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休日に来る上司からの電話やメール、返答しないといけないの?

会社によっては、たとえ休日であっても上司や同僚からの電話やメールに返答することが義務付けられている場合があるようです。

しかし、せっかくの休日にも拘わらず会社からの電話やメールに応答しなければならないとなると、頭や心のスイッチを仕事モードから休日モードに切り替えることができなくなってしまい不合理です。

そこで今回は、休日に会社からの電話やメールに応答しなければならないという社内規定や社内の取り決めがある場合、それに従って上司や同僚からの電話・メールに返答しなければならないのか、また、そのような休日の電話やメールが義務付けられている場合の具体的な対処法などについて考えてみることにいたしましょう。

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休日に上司や同僚から電話やメールが来ても出る必要はない

結論から言うと、休日に上司や同僚から電話やメールが来たとしても、法律的にはそれに応答したり返答する必要はありません。

休日は”法定休日”と”法定外休日”の2種類に分類されますが、いずれの休日であっても”休日”は個人の自由に過ごすことができるものであり、会社側(上司や同僚)に「電話に出ろ」とか「メールに返答しろ」などと指示をする権利はありません。

※なお、法定休日と法定外休日の違いについてはこちらのページを参照ください。
▶ ”法定休日”と”法定外休日”の違いとは?

そのため、たとえ社内の取り決めで「休日であっても上司や同僚から電話やメールが来た場合には返答しなければならない」ということになっていたとしても、法律上はそのような取り決めに従わなければならない義務はありませんから、休日に上司や同僚から電話やメールが来たとしても無視して一向にかまわない、ということになります。

休日に上司や同僚からの電話やメールに返答しなければならないという取り決め(社内規定)は違法

前述したように、”休日”については会社(上司・同僚)に指示や命令を行う権利はありませんから、休日に上司や同僚から電話やメールが来たとしても、それに応答したり返答しなければならない法律上の義務はありません。

それにもかかわらず、社内規定や上司などの指示で、休日であっても上司や同僚からの仕事に関する電話やメールが来た場合にはそれに応じなければならない、と決められている企業は多いのではないかと思われますが、このように休日に上司や同僚から電話やメールに返答・応答することを義務付けることに問題はないのでしょうか?

実は、このように休日に上司や同僚からの電話・メールに応答(返答)することを義務付ける行為は、労働基準法に定められた「休日出勤の賃金支払いの規定」と「休日に関する規定」の2つの条項に違反する違法なものと解釈することができます。

① 休日出勤の賃金支払いの規定に違反する

使用者(会社・雇い主)はその雇い入れた労働者が働いた時間(労働時間)については賃金を支払わなければならない義務があります。

使用者(会社・雇い主)が賃金を支払う義務のある”労働時間”が具体的にどのような時間を言うのかという点については争いがありますが、最高裁判所の判例では「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」が”労働時間”として賃金の支払い義務が発生する時間と判断されていますので(三菱重工長崎造船所事件:最高裁平成12年3月9日判決)、会社(上司)からの指揮や会社(上司)の命令下に置かれている場合には、たとえそれが実際に本来の業務を行っていない時間(例えば手間時間や休憩・準備・後片付けの時間)であっても、実労働時間として賃金が発生することになります。

ところで、休日であっても上司や同僚から電話やメールが来た場合にはそれに応じなければならないという取り決めや上司からの指示がある場合には、その休日は会社に出勤していないとしても会社側の「指揮命令下」に置かれているということになります。

なぜなら、会社からの電話やメールに応答”しなければならない”と義務化されている場合には、その休日は電話やメールを受信できる場所にいることを求められ、電話やメールが来た場合にはそれに応答・返答することを逃れられない状況に置かれているということが言えるからです。

そのため、仮に休日に上司や同僚から電話やメールが来た場合にはそれに応答したり返答することが義務付けられている場合には、その休日は形式的には”休日”となっているものの、実質的には会社の指揮命令下に置かれているということになり”労働時間”ということになります。

労働時間に該当するということは当然、その時間について賃金が発生しますから、仮に休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答したり返答することが義務付けられている場合には、その電話やメールに返答することが義務付けられている時間について会社は賃金を支払わなければなりません。

しかし、休日に電話やメールに応答したり返答しただけで1日分の休日出勤手当を支払っている会社は無いでしょうから、このように休日に上司や同僚からの電話やメールに応答したり返答することが義務付けている会社は、支払わなければならない賃金を支払っていない会社(休日出勤の賃金を支払っていない会社)ということになります。

この点、休日出勤については労働基準法第37条1項(および政令)に割増賃金の規定が明確に定められていますから、このように休日であっても上司や同僚からの電話やメールに対応することを義務付けている会社は、労働基準法第37条1項に違反する違法な会社ということができます。

なお、休日に電話やメール応対が義務付けられている場合には、その義務付けられているという状態が労働時間ということになりますから、たとえ実際に電話やメールが来なかったとしても、その対応が義務付けられている時間は”実労働時間”として賃金が発生することになります。

② 休日に関する規定に違反する

①で説明したとおり、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」は労働時間となりますから、休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答することが義務付けられている場合には、その休日は形式的には”休日”となっていても実質的には”実労働日”と何ら変わりが無いことになります。

ところで、労働基準法では、使用者(会社・雇い主)はその雇い入れた労働者に対して、少なくとも「1週間のうち1日」または「4週間のうち4日」は休日を与えなければならないと定められています(労働基準法第35条)。

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。(労働基準法第35条1項)
前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。(労働基準法第35条2項)

しかし、前述したように、休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答することが義務付けられている場合には、その休日は形式的には”休日”となっていても会社の「指揮命令下」に置かれた”実労働日(実労働時間)”ということになりますから、その休日は法律的には”休日”ではないと判断されます。

