。

余計なことは極力書かないことを心掛ける

前述したように、内容証明郵便で退職届(退職願)を送付する場合には、その送付された退職届(退職願)は会社側においても証拠として利用することが出来ることになりますので、その文面には極力余計な事は記載しないように注意する必要があります。

余計なことを記載してしまうと、その記載した事項が「証拠」として残されることになりますので、仮に自分に不利になるような事実をそこに記載してしまっていた場合、後に裁判になったような場合にその内容証明で送付した退職届(退職願)が自分に不利な証拠として利用されてしまう可能性があるからです。

たとえば、期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)の場合においてその契約期間の途中で退職する場合には「やむを得ない事由」があることが必要ですが(民法628条)、この場合にA・B・Cというの3つの異なった「やむを得ない事由」が原因となって退職することになったします。

この場合に、仮に退職届(退職願)に「Aという事由が原因で退職する」というように記載して内容証明郵便で送付してしまった場合、「Aという事由で退職した」という事実が証拠として証明されてしまうことになりますから、もしも途中で「Aという事由がやむを得ない事由にあたらない」と判断されることに気付いて退職する理由を「Bという事由」に変更しようと思っても、自分が退職した理由は「A」という事由であることが内容証明郵便で証明されてしまっていますから、「B」という事由に変更することが難しくなってしまいます。

このように、退職届(退職願)を内容証明郵便で送付してしまうと、その内容証明郵便で送付した退職届(退職願)に記載した内容に縛られてしまうことになりますので、退職届(退職願)を内容証明郵便で送付する場合には、その文面には極力不必要な文章は記載しないようにした方が無難です。

必要最小限しか記載しておかなければ「〇月○日に退職の意思表示をした」という事実以外の点については後になって自分の主張を変更することが容易になりますので、退職届(退職願)を内容証明郵便で送付する場合にはその文面は極力シンプルなものにする方が良いと思います。

退職届(退職願)は「退職する意思」を表示するだけのもの

前述したように、退職届(退職願)を内容証明郵便で送付する場合にはその退職届(退職願)はそれを受け取る会社側にとっても証拠として利用できるものになりますので、その記載は極力シンプルなものにする方が無難です。

そもそも退職届(退職願)は自分が「退職する意思があること」を会社側に通知するものに過ぎませんから、退職届(退職願)に自分が「退職する理由」や「退職する原因」を記載する必要は全くありません。

労働法上、労働契約に期間が定められていない雇用契約(無期雇用契約)の場合には労働者は「いつでも」自由に退職することが認められていますから(民法627条)、無期雇用契約の場合には特別な理由が無くても自由に退職することが可能であって退職届(退職願)にその退職理由を記載する必要がないのは明らかです。

また、労働契約に一定の期間が定められている雇用契約(有期雇用契約)の場合にはその契約期間の途中で退職する場合には「やむを得ない事由」が必要となりますが(民法628条)、その場合であってもその「やむを得ない事由」が問題となるのは会社側が退職の効果を争ってきた後の話であって、退職届(退職願)を提出する時点では単に「○月○日をもって退職する」という退職の意思表示だけを通知しておけば問題ありませんから、「やむを得ない事由」についてまで退職届(退職願)記載しておかなければならない義務はありません。

このように、退職する場合に提出する「退職届(退職願)」には、単に「退職する意思があること」を記載しておけばよく、その理由や民法628条の特段の事由等を記載する必要もありませんので、そのような余計なことは記載せずに単に「○月○日をもって退職いたします」と記載しておけば全く問題ないのです。

退職届(退職願)に不必要な「退職の理由」や「やむを得ない事情」を記載してしまうと、それが証拠として残されてしまい、自分に不利な証拠として扱われる可能性もありますので、退職届(退職願)を内容証明郵便で送付する場合にはその文面は極力簡潔なものとし「○月○日をもって退職いたします」というようなシンプルなものが安全だと思います。

退職届(退職願)の記載例

退職届のひな型は以下のような記載で問題ないでしょう。

代表取締役 ○○ ○○ 殿

退職届

私は、都合により、〇年〇月〇日をもって退職いたします。

以上

〇年〇月〇日

東京都世田谷区○○一丁目〇番〇号

八女 益代 ㊞

なお、内容証明郵便で送付する場合のひな型は『退職届・退職願のひな型(内容証明郵便で送る場合)』のページを参考にしてください。

※セクハラやパワハラなど会社側の問題を理由に退職する場合は単に「私は、〇年〇月〇日をもって退職いたします」などと記載してください。「都合により」等の文言を入れてしまうと「自己都合退職」扱いにされてしまい失業保険給付などで不利益を受ける可能性がありますので注意が必要です(※セクハラやパワハラの責任を会社側に裁判等で問いたい場合は退職届(退職願)を提出する前に弁護士等に相談する方が良いでしょう)。

※表題は「退職願」としても構いません。「退職届」と「退職願」の文言はどちらを使用しても退職の効果(または退職の意思表示の撤回の効果)に影響の違いを生じさせることはありません。