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職場いじめは慰謝料請求だけが有効な解決方法とは限らない?

多くの人が「職場いじめ」に遭っている場合の解決方法として思いつくのは、そのいじめの加害者本人に対して「慰謝料」を請求することではないかと思います。

しかし、慰謝料の請求はあくまでも「苛め」を受けた後に事後的に「金銭」を請求することで精神的・肉体的に受けた不利益を”慰謝”するものに過ぎませんから、慰謝料の請求をすることで職場いじめの根本原因が解決するかというと必ずしもそうではない場合もあり得ることになります。

また、慰謝料請求を行う場合であっても、その慰謝料をそのイジメをしている「加害者本人」に求めるのか、それともその職場いじめを放置している「会社」に求めるのかでその具体的な対応方法も異なってくることが考えられます。

そこで今回は、職場いじめの解決方法として慰謝料を請求することは適当なのか、または慰謝料請求以外の方法をとる場合には具体的にどのような方法が考えられるのかという点について解説してみることにいたしましょう。

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職場いじめの責任は「加害者本人」だけでなく「会社」にも発生することを理解しておく

まず、職場いじめの「慰謝料請求」以外の解決方法を考える前提として、職場いじめの責任がその加害者だけでなく会社にも発生することを理解しておく必要があります。

職場いじめの被害を受けている場合、そのトラブルの相手方はその職場いじめをしている「加害者本人」であることは言うまでもありませんが、法律上はその「加害者本人」だけではなく勤務している「会社」にもその職場いじめの責任が生じることになります。

職場いじめ・社内いじめを受けている場合の対処法』のページでも詳細に解説していますのでここでは詳述しませんが、使用者(会社・雇い主)には従業員の生命や身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をしなければならない義務がありますので(労働契約法5条)、「いじめ」という労働者の精神や肉体に大きなダメージを与える行為についは会社側にそのようなトラブルが発生しないよう必要な配慮をすることが義務付けられているということになります。

【労働契約法第5条】
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

そのため、職場いじめに遭っている場合に会社に相談をしたにもかかわらず、会社がその職場いじめをやめさせるよう適切な措置を取らない場合には、その加害者だけでなくその会社にも違法性が発生することになります。

会社に違法性が発生するということは、職場いじめを原因として会社に対して慰謝料等の損害賠償請求をすることもできるということになります。

このページの冒頭でも記載しているように、「職場いじめ」というとその「加害者本人」に対して裁判をしたり調停を申立てたりということを想定しがちですが、その職場いじめを放置している(または適切に対処しない)「会社」に対しても裁判などで訴えを提起できるということをまず理解しておくようにしてください。

実際に認められる慰謝料はさほど高額にはならないことも理解しておく

前述したように職場いじめにあっている場合にはそのいじめの「加害者本人」に慰謝料の請求をすることも可能ですが、会社に相談しても会社側が適切に対処をしないような場合には勤務先の「会社」に対して慰謝料の請求をすることも可能です。

もっとも「慰謝料」の請求ができるからと言って、必ずしも高額な慰謝料を支払ってもらえるかというとそうでもありません。

一般の人が「慰謝料」と聞くと数百万から数千万円の金額を想定しがちですが、慰謝料請求の裁判で精神的な被害を受けたとして慰謝料を求める場合、仮に裁判所がその請求を認めたとしてもその認定される慰謝料の相場は数万円から数十万円が一般的です。

被害者の労働者の生命が危ぶまれるほどに執拗な悪質性の高いイジメで実際に何らかの被害が発生しているような職場いじめの場合にはそれなりの高額な慰謝料が認められるかもしれませんが、嫌がらせ程度のイジメの場合には慰謝料が認められるとしても数万円から数十万円程度でしょう。

そのため、慰謝料請求をして裁判所から慰謝料の支払いが認められたとしても、その金額によっては相手方にとってはそれほどダメージは与えられない場合も考えられますので、職場いじめの対処法として慰謝料請求が適しているかというと必ずしもそうではない場合もあり得ることになります。

「イジメられた仕返しに慰謝料を取りたい」と考える気持ちは十分理解できますが、慰謝料請求にそれほど過度な期待を抱かない方が良いのではないかと思います。

労働局の紛争解決援助の申立を利用する場合

職場いじめ・社内いじめを受けている場合の対処法』のページでも紹介していますが、職場いじめの解決方法としては労働局に紛争解決の援助の申立を行うことも可能です。

労働局に職場いじめについて紛争解決援助の申立を行った場合、労働局から必要な助言や指導が出されたり、”あっせん(調停のようなもの)”の手続きに移行する場合には労働局から問題解決に向けたあっせん案が出されることになります。

