広告

懲戒処分による降格を命じられた場合の労働局の申立書

このページでは、懲戒処分による降格を命じられたことを理由として、労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例(ひな型・書式)を後悔しています。

適宜、ワードなど文書作成ソフトを利用して自由に複製してもかまいませんが、著作権を放棄するわけではありませんので無断転載や配布などは禁止します。

なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。この書式例(ひな形例)を使用して生じる一切の損害につき当サイトの管理人は責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。

広告

懲戒処分による降格を命じられたことを理由として労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例

(1)懲戒処分の定めが就業規則に明記されていないことを理由とする場合


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都杉並区〇〇九丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 海都蘭蔵
電話番号 090-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都世田谷区〇〇三丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社サダメズコウカク・システムズ
代表者 定目奈伊代
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

 懲戒処分に基づく降格を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、バレンタインデーにもらえるチョコレートの数を瞬時に予測するスマートフォン向けアプリ「義理チョコカウンターZ」を開発及び配信する従業員214名の株式会社である。
 申立人は、平成〇年〇月にアニメーターとして被申立人に採用され、スマホ向けアプリケーションで表示させるキャラクターのアニメーションデザイン業務を担当していたが、平成○年〇月からアニメーションデザイン部のグループリーダーに選任されたため現在はキャラクターデザイン部門の管理職として勤務している。
 申立人は、平成○年〇月ごろから既婚者である部下の女性と親密な交際をするようになったが、平成○年○月上旬、当該女性従業員とホテルに入るところを他の従業員に見られたことからそのうわさが社内で広がるようになり、同月下旬、被申立人から懲戒事由の「社内の風紀を乱したとき」に該当したという理由でグループリーダーから一般職への降格を命じられた。
 しかしながら、使用者が労働者に対して懲戒処分を行う場合には、その懲戒事由や懲戒処分の種類及び程度が就業規則に記載されその懲戒権の根拠が労働契約の内容となっていることが必要であり(労働基準法の第89条9号、国鉄札幌運転区事件最高裁昭和54年10月30日に同示)、かかる就業規則の定めがない場合には、その懲戒処分には客観的合理的な理由がないものとして労働契約法第15条により権利の濫用として無効と判断すべきものである。
 この点、申立人が既婚者の従業員と交際した事実はあるものの、被申立人の就業規則には懲戒事由として「社内の風紀を乱したとき」などという事項は定められておらず、また就業規則には懲戒処分の種類として懲戒解雇や減給、出勤停止などの定めは明記されているものの”降格”についてはその定めがなされていない。
 したがって、被申立人の行った懲戒処分としての降格には客観的合理的な理由が存在しないといえるから、その懲戒処分としての降格は権利の濫用として無効なものといえる。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年○月上旬、上司の〇〇から会議室に呼び出され「君の不倫で社内の風紀が乱れたからグループリーダーから外れてもらうことになった」と一方的にグループリーダーから一般職(平社員)への降格を命じられた。
 これに対して申立人は、「社内の風紀を乱したとき」という懲戒事由や「降格」という懲戒処分の内容が就業規則に定められていないことを指摘して就業規則に根拠のない懲戒処分は違法である旨抗議したが、「社内の風紀が乱れたのは事実だから仕方ないだろう」「お前が不倫したのが原因なのにつべこべいうな」というのみで一切聞き入れてもらえなかった。
 そのため申立人は、同年○月○日付で「懲戒処分による降格の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法でその撤回を申し入れたが、現在に至るまで当該降格の処分は撤回されていない。

4 添付資料

・懲戒処分に基づく降格を命じた辞令書の写し 1通
・降格の撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする場合はA4用紙を利用するようにしてください。

(2)懲戒処分としての降格処分が客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当とはいえないことを理由とする場合(※企業秩序を乱したとはいえない事例)


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都台東区〇〇六丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 見駄志都乱次郎
電話番号 090-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都千代田区〇〇二丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社チョーカイシステムズ・濫用
代表者 濫用須留太郎
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

