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職場いじめ・社内いじめを受けている場合の対処法

社内で勤務中に嫌がらせを受けたり、同僚から無視をされたりといったイジメを受けた場合、皆さんはどのように対処しているでしょうか?

このような「職場いじめ」は学校でのイジメと同じように、放っておいても次第になくなっていくことはまれで、多くの場合より陰湿に、よりエスカレートしていくことも多いのが実情です。

しかし、逆恨みされることを恐れて上司などに相談することなく我慢している人は多いと思いますし、そもそも会社の誰にどのような対処をしてもらえば「職場いじめ」がなくなるのか分からないという人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、勤務先の会社で「職場いじめ」を受けている場合の解決法や対処法などについて考えてみることにいたしましょう。

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職場いじめが「モラハラ」なのか「パワハラ」なのか「セクハラ」なのか判別する

勤務先の会社でイジメを受けている場合は、まずそのイジメが「モラハラ」にあたるのか、それとも「パワハラ」なのか「セクハラ」なのかということを判別することが必要です。

「モラハラ」とは「モラルハラスメント」を省略したもので、同僚や部下から受ける嫌がらせやイジメのことをいいます。一般的に社内でのいじめというものは「モラハラ」と分類されるのが通常です。

一方、上司から受ける嫌がらせやイジメのことを「パワハラ(パワーハラスメント)」といい、イジメを行う主体が「上司」であることが特徴です。

そのため、同じ社内でのイジメといっても、そのイジメている側が”上司”である場合には「モラハラ」ではなく「パワハラ」として対処するのが一般的です。

また、上司や同僚・部下といった嫌がらせをする主体の区別にかかわらず、嫌がらせの手段が「性的な言動」を伴う場合は「セクハラ」となります。

性的な言動を用いて行われる嫌がらせは、その嫌がらせをする人が上司であっても「セクハラ」になりますし、その嫌がらせをする人が同僚や部下であっても「セクハラ」となりますので、「セクハラ」としての対処法が必要となります。

このように、同僚から”いじめ”を受けているといっても、それが「モラハラ」「パワハラ」「セクハラ」のどれに分類されるのかでその対処法も異なることになります。

そのため、職場でイジメを受けている場合には、それが「モラハラ」なのか「パワハラ」なのか「セクハラ」なのか、という点をまず判別することが必要となります。

▶ 職場いじめ・嫌がらせ(モラハラ)の具体例

▶ これってパワハラ?(パワハラの判断基準とは)

これってセクハラ?(セクハラの判断基準とは)

【職場いじめの種類・内容・特徴】
モラハラ
同僚、部下からのイジメ・嫌がらせ → 加害者は同僚または部下
パワハラ
上司による職務上の権限を利用したイジメ・嫌がらせ → 加害者は上司
セクハラ
性的な言動による嫌がらせ → 性的な言動があれば上司部下の区別なく

職場いじめ・社内いじめ(モラハラ)の対処法

職場いじめや社内いじめ(モラハラ)は、基本的にイジメの主体が「上司」ではなく「同僚」や「部下」であるだけともいえますので、対処法もパワハラの場合と基本的に同じものとなります。

(※イジメの主体が上司の場合はパワハラとなるのが普通ですが、上司が職務上の権限を利用せずに”イジメ”を行っているような場合は”モラハラ”になる場合もあります。)

もっとも、同僚や部下がイジメを行うモラハラの場合は、上司が行うパワハラの場合にありがちな「配置転換」や「転勤」などが命じられることがないといった違いはあります。

(※パワハラの場合は上司が職務権限を利用して無理な命令をすることがありますが、同僚が加害者となるモラハラの場合は、社員としての地位が異ならないためそのようは職務権限を悪用した嫌がらせを受けることが基本的に無いという違いがあります)

① 職場いじめの証拠を記録しておく

職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)に対処する場合は、まずあらかじめイジメに遭っている証拠を確保しておく必要があります。

イジメを受けていることを会社に申告したり、最悪の場合は弁護士を雇って裁判を利用してイジメを止めさせる必要があるかもしれませんが、どのような方法を採るにしろ、イジメがあったことを客観的に証明できなければ、自分がいくら「イジメに遭いました」と主張しても、「いや、それはイジメじゃなくコミュニケーションの一つでしょ?」とか「それはイジメではなく同僚が指導や注意をしているだけじゃないの?」とまともに取り合ってもらえない場合は多いと思います。

