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五輪ボランティアの参加強制に関する労働局の申立書の記載例

このページでは、五輪ボランティアに参加する気が全くないにもかかわらず会社から五輪ボランティアに参加するよう強制させられている場合に、その強制行為を止めさせるため労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。

適宜、ワードなど文書作成ソフトを利用して自由に複製してもかまいませんが、著作権を放棄するわけではありませんので無断転載や配布などは禁止します。

なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。この書式例(ひな形例)を使用して生じる一切の損害につき当サイトの管理人は責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。

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会社から五輪ボランティアに参加するよう執拗に求められている場合に労働局に紛争解決援助の申し立てをする場合の申立書の記載例


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 埼玉県さいたま市大宮区〇〇二丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 森百合子
電話番号 080-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都新宿区〇〇二丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社学徒動員
代表者 小池喜朗
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

 五輪ボランティアへの参加強制を止めるよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、建築物の設計費を大幅に安く見積もるスマーとフォン向けアプリ「おもてなし」を開発・配信する従業員88名の株式会社であり、東京オリンピックの協賛企業である。
 申立人は、〇年〇月にアプリケーションエンジニアとして被申立人に入社し、スマホ向けアプリの開発業務に従事していたが、被申立人が東京オリンピックの協賛企業であることを理由に組織委員会から五輪ボランティアとして20名を確保するノルマを課せられたことから、2018年の9月ごろから頻繁に上司である○○に五輪ボランティアに参加するよう執拗な勧誘を受けた。
 申立人は五輪ボランティアに参加する意思がなかったことからこの勧誘を拒否したが、上司の○○は「組織委員会から割り当てられてるんだから誰かが行かないといけないんだ、若い奴が行くのは当たり前だろう」との回答に終始し、申立人他19名の従業員を指定して、東京オリンピックの開催期間中となる2020年〇月〇日から〇月〇日までの○日間、五輪ボランティアに参加させることを決定した。
 しかしながら、使用者が五輪ボランティアへの参加を労働者に強制する場合、そのボランティアで行う業務は労働者が普段従事している業務とは異なることになり、またそのボランティアを行う場所も労働者が普段就業している勤務場所とは異なることになるから、その参加を強制することは職種や就業場所という労働条件を変更させるものといえるが、労働条件の変更には労働者の同意を要すると考えられるところ(労働契約法8条)、申立人は当該五輪ボランティアへの参加を拒否しており、その労働条件の変更に同意を与えた事実はなく、非申立人は申立人の同意を得ずに労働条件を変更したことになる。
 したがって、被申立人が申立人の意思に反して五輪ボランティアへの参加を強制させることに決定した事実は、労働契約法8条に違反して申立人の労働条件を変更する違法・無効なものであるといえる。

3 紛争の経過

 申立人は2018年9月、勤務中に上司から会議室に呼び出され、五輪ボランティアに参加するよう求められたが、五輪ボランティアに参加する気が全くなかったことからこれを拒否した。
 申立人はその後も週に1回のペースで上司に会議室に呼び出され五輪ボランティアへの参加に協力するよう求められたがその都度拒否していたところ、同年12月に入ってから、被申立人が重役会議で申立人他19名を五輪ボランティアの参加要員として指定し、2020年〇月〇日から〇月〇日までの○日間、国立競技場周辺で外国人観光客の案内業務にあたらせることを決定し、その旨の辞令書が当該申立人を含めた20名に交付された。
 これに対して申立人は、五輪ボランティアへの参加強制が職種と就業場所の変更にあたり労働条件の変更として労働者の個別の同意のない限り無効である旨説明したが、被申立人は一切反論を受け付けず、「五輪ボランティアへの参加を拒否するなら降格・減給もありえる」等の告知を行い、五輪ボランティアへの参加要員として指定された20名の労働者を強制的にボランティアに参加させようとしている。

4 添付資料

・五輪ボランティアへの参加を命じた辞令書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。

申立書記載の要領

「援助を求める理由」の欄について

援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反もしくは労働契約違反行為を行っていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。

上記の記載例では、使用者が労働者に対して五輪ボランティアへの参加を強制する場合には、労働者が実際に従事する職種と就業場所を、その五輪ボランティアの期間中に限ってボランティアを実施する業務と場所に変更することになるため、それ自体が「労働条件の変更」に該当するものとして労働契約法8条の規定から労働者の個別の同意を必要と解釈されますが、労働者の同意を得ずに五輪ボランティアへの参加を強制していることから、労働者の同意を得ずに労働条件を変更したという点に労働契約法8条に違反する違法行為また労働契約に違反する契約違反行為があったということを指摘する文章にしています。

「紛争の経過」の欄について

紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。

上記の事例では、会社から五輪ボランティアへの参加を要請された際にそれを拒否したこと、またその拒否した後も執拗に参加を求められ、最終的には会社の会議で一方的に五輪ボランティアへの参加を決められてしまったことなどを記載しています。

「添付資料」の欄について

添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。

上記の記載例では、「会社から五輪ボランティアへの参加を強制させられていること」を明らかとするために会社から交付された「五輪ボランティアへの参加を命じた辞令書の写し」を添付することにしています。

ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。

(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)

様式について

労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。

上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。

▶ 様式 | 東京労働局

もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。