このページでは、面接で説明された労働条件と異なる労働条件が労働契約書(雇用契約書)に記載され、面接の際の説明より低い賃金や休日などしか与えられない場合に、使用者に対してその改善を求めるため労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
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面接との際に説明を受けた内容と異なる労働条件や待遇が雇用契約書に記載され、その面接の際の説明とは異なる労働条件や待遇で働かせられている場合に労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都板橋区〇〇一丁目○番○号〇〇アパート〇号室
氏名 宇曽津玖奈
電話番号 080-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都杉並区○○九丁目○番○号○○ビル○階
株式会社 株式会社ナイショ・デ・サゲ・エル
代表者 垣加エル
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
申立人の労働条件を採用面接の際に説明した労働条件に変更し、併せて労働契約書の内容を面接の際に説明した労働条件に変更するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、ハバネロ入り激辛ロールケーキ「杉並ロール」他、西洋菓子を製造・販売する従業員38名の株式会社である。
申立人は、平成〇年〇月にアルバイト従業員として入社し、被申立人が運営する「パティスリー・デ・サゲ・エル板橋区役所前店」でパティシエ補助として勤務している。
申立人は平成〇年〇月中旬、インターネットの求人サイトで見つけた被申立人の求人広告に応募し、同月下旬に被申立人の本社事業所で面接を受け採用されたため翌月の1日から「パティスリー・デ・サゲ・エル板橋区役所前店」において勤務を開始した。
この面接の際、申立人は被申立人の担当者から「時給1000円」と説明を受け求人票にも「時給1000円」と記載されていたことから申立人は「時給1000円」の条件で労働契約が締結されたものと認識していたが、最初の給料日の時給が900円で計算されていたため改めて労働契約書を確認したところ、契約書には時給900円と記載されていたことに初めて気づいた。
そのため申立人は翌〇日、上司である〇〇に「面接の際には時給1000円と説明されていたので時給は1000円で計算してほしい」旨相談したが、「雇用契約書には時給900円と記載されていて君もそれを承知で署名したんだから今さらどうしようもない」と回答するのみで賃金を面接時に説明した条件に改めようとしようとしない。
しかしながら、労働契約書の内容を詳細に確認して署名押印しなかった申立人に若干の落ち度はあるものの、労働者と使用者の間に存在する交渉力の格差を考えれば、被申立人には労働者が労働契約書に記載された労働条件を理解できるよう配慮することが求められるから、申立人が認識していない労働条件が記載された労働契約書が作成されている事実を考えれば、被申立人は契約の時点において、その労働条件を労働者が理解できるよう配慮する義務を怠っていたということが出来る。
よってこのような被申立人の行為は、使用者は労働者に提示する労働条件および労働契約の内容について労働者の理解を深めるようにするとともに、労働者が労働契約の内容についてできる限り書面により確認すると規定された労働契約法第4条1項及び2項に違反する。
3 紛争の経過
申立人は平成○年〇月〇日の面接の際、担当者から労働契約書を提示され署名捺印を求められたが、契約書の内容を詳細に確認すると相手に失礼になると考えたため、契約書の最初の部分のみ目を通しただけで内容を詳細に確認することなく署名押印して労働契約書の控えを受領した。
その後最初の給料日となる〇月25日に給与明細書を確認したところ時給900円で計算された賃金しか支給されていなかったことから労働契約書を確認したところ、契約書の最後の部分に賃金が900円と記載されていることに初めて気付いた。
そのため申立人は上司の〇〇に対し「面接の際は時給1000円という説明を受けたから契約書は記載間違いではないか」と相談したが「契約書に時給900円と記載されているんだから時給は900円しか払えないだろう、君もそれを承諾の上でサインしたんだよね」と回答するのみで一切取り合おうとしない。
4 添付資料
・労働契約書の写し 1通
・〇月分の給与明細書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を起こしていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。
上記の事例では、労働者が面接の際に説明を受けた内容とは異なる労働条件(上記の事例では時給)が記載され、それに気づかずに署名押印してしまった事実があるものの、そのような労働者が理解・承諾していない労働契約書に署名させた使用者側の行為は、使用者が労働者に提示する労働条件および労働契約の内容について労働者の理解を深めるよう努めなければならないと規定した労働契約法第4条1項に、また労働者が労働契約の内容についてできる限り書面により確認すると規定された労働契約法第4条2項に違反するという文章にしています。
なお、このような面接で説明された労働条件と異なる労働条件が労働契約書(雇用契約書)に記載され面接の際の説明より低い賃金や休日などしか与えられない場合の具体的な対処法などについてはこちらのページでご確認ください。
▶ 面接と違う内容の労働条件が雇用契約書に記載されている場合
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間に発生した紛争がどのようなきっかけで発生し、会社とどのような交渉を行ってきたのか、というその経緯を記載します。
上記の事例では、最初の給料支給日に時給900円で賃金が計算されていたため労働契約書を改めて確認したところそこで初めて時給が900円で契約されていたことに気づいたこと、またその改善を求めて上司に相談したものの全く話を聞いてもらえなかったことを紛争の経緯として記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の事例では、「時給900円で労働契約書が作成されてしまったこと」を明らかとするために「労働契約書」の写しを、また「時給900円で給料が計算された給料が支払われたこと」を明らかとするために「〇月分の給与明細書」の写しを添付することにしています。
なお、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。
(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)
様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。
上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。