そのため、職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)に遭っている場合は、その現場をスマホを利用して動画で撮影したり、録音したりして記録を保存しておく必要があります。

また社内メールやEメールを利用して暴言や侮蔑の文章を受け取っている場合には、そのメールなどを保管しておく必要もあるでしょう。

動画や録音ができないような状態であれば、毎日日記をつけてその日記に職場でのいじめの様子を記録しておくなどでも問題ないと思います。

② 上司や会社に「職場いじめ」の事実を申告する

従業員からいじめの被害に遭っている旨の報告を受けた会社(雇い主)は、その職場いじめを放置することは許されず、その加害者にいじめ行為を止めるよう指導したり、社内いじめの再発防止策を構築することが必須となります。

なぜなら、使用者(会社・雇い主)は従業員の生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をしなければならない義務があるからです(労働契約法5条)。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。(労働契約法第5条)

”職場いじめ”は、そのいじめの被害者に精神的又は肉体的苦痛を与えることになりますから、「労働者の生命・身体の安全」を脅かす行為といえますので、会社は従業員が「安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮」をしなければならない義務があるのです。

そのため、労働者(従業員)からいじめを受けているという報告を受けた会社は、そのイジメを放置することは法律的に認められず、適切に対処することが求められます。

もし会社が「職場いじめ」を放置した場合は、使用者は労働者に対する職場環境の保護やこれに配慮する義務および「職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)」が起きた場合の適切な処置と改善を怠ったことによる責任を負うことになりますので、会社に対する損害賠償請求を行うことも可能です。

このような理由から、会社に対してイジメがあったことを申告すると、まともな会社であれば、そのイジメが無くなるようまた今後再発しないよう適切な対応を行ってくれるはずです。

ちなみに、職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)の最初の相談先としては、上司や担当部署(社内のお悩み相談室的な部署)が適当でしょう。

なお、上司や会社に対していじめの相談を行って改善しない場合には、社内いじめに適切な対処をとるよう記載した通知書を作成し会社に郵送するようにしてください。

社内いじめを申告しても何ら対処しないような会社の場合には後日裁判に発展する可能性がありますので「会社にいじめの申告を行った」ことを証明するために通知書という文書の形で証拠を残しておく必要があるからです。

なお、会社や相手方に書面を送る際は、通知書を送ったという証拠になるように、普通郵便ではなく内容証明郵便で送付する方が良いでしょう。

社内イジメを止めるよう求める通知書【ひな形・書式】

③ 労働局に個別労働紛争解決の援助の申し立てを行う

各都道府県に設置された労働局では、労働者と事業主の間で紛争が生じた場合に、当事者の一方から援助の申立があった場合にはその解決のために助言や指導を行うことができます。

ところで、前述したとおり、労働者が同僚や部下から社内イジメを受けているにもかかわらず、その職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)を止めさせたり再発防止策を講じない事業主は、労働契約法5条に規定された「労働者(従業員)が生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務」を怠っているということになります。

そのため、職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)に会社が何らの対応もしない場合には、労働者と会社(事業主)との間に紛争が生じているということになりますから、労働局に社内イジメの解決について援助の申立をすれば、労働局から法的な助言を受けたり、労働局が事業主に対して「ちゃんと社内イジメに対処しなさい」といった指導を行ってもらうことができることになります。

また、この援助申立による助言や指導によっても解決しない場合には、労働局に対して紛争解決の”あっせん(裁判所の調停のようなもの)”を求めることも可能となりますから、職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)の解決も十分に期待できると思われます。

何より、この労働局に対する援助の申立や”あっせん”の申立は「無料」で利用できますので、後述する弁護士など法律専門家に相談するのと比べれば、気軽に利用できる解決手段といえるでしょう。

なお、労働局への紛争解決の援助の申立は書面を提出して行うのが通常ですので、申立書の記載例についてはこちらのページで確認してください。

社内いじめ(モラハラ)に関する労働局の解決援助申立書の記載例

もっとも、これら労働局における”援助”や”あっせん”の手続は最寄りの労働局に行けば親切に教えてもらえますので、申立書の書き方についても最寄りの労働局に相談に行けば丁寧に教えてもらえると思います。