そのため、会社が労働局から出される指導やあっせん案に従うようであれば会社が職場で発生しているいじめに対して何らかの措置を取ることが期待できますから、「職場いじめがなくなればそれでよい」と考えている人にとってはこの労働局の紛争解決手続きは有効な解決手段のひとつになるといえるでしょう。

ただし、この労働局の紛争解決援助の手続は職場いじめが発生している場合にその職場いじめに適切な対処しない「会社」を紛争の相手方として申立てる手続きであって、その職場いじめの「加害者本人」を相手方として申立てることは手続き上認められていません。

そのため「職場いじめの加害者本人に仕返ししたい」と思っている人にとっては、基本的にあまり意味をなさない手続きとなってしまうかもしれませんが、会社が労働局から出される指導やあっせん案等に従ってその「加害者本人」に何らかの処分(例えば配置転換や降格、解雇など)を行うようであれば、その「加害者本人」に対して一定の不利益が与えられることになりますので、ある程度は「加害者本人に対する仕返し」にはなるのではないかと思われます。

ADRを利用する場合

ADRとは裁判外紛争解決手続の略称で、裁判所以外の場所で法律専門家を交えた状態で当事者同士の話し合いを行う手続きをいいます。

詳細は『職場いじめ・社内いじめを受けている場合の対処法』のページで解説していますが、具体的には紛争の当事者の間に弁護士などの法律専門家が入り、当事者と弁護士等の3者間で話し合いの場を持つのがこのADRの手続となります。

このADRを利用する場合には、職場いじめの「加害者本人」に弁護士等の専門家を交えた3者間でイジメを止めさせるような話し合いをするだけでなく、イジメに適切に対処しない「会社」に弁護士等の専門家を交えた3者間で話し合いを行ったり、「加害者本人」と「会社」に弁護士等の専門家を交えた4者間で話し合うなど、その事案にあった自由な話し合いができますので、裁判所の裁判や調停ではうまく解決できない事案でもADRによって解決の道筋が見えてくることも有り得るでしょう。

また、職場いじめなど紛争解決後も同じ職場で顔を合わせるようなトラブルでは、裁判などを利用するとその後の職場で気まずくなったりする場合も有りますし、職場いじめに適切に対処しない会社を相手取って裁判を行ったり労働局に申立を行った場合には、会社での立場に不安を感じる人もいるかもしれませんから(※注1)、そのような人にとっては単なる話し合いの場の提供に過ぎないADRの手続きは適しているかもしれません。

(※注1:職場いじめに適切に対処しない会社を訴えたり労働局に紛争解決援助の申立を行ったことを理由として会社がいじめの被害者に減給や降格などの不利益な処分をすることは違法で無効と判断されます。)

裁判を利用する場合

職場いじめの解決方法として裁判を行う場合には弁護士に依頼するのが一般的ですが、裁判所に自分で出廷することに不都合が無いのであれば司法書士に裁判所類の作成だけを依頼するのもよいでしょう。

裁判手続きを利用する場合は前述した慰謝料請求の他にも、イジメの加害者本人にいじめを止めさせる差し止めの仮処分を求める裁判もできますし、裁判以外にも原則3日の期日で結審される労働審判を申立てることもできますから、慰謝料という「金銭」を求めるだけでなく「いじめの行為そのもの」をなくすこともできると思われます。

もっともこれらの裁判手続きを利用する場合には弁護士もしくは司法書士と相談してその事案に適切な手続きを選択することになると思われますから、信頼できる弁護士もしくは司法書士を探して自分がどのような解決方法を優先しているのかを理解してもらうことが重要でしょう。

自分が「何」を求めているのかが重要

以上のように職場いじめの解決方法には慰謝料を請求する以外にも、労働局の手続やADRなど職場いじめそのものを止めさせるための手続きがいくつもあることがわかりますが、職場いじめの解決方法を考える場合には自分が何を欲しているのかをよく考えることが重要です。

「いじめがなくなれば十分」と考えている人が慰謝料請求の裁判をして慰謝料をもらったとしてもそれでいじめがなくなるかはわかりませんし、いじめが原因で退職したいと考えている人が「職場いじめの加害者に仕返ししたい」と考えているにもかかわらず会社を相手に労働局に紛争解決援助の申立を行っても、退職した後に会社でいじめがなくなるだけの話でいじめの加害者には特になにもダメージは与えられないでしょう。

そのため、職場いじめに遭っている場合には、最終的に自分がどのような解決結果を求めているのかをよく考えてそのために一番適切と思われる手続を選択することが重要ではないかと思います。

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