広告

妊娠・結婚を理由とした内定取消に関する労働局の援助申立書

このページでは、結婚や妊娠(出産)したことを理由として採用内定(又は内々定)を取り消された場合に、その内定取消の撤回を求めて労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。

適宜、ワードなどの文書作成ソフトで自由に利用してください。ただし、著作権を放棄するわけではありませんので無断転載や配布などは禁止します。

なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。

この書式例(ひな形例)を使用して生じる一切の損害につき当サイトの管理人は責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。

広告

妊娠したことを理由に内定や内々定を取り消された場合に、その撤回を求めるため労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第17条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 群馬県前橋市〇〇町〇番〇号
氏名 枯石伊瑠乃
電話番号 080-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都足立区〇〇三丁目〇番〇号〇〇ビル〇F
名称 株式会社ノットマリー・ドゥー
代表者 忍新須瑠奈
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

内定の取り消しを撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、単身者向けバーチャル家事代行システム「ダーリンのもえもえメイド」などアンドロイド向けアプリケーションを開発・配信する東証マザーズ上場の従業員48人が勤務する株式会社である。
 申立人は、西中島にゃんにゃん女学院短期大学に通う短期大学生であるが、平成〇年〇月、被申立人の本社ビルで行われた採用試験を受験し、同年〇月〇日付の採用内定通知書によって被申立人から採用内定の通知を受けた。
 その〇か月後である同年○月○日、申立人は被申立人から同年〇月〇日から2日間熱海の〇〇ホテルで実施される入社前研修(※実質的には新入社員と在職社員の顔合わせを兼ねた慰安旅行)への参加を案内する通知書の送付を受けたが、交際関係にあった男性との間に子供ができたため急遽入社式の前に挙げることになった結婚式の日取りが研修日に重なっていたことから、この入社前研修への出席を辞退する旨の返答を行った。
 これに対し被申立人は同年〇月〇日、申立人に対して内定取消通知書を一方的に送付し、「入社直前の妊娠は採用内定通知書に記載されている内定取消事由のうち『健康上の理由で入社予定日での入社又は就労が困難になった場合』という条項に該当する」との理由で当該採用内定を取り消した。
 しかしながら、企業が求職者に対して行う内定は「解約権留保付きの労働契約」であって、たとえ内定取消事由が顕在化した場合であっても、その内定取消事由が客観的に合理的であり社会通念上相当と認められるものでない限りその内定取消は解雇権の濫用として無効と考えられるものである(大日本印刷事件・最高裁昭和54年7月20日判決に同旨)。
 この点、申立人が入社直前に妊娠したことは一見すると入社予定日での入社や業務の遂行に支障が出てくる可能性があるが、仮にそのような問題が生じたとしても入社予定日を数か月変更すれば済むことであり、法令上も産前産後休暇の取得が認められることを考えれば、その妊娠したことのみをもって解雇に相当する内定の取り消しを行うことに客観的に合理的理由はなく、社会通念上相当であるとも認められない。
 よって、被申立人が申立人に対して行った内定の取り消しは、解雇権の濫用として無効である。

3 紛争の経過

 申立人は被申立人に対して、採用内定の取消理由について、客観的・合理的な理由がなく社会通念上相当でないことを電話で説明し、また、平成〇年〇月〇日付で作成した「内定取消の無効・撤回を求める申入書」を被申立人に郵送する方法で内定取消の撤回を求めたが、現在に至るまで内定取消の撤回は行われていない。

4 添付資料

・内定通知書の写し 1通
・内定取消通知書の写し 1通
・内定取消の無効・撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※結婚や出産したことを理由に内定の取り消しを受けたような場合には上記の記載例のうち「妊娠」を「結婚」や「出産」に書き換えて適宜文章を書き直して作成してください。

※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。

※「援助を求める理由」の欄について

援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を起こしていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。

上記の事例では、内定の取り消しは「解約権留保付きの労働契約」であって解雇に準じるものであり、たとえ内定取消事由が生じたとしてもその取消事由が客観的合理的で社会通念上相当と認められない限りその内定の取り消しは権利の濫用として無効になるという最高裁判所の判例を根拠に、妊娠したことを理由とした内定取消は無効であるという文章にしています。

なお、この点の具体的な問題点についてはこちらのページで詳細に解説していますので参考にしてください。

▶ 結婚や妊娠・出産を理由に内定を取消された場合

※「紛争の経緯」の欄について

紛争の経緯の欄には、会社との間に発生した紛争がどのようなきっかけで発生し、会社とどのような交渉を行ってきたのか、ということを記載します。

上記の事例では、内定を受けた会社から一方的に内定の取消通知を受け取った後、内定取り消しの撤回を求めて会社に電話を掛けて説明するとともに、内定取り消しの撤回を求める申入書を送付したものの会社が内定取消の撤回に応じていないということを記載しています。

※「添付書類」の欄について

添付書類の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。

上記の辞令では、「内定を受けたこと」と「内定取消事由が内定通知書に記載されていること」を明らかにするために内定通知書の写し(コピー)を、また「内定が取り消されたこと」を明らかとするために内定取消通知書の写し(コピー)を、「内定取り消しの撤回を求めたこと」を明らかとするために内定取消の撤回を求める申入書の写し(コピー)を添付することにしています。

なお、内定取消の撤回を求める申入書の記載例についてはこちらのページで解説していますので参考にしてください。

▶ 結婚・妊娠を理由とした内定の取り消しの撤回を求める申入書

ただし、裁判所の裁判とは異なり、労働局に対する紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必ずしも必要ありませんので、添付できるような書類がない場合は添付書類の欄に「なし」と記載して申立書を作成しても問題ありません。

(※なお「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)

様式について

労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。

上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。

様式 | 東京労働局

もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。