※ただし、この場合の労働局の紛争解決援助の申立における当事者は、いじめを受けている「イジメの被害者」と「イジメに適切に対処しない会社」の2者となり「イジメの加害者本人」は当事者となりませんので注意して下さい。あくまでも勤務している「会社」を紛争の相手方として労働局に申立てることになります。

④ 弁護士会・司法書士会などが主催するADRを利用する

ADRとは「Alternative Dispute Resolution」の略省で、裁判外紛争処理手続のことをいいます。

ADR手続は弁護士など法律の専門家が紛争の当事者の間に立ち、中立的な立場で両者の話し合いを促す調停のような手続きになります。

当事者同士での話し合いで解決しないような問題でも、弁護士などが間に入ることにより問題の解決へ向けた要点が絞られた話し合いができますので解決への近道となりますし、法律専門家が関与することによって違法な解決策が提示されるような問題も発生しなくなり安心な面もあります。

なにより、裁判とは異なるため裁判費用や弁護士に依頼する弁護士報酬なども発生しませんので、費用的に安価な費用で問題解決が図れるのが最大のメリットです。

もちろん、ADRの調停役になる弁護士や司法書士、社会保険労務士などに支払うADR費用が発生しますが、通常は数千円~数万円と裁判を行うより格段に安い費用で収まることが多いので経済的な負担はそれほど感じないでしょう。

また、職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)など会社内での労働トラブルは、解決後もその会社で働き続けることが必要なため、会社側と裁判で言い争いをするのは会社との関係性で溝を作ってしまい、その後の勤務にも少なからず影響が出てくる懸念も生じます。

そのため、職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)というような、あまり事を荒立てたくない一面を持っている問題については、ADRという裁判外の手続を利用することも考えてみる必要があると思います。

⑤ 裁判を利用する(職場いじめの差し止め請求・慰謝料請求)

上司や会社への直接の交渉をしても、ADRを行っても解決しないような場合には、裁判所の訴訟手続きを利用して解決を図ることも考える必要があるでしょう。

職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)を裁判で解決する場合は、イジメを行っている加害者の同僚社員にイジメを止めさせる仮処分申請の裁判が代表的ですが、他に職場いじめの被害者が精神的な苦痛を受けたことによる損害賠償請求、会社がイジメに対応しないことに対する損害賠償請求(※この場合は会社に対して訴えを起こすことになります)、イジメを止めさせると同時に損害賠償を請求し合わせて今後の再発防止策を講じるよう求める労働審判などがあります。

どの手続で裁判を申し立てるかは事案によって異なりますので、依頼する弁護士なり司法書士と話し合いをして決めていく方が良いでしょう。

なお、未払い賃金や残業代請求など、金銭を請求するだけの裁判であれば弁護士などに依頼せず、自分で裁判を行うこともそれほど難しくはありませんが、職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)をやめさせたりイジメに基づく損害賠償請求をするという裁判に関しては、多くの専門的知識が必要となりますので、モラハラなど社内いじめの裁判に関しては弁護士や司法書士などに依頼して訴訟を行う方が良いと思います。

職場いじめの性質が悪質なケースの場合は警察に被害届を出すことも考える

職場いじめ(社内いじめ・モラハラ)が殴る蹴るなど暴行を伴うものであったり、名誉棄損的な行為に基づく場合は犯罪行為ということもできます。

そのため職場いじめがそのような悪質性の高い犯罪行為が含まれるものであるような場合には、警察に被害届を出すことも検討しなければならないでしょう。

警察に被害届を出す場合は、ただ「いじめられてます」というだけでは話を聞いてもらえないので、実際に殴られている場面を撮影した動画や音声記録などを証拠として持って行くなどした方が被害届を受理してもらいやすくなると思います。

被害届を提出すれば「逮捕されるんじゃないか」というプレッシャーを加害者の同僚に与えることができますから、職場いじめをしなくなったり、慰謝料請求の和解に応じてもらえやすくなるなどのメリットもあります。

職場いじめが暴行罪や脅迫罪、強要罪などの刑事事件に当てはまるのは極めてまれなケースに限られると思われますが、職場いじめの性質が悪質でその暴行や脅迫等の証拠を確保できるような場合は、このように最寄りの警察署などに被害届の提出を検討してみるのも良いのではないかと思います。