仮に週休二日制を採用している会社で、土日の両日に上司や同僚から電話やメールに応答することが義務付けられているような場合には、休日が1日も与えられていないということになるのです。

このように、休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答することが義務付けられている場合には、法律上義務付けられている休日が与えられていないということになりますから、そのような会社は法定休日を規定した労働基準法第35条に違反するということになります。

なお、この場合も休日に電話やメール応対が義務付けられているという状態そのものが会社の「指揮命令下」に置かれているということになりますから、たとえ実際に電話やメールが来なかったとしても、その対応が義務付けられている限りその休日は”休日”ではなく”実労働日”ということになります。

休日に上司や同僚からの電話やメールに応答するよう指示された場合の対処法

以上で説明したように、会社が労働者に対して休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答することを義務付けることは、労働基準法で定められている休日手当の支払いの規定や法定休日の規定に違反することになりますから、違法な行為といえます。

そのため、もし上司から休日に上司や同僚からの電話やメールに応答するよう命じられた場合には、上記のような法律上の問題があることを伝えてそのような義務付けが違法な行為につながることを理解してもらうように努める必要があるでしょう。

日本の多くの会社の経営者や管理職の中には労働基準法の規定をよく理解していない(または間違って理解している)人が多く、自分たちが労働基準法に違反していることを認識してないまま労働者に不当な要求をするバカな輩も非常に多くいるのが現状です。

そのため、上記のような法律上の問題があることを説明してそのような不当な支持を撤回するように理解してもらうことも必要でしょう。

もし上記のような問題があることを説明しても上司や会社の経営者が休日に上司や同僚からの電話やメールに応答することを命令し続ける場合には以下の方法を採ることも検討してください。

① 労働基準監督署に違法行為の是正申告を行う

上司や経営者に対して休日における電話・メール応対が法律上問題があることを説明しても改善されない場合には、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うというのも解決方法の一つとして有効です。

使用者(会社・雇い主)が労働基準法に違反する行為を行っている場合には、労働者(正社員・アルバイトを問わない)は誰でも、労働基準監督署に対して違法行為の申告を行うことが可能です(労働基準法第104条1項)。

事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。(労働基準法第104条1項)

この違法行為の申告が行われた場合には、労働基準監督署はその申告に基づき、使用者(会社・雇い主)に対して臨検や尋問、書類の提出などを命じることができ、その調査によって法律違反が判明した場合には行政処分や検察への送検などをすることができますから、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことによって会社に監督署からの調査が入り、会社が休日の電話やメール対応の強制を改善する可能性があります。

ただし、「休日に上司や同僚からの電話やメールに応答することを義務付ける行為」は、その行為そのものが労働基準法に違反するのではなく、その休日の電話やメールによる応対を義務づけているにもかかわらず「休日手当が支払われていない」という点や「法定休日が与えられていない」という点が労働基準法に違反するということになりますので、その点の違いをよく理解しておく必要があるでしょう。

なお、この場合に実際に労働基準監督署に違法行為の是正申告を行う場合の申告書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

a) 休日に会社が電話やメールに応答することを義務付けていることを「休日手当が支払われていない」ことを理由に違法行為の是正申告を行う場合
▶ 休日の電話応対義務の賃金不払いに関する労基署の申告書の記載例

b) 休日に会社が電話やメールに応答することを義務付けていることを「法定休日が与えられていない」ことを理由に違法行為の是正申告を行う場合
▶ 休日電話応対義務の休日付与違反に関する労基署の申告書の記載例

② 労働局に紛争解決の援助の申立を行う

全国に設置された労働局では、労働者と事業主の間に何らかの紛争が生じた場合には当事者の一方からの申立に基づいて、紛争解決のための助言や指導、あっせんなどを行うことが可能です(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条および第5条1項)。

都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(省略)に関し、当該個別労働関係紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができる。(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条)
都道府県労働局長は、前条第一項に規定する個別労働関係紛争(省略)について、当該個別労働関係紛争の当事者(省略)の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において当該個別労働関係紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第5条1項)

この点、前述したように会社に対して、休日における上司や同僚からの電話やメールに対する応答の義務化を止めるよう求めたにもかかわらず、会社がその取り決めを改善しようとしない場合には、労働者と事業主の間に”紛争”は生じているということが言えますから、労働局に対して「会社が休日にも電話やメールに応答するよう命令することを止めさせてください」と援助の申立を行うことが可能となります。

労働局に対する援助の申立を行い、労働局の助言や指導に従って会社側が態度を改める場合には、休日の電話やメール応対も改善される可能性がありますのでこの労働局に対して紛争解決援助の申立を行うのも問題の解決方法として有効でしょう

ただし、労働局の助言や指導に強制力はありませんので、会社が労働局の指示等に従わない場合には他の方法による解決方法を考える必要があります。

なお、この場合の労働局に提出する紛争解決援助の申立書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 休日の電話やメールの応対義務に関する労働局への申立書の記載例

③ 弁護士・司法書士に相談する

労働基準監督署への違法行為の是正申告や労働局への紛争解決援助の申立を行っても会社側が休日における電話やメール応対を改善しない場合には、弁護士や司法書士に相談して示談交渉や裁判などを通じて解決することを考えるしかないかもしれません。

なお、労働トラブルに関する法律は全ての弁護士や司法書士が精通しているというわけではありませんので、労働問題を弁護士や司法書士に相談する場合には、労働関係の事件を過去に多く扱ったことがあるか、労働法に精通している弁護士・司法書士を選ぶ方が問題解決への近道になると思われます。

なお、弁護士や司法書士など法律専門家に相談する場合の注意点はこちらのページで解説していますので参考にしてください。