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整理解雇(リストラ)に関する労働局の申立書の記載例

このページでは、リストラによる人員削減の一環として解雇(整理解雇)された場合に、労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。

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なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。この書式例(ひな形例)を使用して生じる一切の損害につき当サイトの管理人は責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。

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リストラで解雇(整理解雇)された場合に労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例

(1)整理解雇の4要件のうち「解雇回避努力義務」が尽くされていないことを理由とする場合


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都板橋区〇〇町三丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 八女田内蔵
電話番号 080-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都杉並区〇〇五丁目〇番〇号
名称 株式会社リストラシステムズ
代表者 梨須戸蘭子
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

 解雇を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、リスの柄をトラの柄模様に瞬時に変更するスマートフォン向け画像処理アプリ「リストラ動物園」を開発及び配信する従業員73名の株式会社である。
 申立人は、平成〇年〇月にアプリケーションエンジニアとして被申立人に入社し、スマートフォン向けアプリの開発およびメンテナンス業務に従事していたが、被申立人が経営環境改善を目的として人員整理を行い、整理解雇(いわゆるリストラ)の対象として選定されたことから、同年○月○日、同月末日をもって解雇する旨言い渡された。
 しかしながら、たとえ整理解雇であっても、それが解雇である限り労働契約法第16条が適用され、「人員削減の必要性」「解雇回避努力義務」「人選の合理公正性」「説明協議義務」のいわゆる「整理解雇の4要件」が満たされていない限り、その解雇は客観的合理的な理由があるとはいえず社会通念上の相当性も認められないものとして無効と判断されるものである。
 この点、仮に被申立人において経営環境の悪化から人員整理の一環として人員削減の必要性があったと考えても、被申立人において不採算事業からの撤退や役員報酬の削減、不要資産の売却、その他希望退職者の募集など、人員削減以外の方法による経営環境の改善策がとられた事実はないから、整理解雇の場合に必要とされる「解雇回避努力義務」が十分に尽くされたとはいえないはずである。
 したがって、被申立人が申立人に対して行った整理解雇に客観的合理的理由はなく、社会通念上相当ともいえないから、当該解雇は労働契約法第16条に違反し権利の濫用として無効である。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年〇月下旬、上司の〇〇から会議室に呼び出され、「経営環境が悪化してリストラが必要になったから、君には来月一杯で退社してもらいたい」と告知され、一方的に解雇を言い渡された。
 これに対して申立人は納得できなかったため「役員報酬のカットとかアプリの売却とか他の方法と取るのが先決じゃないですか」などと抗議したが、「役員会議で決まったことだから」と回答するのみで一切聞き入れてもらえなかった。
 そのため申立人は翌月の〇日付の「解雇の撤回を求める申入書」を作成し内容証明郵便で被申立人宛て送付したが、その後も一切解雇が撤回されるとはなく現在に至っている。

4 添付資料

・解雇を命じた辞令書の写し 1通
・解雇の撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。

(2)整理解雇の4要件のうち「選定基準等の合理性(公正性)」に問題があることを理由にする場合

整理解雇の4要件のうち「選定基準等の合理性(公正性)」に問題があることを理由に労働局に紛争解決援助の申し立てをする場合は、上記の記載例の「この点」の項の文章を以下のような記載例(文例)と差し替えてください。

この点、仮に被申立人おいて経営環境改善のために「人員削減の必要性」があり人員削減以外の方法をとるなど「解雇回避努力義務」が尽くされていたとしても、被申立人が申立人を解雇の対象者として選定した基準は「勤務態度が悪い」「協調性に欠ける」「他の社員と比較して作業能率が悪い」などといった極めて抽象的なものであって、その合理性や具体性、公正性等を欠くものといえるから、被申立人において整理解雇の場合に必要とされる「人選の合理性(公正性)」の要件を満たしているとはいえないはずである。

(3)整理解雇の4要件のうち「説明・協議義務」が尽くされていないことを理由にする場合

整理解雇の4要件のうち「説明・協議義務」が尽くされていないことを理由に労働局に紛争解決援助の申し立てをする場合は、上記の記載例の「この点」の項の文章を以下のような記載例(文例)と差し替えてください。

この点、仮に被申立人において経営環境改善のために「人員削減の必要性」があり「解雇回避努力義務」が尽くされて「人選の合理性(公正性)」が認められたとしても、その解雇の対象とされた申立人に対して解雇の必要性や人選の理由等について十分な説明は一切なされておらず、被申立人が事前に協議の場を設けるなどの措置をとった事実も存在しないから、被申立人において整理解雇の場合に必要とされる「説明・協議義務」の要件を満たしているとはいえないはずである。

※「援助を求める理由」の欄について

援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。

上記の記載例では、まず整理解雇の場合にも労働契約法第16条が適用されることになり、解雇が適法と判断されるにはいわゆる「整理解雇の4要件」としての「人員削減の必要性」「解雇回避努力義務」「人選の合理公正性」「説明協議義務」が必要となること、またこの要件を満たさない場合には労働契約法第16条の「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」の基準を満たさないことになりその解雇は権利の濫用として無効と判断されることを説明し、そのあとに「解雇回避努力義務」や「人選の合理公正性」「説明協議義務」などが尽くされていない事実を挙げることで会社側の解雇に違法性があることを説明する文章にしています。

なお、このリストラを理由に整理解雇された場合の法律的な考え方や具体的な対処法についてはこちらのページで解説していますので参考にしてください。

▶ リストラで解雇(整理解雇)された場合の対処法

※「紛争の経過」の欄について

紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。

上記の事例では、上司に呼び出されて一方的に整理解雇を告げられたこと、それに抗議しても聞き入れてもらえなかったこと、文書で撤回を求めたものの現在に至るまで解雇が撤回されていないことなどを簡単に記載しています。

※「添付資料」の欄について

添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。

上記の記載例では整理解雇による解雇を受けたことを明らかとするために「解雇を命じた辞令書」の写しを、また書面で解雇の撤回を求めたことを明らかとするために「解雇の撤回を求める申入書」の写しを添付することにしています。

なお、この場合に添付する「解雇の撤回を求める申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 整理解雇の無効・撤回を求める申入書の記載例

ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。

(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)

※ 様式について

労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。

上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。

様式 | 東京労働局

もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。