このページでは、退職する際に、勤務期間中に雇い主から技術指導を受けたことを根拠に雇い主から技術指導料の名目で金銭の支払いを請求されている場合に、労働基準監督署に対して違法行為の是正申告を行う場合の申告書の記載例(ひな形・文例)を公開しています。
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退職する際に、在籍中に技術指導や社内講習を受けたことを理由に技術指導料等の名目で金銭を請求されている場合の労働基準監督署への違法行為の是正申告書の記載例
〇〇労働基準監督署長 殿
労働基準法違反に関する申告書
平成〇年〇月〇日
申告者
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 神奈川県横浜市青葉区〇〇町〇番〇号
氏名 押江手茂呂太
電話番号 090-****-****
違反者
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都渋谷区〇〇町〇番〇号
名称(屋号) 美容室サロン・ド・ヘター
代表者 金原伊奈代
電話番号 03-****-****
労働基準法104条1項に基づき、下記のとおり労働基準法に違反する事実を申告いたします。
記
1 当事者
違反者は美容室を営む個人事業主であり、渋谷区道玄坂の店舗で営業している。
申告者は、平成〇年〇月に美容師(入社当初は見習い)として入社し、美容師補助として勤務している。
2 労働基準法に違反する事実
申告者は平成○年○月に違反者に入社する際、美容師の資格を所持していたが店舗での実務経験がなく、また全国大会で3位に入賞した違反者の技術を習得したかったこともあって、見習いとして勤務を始めた。
平成○年○月、申告者は家庭の事情から違反者を退職することになったが、入社時に「入社後3年以内に退職する場合には技術指導料として入社から退職まで1月あたり3万円を支払う」という誓約書に署名していることを理由に違反者から技術指導料名目での金員の支払いを求められている。
3 是正措置の申立
違反者の行為は、労働基準法16条に違反する。よって、速やかに調査を行うとともに是正措置をとられるよう求める。
4 添付資料
・3年以内に退職する場合は指導料を支払う旨の誓約書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、将来的に裁判になる可能性がある場合にはA4用紙でプリントアウトするようにしてください。
※「当事者」の欄
当事者の欄は、会社やご自身の会社の業務に合わせて適宜書き直してください。
なお、匿名で申告したい場合は申告者の欄は空欄のまま提出しても構いません。
※「是正措置の申立」の欄
是正措置の申立の欄には、会社の行為が労働基準法の何条(何項)に違反するのかを記載します。
この事例では、技術指導料を支払わなければ退職できないかが問題となっており、「3年以内に退職する場合は技術指導料を支払う」旨の誓約が「労働契約の不履行について違約金を定め」たことにあたると考えられるため、労働基準法の第16条に違反するという文章になっています。
【労働基準法第16条】
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
なお、暴行や脅迫などの手段を用いて「技術指導料を支払わないと辞めさせない」などと退職を妨害されている場合には強制労働の禁止を規定した労働基準法の第5条に違反する可能性もありますので、「違反者の行為は、労働基準法第5条および第6条に違反する。」と記載しても構いません。
【労働基準法第5条】
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
なお、労働基準監督署に対する違法行為の是正申告は会社が労働基準法の何条に違反しているかが前提となりますので、どの条文に違反するか分からない場合は労働基準監督署に相談に行って聞いてみるか、事前に弁護士などの法律専門家に相談する方が良いでしょう。
※「添付書類」の欄
添付書類の欄には、労働基準法違反の事実を証明するようなものを記載します。
添付する書類が特にない場合は記載しなくても構いませんが、記載した書面については必ずこの申告書と合わせて提出(添付)しなければなりませんので注意してください。
なお、上記の文例では、「3年以内に退職する場合は技術指導料を支払う」と誓約したことを証明するために誓約書のコピーを添付するという形にしています。
なお、添付書類として提出する文書の「原本」は裁判になった際に使用する可能性がありますので、労働基準監督署に対しては原本ではなく「写し(コピー機で複写したもの)」を提出するようにした方が良いでしょう。
※違法申告したことを会社に知られたくない場合
労働基準監督署への違法行為の是正申告は、労働基準監督署には氏名を明らかにしつつも会社には匿名にして申告することも可能です。
監督署と会社双方に対して自分の名前を知られたくない場合には「1」の「当事者」の「申告者」の欄を空欄にして提出すればよいですが、監督署には名前を告知しても構わない場合には、「1.当事者」の「申告者」の欄に名前を記入したうえで申告書の末尾に「5.備考」という項目を追加して
「本件申告をしたことが違反者に知れると勤務先で不当な扱いを受ける恐れがあるため、違反者に対しては申告者の氏名を公表しないよう求める。」
という文章を挿入してください。
是正申告したことを会社に知られても構わない場合は、上記の記載例のように備考の欄を削除しても構いません。
なお、この免許(資格)取得費用の返還に関する労働基準監督署への違法行為の是正申告手続きの詳細については『退職時に資格や免許の取得費用を請求された場合の対処法』のページでご確認ください。