 懲戒処分に基づく降格を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、バレンタインデーにチョコレートを渡してくれそうな女性の表情を読み取る機能を備えるスマートフォン向け顔認識アプリ「義理チョコファインダーX」を開発及び配信する従業員2140名の株式会社である。
 申立人は、平成〇年〇月に表情認識ソフトのシステム開発担当者として被申立人に採用されたが、平成○年〇月にアプリ開発課の課長に選任されたためアプリ開発部門の管理職として勤務している。
 申立人は、平成○年〇月ごろから既婚者である部下の女性と親密な交際をするようになっていたが、平成○年○月下旬、その事実を知った数人の従業員の中で噂になったことを契機として、被申立人から懲戒事由の「社内の風紀を乱したとき」に該当するという理由で課長職を解任され一般職(平社員)への降格を命じられた。
 しかしながら、使用者が労働者に対して懲戒処分を行う場合であっても、就業規則で定められた懲戒事由に該当することとなる行為の性質や態様その他の事情に照らして客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められる事情がない場合には、その懲戒処分は権利の濫用として無効と判断されるものである(労働契約法第15条)。
 この点、申立人が既婚者の従業員と交際した事実はあるものの、かかる事実を知っているのは社内でもほんの数人に過ぎないから「社内秩序を乱した」というほどのことはなく、かかる事実を理由として降格という重い処分を下すのは客観的合理的な理由があるとはいえず、社会通念上相当であるともいえない。
 したがって、被申立人の行った懲戒処分としての降格は労働契約法第15条により権利の濫用として無効なものといえる。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年〇月ごろから既婚者である部下の女性と親密な交際をするようになっていたが、平成○年○月下旬、机の上に放置していたスマートフォンにその女性の夫から慰謝料の請求がなされたLINEが表示されていたのを数人の従業員に見られたことからそのうわさが社内で広がるようになり、その数日後に上司の〇〇から会議室に呼び出され「君の不倫で社内の風紀が乱れたから課長から外れてもらうことになった」と一方的に一般職(平社員)への降格を命じられた。
 これに対して申立人は、不倫の事実はあったもののその事実を知っているのは数人にとどまっていたし、それによって社内の秩序が乱れるような「社内の風紀を乱したとき」という事実はなかったから、不倫が発覚したことのみをもって降格という重い処分を与えるのは納得できない旨抗議したが、「お前が不倫なんてするからだろう」「風紀が乱れていないという証拠でもあるのか」とまくし立てるだけで一切聞き入れてもらえなかった。
 そのため申立人は、同年○月○日付で「懲戒処分による降格の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法でその撤回を求めたが、現在に至るまで当該降格の処分は撤回されていない。

4 添付資料

・懲戒処分に基づく降格を命じた辞令書の写し 1通
・降格の撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする場合はA4用紙を利用するようにしてください。

(3)懲戒処分としての降格が権利の濫用にあたることを理由とする場合(※他の不当な目的を持った懲戒処分の事例)


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都台東区〇〇六丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 納得仙太郎
電話番号 090-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都千代田区〇〇二丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社ヤリタイホーダイ・システムズ
代表者 処分須留美
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

 懲戒処分に基づく降格を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、ホワイトデーにマシュマロを返してくれそうな男性の表情を読み取る機能を備えるスマートフォン向け顔認識アプリ「ホワイトお返しポインターⅡ」を開発及び配信する従業員314名の株式会社であり、千代田区に本社営業所があるほか、北海道の旭川市にコールセンターを設けている。
 申立人は、平成〇年〇月にアプリケーション開発担当者として被申立人に採用されたが、平成○年〇月にシステムメンテナンス課の課長に選任されたためシステムメンテナンス部門の管理職として勤務している。
 申立人は、平成○年〇月中旬、被申告者から旭川市のコールセンターのセンター長として勤務できないか打診された際、入社時の労働契約書で勤務地が東京都内に限定されていたことからこれを拒否したところ、その翌日に会議室に呼び出され、過去に2回遅刻したことが「無断で欠勤又は遅刻を繰り返したとき」という懲戒事由に該当するとして課長から一般職への降格を言い渡された。
 しかしながら、使用者が労働者に対して懲戒処分を行う場合であっても、就業規則で定められた懲戒事由に該当することとなる行為の性質や態様その他の事情に照らして客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められる事情がない場合には、その懲戒処分は権利の濫用として無効と判断されるものである(労働契約法第15条)。
 この点、申立人が過去に2度遅刻したことは事実であるため形式的には「無断で欠勤又は遅刻を繰り返したとき」という懲戒事由に該当すると判断することも可能であるが、その遅刻はいずれも2年以上前のことであり、しかも2度の遅刻で会社の秩序を害されたとは考えられないから、かかる事実をもって懲戒処分を下すのは不自然である。
 また、この懲戒処分は申立人が被申立人からの転勤の打診を拒否した翌日に行われていることから、その転勤を拒否したことに対する報復的な意味合いを持つことは明らかであり、社会通念上相当であるともいえない。
 したがって、被申立人の行った懲戒処分としての降格は労働契約法第15条により権利の濫用として無効なものといえる。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年○月上旬、上司の〇〇から会議室に呼び出され旭川市のコールセンターに転勤してもらえないかと打診されたが、入社時の労働契約書で勤務地が東京都内に限定されていたことから転勤に応じなければならない労働契約上の義務はないと判断したため、転勤を拒否したところ、その翌日に一方的に2年前の遅刻を理由として懲戒処分を言い渡され、一般職(平社員)への降格を命じられた。
 これに対して申立人は、2年も前の遅刻で懲戒処分を出すのは納得がいかないことや、転勤を断ったことへの報復として降格を命じるのは違法である旨上司の〇〇に抗議したが、「報復という証拠があるのか?」というのみで一切聞き入れてもらえなかった。
 そのため申立人は、同年○月○日付で「懲戒処分による降格の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法でその撤回を求めたが、現在に至るまで当該降格の処分は撤回されていない。

