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寝坊して遅刻したことを理由とする解雇に関する労働局の申立書

このページでは、寝坊して遅刻したことを理由に解雇されてしまった場合に労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。

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なお、この記載例(ひな形・書式)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。

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寝坊して遅刻したことを理由に解雇された場合に労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 大阪府茨木市〇〇町三丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 仁戸根須瑠世
電話番号 080-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 大阪市北区〇〇五丁目〇番〇号
名称 株式会社ノーモア・オーバースレプト
代表者 奥令多良首造
電話番号 06-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

 解雇を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、二度寝防止機能付きアラームのスマートフォン向けアプリ「スッキリゲットアップ」を開発及び配信する従業員73名の株式会社である。
 申立人は、平成〇年〇月にアプリケーションエンジニアとして被申立人に入社し、本社事業所においてスマートフォン向けアプリケーションの開発業務に従事していたが、平成○年〇月に寝過ごして遅刻をし、更にその翌月にも再び寝過ごして遅刻したことから、同年〇月○日、就業規則に規定された普通解雇事由としての「精神または身体の障害により業務に耐えられないとき」に該当するとして被申立人から普通解雇を言い渡された。
 しかしながら、仮に寝坊による遅刻という非違行為が被申立人の定める普通解雇事由に該当するとしても、使用者が労働者を解雇するにあたってはその解雇に客観的合理的な理由があり社会通念上相当といえる事情が無い限り、その解雇は権利の濫用と判断され無効と判断されるものである(労働契約法第16条、高知放送事件:最高裁昭和52年1月31日判決に同旨)。
 この点、申立人が寝過ごして遅刻したことは事実であるものの、その寝過ごして遅刻した行為は純粋に申立人の過失によるものであって故意や悪意ではなく、また遅刻した2回ともその時間は数分から数十分でありさほど長時間ではなく、さらに寝過ごした後もタクシーを手配して出社するなど一刻も早く出社できるよう努力している事実があるから、仮に寝過ごしたことによって遅刻したことが形式的に被申立人の定める普通解雇事由に該当するとしても、それだけの理由をもって解雇という重い処分を下すことは合理性を欠き社会通念上相当とも言えないはずである。
 したがって、申立人が寝過ごして遅刻したことを理由として被申立人が行った解雇の処分は権利の濫用といえ無効である。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年に入って寝つきが悪くなり、寝過ごす日が多くなるようになり、同年〇月の中旬、申立人はいつもの起床時刻を30分ほど超過した時刻に目を覚ましたため急いで準備をし出社したが、終業時刻に間に合う電車に乗ることが出来なかったことから15分ほど遅刻してしまった(1回目の遅刻)。
 この1回目の遅刻については「今度遅刻したら懲戒処分になるかもしれないから気を付けるように」と注意を受けただけで済んだが、その翌月の〇日に再度寝過ごしてしまい、電車に間に合わないためタクシーを利用して出社したが、この際も20分程度遅刻してしまった(2回目の遅刻)。
 申立人はこの2回目の遅刻をした日の夕方に上司の〇〇に会議室に呼び出され「前回の遅刻の反省が出来ていないようだから懲戒処分の会議に掛けられることになったからそのつもりでいるように」と告知された。そして申立人はその数日後の○月○日に再び上司から会議室に呼び出され「続けざまに2回も寝坊して寝過ごしたことは就業規則で規定された懲戒事由の『正当な理由なくして遅刻を繰り返したとき』に該当し解雇が相当という判断になったが、君の再就職のことも考えて普通解雇事由の『精神または身体の障害により業務に耐えられないとき』に該当するものとして懲戒解雇ではなく普通解雇で処理することに決まったから」と告知され、同月末をもって被申立人を解雇されることになった。
 この解雇の通告に対して、申立人は遅刻したことを深く反省し、以後二度と遅刻しないことを決意していため解雇の撤回をしてくれるよう上司に掛け合ったが一切認めてもらえず、その数日後の平成○年○月○日には「懲戒解雇の撤回を求める申入書」を作成して被申立人に文書の形で改めて送付し撤回を求めたが、結局〇月末日をもって被申立人を解雇されたものである。

4 添付資料

・普通解雇を命じた辞令書の写し 1通
・解雇の撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。

※「援助を求める理由」の欄について

援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。

上記の記載例では、寝坊して遅刻することも就業規則などで普通解雇事由や懲戒解雇事由として記載されている場合にはその解雇事由が発生したということが言えるが、労働契約法第16条や過去の裁判例(高知放送事件)では遅刻による解雇があってもそれをもって解雇という重い処分を下すことに客観的合理的な理由がなく社会通念上相当といえる事情が無い限り解雇は無効と判断されることを説明したうえで、この事例の場合は遅刻が20~30分程度と比較的短時間であったこと、また2回目の遅刻の際はタクシーを呼ぶなど遅刻の時間を一秒でも短くするためにできるだけの努力をしていることなどを説明し、解雇に相当するような「客観的合理的な理由」や「社会通念上相当をいえるような事情」も存在しなかったことを説明する文章にしています。

なお、この寝坊して遅刻したことを理由に解雇された場合の法律的な考え方や具体的な対処法についてはこちらのページで解説していますので参考にしてください。

▶ 寝坊で遅刻したことを理由に解雇された場合の対処法

※「紛争の経過」の欄について

紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。

上記の事例では、1回目の遅刻の際は注意だけで済んだものの2回目の遅刻の際に会議に掛けられることを告知され、寝坊して遅刻したことが社内会議で懲戒解雇事由に該当すると判断されたことや、本来は懲戒解雇処分にする予定であったが解雇された後の再就職のことも考えて懲戒解雇から普通解雇に処分を軽減してもらったことなどを記載し(※懲戒解雇よりも普通解雇の方が解雇される労働者の評価は下がらないので次の再就職のことも考えて会社側の行為で懲戒処分相当を普通解雇に変更することはよく見られます)、上司に掛け合っても相手にしてもらえなかったことや「解雇の撤回を求める申入書」を作成して書面という形で撤回を求めたことなどを記載しています。

※「添付資料」の欄について

添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。

上記の記載例では普通解雇処分による解雇を受けたことを明らかとするために「普通解雇を命じた辞令書」の写しを、また書面で解雇の撤回を求めたことを明らかとするために「解雇の撤回を求める申入書」の写しを添付することにしています。

なお、この場合に添付する「解雇の撤回を求める申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 寝坊して遅刻したことを理由とする解雇の撤回を求める申入書

ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。

(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)

様式について

労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。

上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。

様式 | 東京労働局

もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。