4 添付資料

・懲戒処分に基づく降格を命じた辞令書の写し 1通
・降格の撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする場合はA4用紙を利用するようにしてください。

申立書の記載要領

※「援助を求める理由」の欄について

援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。

上記の(1)の記載例では、会社が懲戒処分を行うには就業規則にその内容等が定められていることが必要であるにもかかわらず、懲戒処分の根拠とされている「社内の風紀を乱したとき」という懲戒事由や「降格」という懲戒処分の内容が就業規則に定められていないことを指摘し、そのような根拠のない懲戒処分は労働契約法第15条の客観的合理的な理由がないと判断され無効になるというような文章にしています。

(2)の事例では、不倫をしたことは事実であるものの、それによって社内の秩序を乱したということはいえないから、懲戒事由として定められた「社内の風紀を乱したとき」には当たらないと主張し、労働契約法第15条の客観的合理的理由や社会通念上の相当性がない、というような文章にしています。

(3)の事例では、過去に2回遅刻したことは事実であるため「無断で欠勤又は遅刻を繰り返したとき」という懲戒事由に該当することは認めるものの、2年も前の懲戒事由を持ち出して懲戒処分をする必然性がないことや、その懲戒処分が転勤を拒否した翌日になされていることから転勤を拒否したことに対する報復として行われたことは明白であり、そのような不当な目的をもって懲戒処分を行うことに客観的合理的理由はなく社会通念上相当とも言えないとして無効と主張するような文章にしています。

なお、懲戒処分としての降格を命じられた場合の具体的な対処法などについてはこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。

▶ 懲戒処分によって降格させられた場合の対処法

※「紛争の経過」の欄について

紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。

上記の事例では、上司から懲戒処分に基づく降格を命じられた際に、その懲戒処分に客観的合理的な理由がないことや社会通念上相当でないことなどを説明して抗議しても受け付けてもらえず、また文書で懲戒処分の撤回を求めても降格が撤回されなかったことなどを簡単に記載しています。

※「添付資料」の欄について

添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。

上記の記載例では「懲戒処分による降格を受けたこと」を明らかにするために「懲戒処分に基づく降格を命じた辞令書の写し」の写しを、また「文書で降格の撤回を求めたにもかかわらず降格が撤回されなかったこと」を明らかとするために「降格の撤回を求める申入書」も添付することにしています。

なお、この場合に添付する「降格の撤回を求める申入書申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

懲戒処分による降格の撤回を求める申入書の記載例

 

ちなみに、裁判所における裁判と異なり労働局の紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必ずしも必要ではありませんので、紛争の事実を証明できる文書やデータ(画像や音声・画像記録)がない場合には「特になし」と記載して提出しても問題ありません。

なお、「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出するようにしてください。

※ 様式について

労働局に提出する紛争解決申立書に定型の様式は定められていないため適宜の様式で提出して問題ありませんが、東京労働局のサイトから申立書のひな型をダウンロード(Word)することも可能です(東京労働局の様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。

様式 | 東京労働局

もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申立する労働局に事前連絡や相談を行うと思いますので、その相談の際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。

なお、申立書を提出する労働局の具体的な住所等については厚生労働省のサイトで各自ご確認をお願いします→ 都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省)。