サラリーマンやバイトの従業員に守秘義務はあるのか?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

内緒

”守秘義務”とは、簡単に言うと「職務上知り得た事実や情報を職務外に漏らさない」ということが「義務」になっている場合のことをいいます。

この点、弁護士や公務員、技術士、看護師、郵便局員などといった一定の専門的な職種においては、それぞれの職種を規定する法律で職務上知りえた事実を他人に漏らしてはならないという「秘密保持義務」とそれに違反した場合の罰則(※弁護士を除く)が明文化されていますので、それらの専門職に就く人に守秘義務があるのは明らかといえます(たとえば弁護士法第23条国家公務員法第101項及び109条など。※参考→守秘義務 – Wikipedia)。

【弁護士法第23条】

弁護士又は弁護士であった者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

【国家公務員法第100条1項】

職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

(※地方公務員法第34条1項にも同じ規定あり)

【国家公務員法第109条】

次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第1号~(省略)
第12号 第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者

(※地方公務員法第60条にも同様の規定あり)

また、医師や薬剤師、弁護士などの一定の専門的な職種においては刑法で「業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密」を漏らした場合の罰則が「秘密漏示罪」として明文化されていますので、仕事上知り得た情報を他に漏らすことが禁じられているのは明らかと言えます(刑法134条)。

【刑法134条1項】

医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

このように、特定の専門的な職種については法律で「守秘義務(秘密保持義務)」が明文化されており、その罰則も規定されていることから守秘義務があることは明らかです。

一方、一般企業に勤めるサラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員についてはこのような守秘義務(秘密保持義務)に関する法律は存在しませんから「会社員やバイトには守秘義務は無いのではないか?」とも思えます。

しかし、サラリーマンやバイトに守秘義務が無いとしたら、企業秘密や顧客の個人情報なども自由に扱うことができることになってしまい社会的に大きな問題が生じてしまいます。

そこで今回は、サラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員に守秘義務はあるのか、あるとしたら何を根拠として守秘義務が発生するのか、といった点について考えてみることにいたしましょう。

スポンサーリンク

サラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員であっても守秘義務は存在する

結論から言うと、サラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員であっても”法律上”の守秘義務は存在し、職務上知りえた情報を他人に漏らす行為は法律で厳しく制限されています。

サラリーマンやバイトの守秘義務を直接規定した法律はありませんが、労働契約法の第3条4項がその根拠条文となります。

【労働契約法3条4項】

労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

労働者(サラリーマン・OL・アルバイト・パート)は使用者(会社・雇い主)に対して、「信義に従い誠実に」「義務」を負うと規定されていますので、労働者であればサラリーマン・OL・アルバイト・パートといった雇用形態の違いに拘わらず、全ての労働者は勤務先の会社に対して不誠実なことをしてはならないという「信義誠実義務」を「労働契約上(雇用契約上)」負っていることになります。

この点、労働者(サラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員)が会社内で業務上知った事実(秘密)を会社外に漏らすことは会社(使用者)に対する背任行為ととらえることになりますので、「信義に従い誠実に」「義務を履行しなければならない」と規定された労働契約法3条4項の”信義誠実義務”に違反することになります。

そして、労働契約法3条4項に違反している以上、その業務上知った事実(秘密)を洩らした労働者は、その「信義誠実義務」が契約の内容となっている「労働契約(雇用契約)」に違反することになりますから、その結果として会社に損害が発生した場合には、たとえサラリーマンやOL、アルバイトやパートなどの従業員であっても、会社に対して労働契約(雇用契約)に違反したことによる債務不履行責任(民法415条)が発生することになります(※そうでなくても不法行為責任(民法709条)は発生する)、その損害を賠償しなければならない義務が生じることになります。

このように、サラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員については明確に直接的に守秘義務(秘密保持義務)を規定した法律はありませんが、勤務している会社に対して「労働契約(雇用契約)」上の守秘義務(秘密保持義務※信義誠実義務)を負っていると考えることができます。

【派遣契約の場合には守秘義務はあるか?】

※派遣契約(派遣社員)の場合には、派遣社員が労働契約法第3条4項にいう「労働者」、派遣「元」の会社が労働契約法第3条4項にいう「使用者」ということになりますから、派遣社員は派遣「元」の会社に対して守秘義務はあっても派遣「先」の会社に対して守秘義務はないのではないかという疑問が生じます。

しかし、派遣社員が派遣「先」の会社の内部情報や派遣「先」の会社の顧客情報を漏らした場合、それによって発生した損害について派遣「元」の会社が派遣「先」の会社に対して賠償する義務を負うことになりますから、派遣社員が派遣「先」の情報を漏らすことによって間接的に派遣「元」の会社に対して不利益を与えることになります。

そうすると、派遣社員が派遣「先」の会社の秘密を漏らすことによって派遣「元」の会社に対して負っている労働契約法第3条4項上の”信義誠実義務”に違反することになってしまいますから、派遣社員は派遣「元」の会社に対して負担しているものと同様の”信義誠実義務”を間接的に派遣「先」の会社に対しても負担していると考えることが出来るでしょう。

したがって、派遣社員は派遣「元」の会社だけでなく間接的に派遣「先」の会社に対しても法律上の守秘義務を負っているということが出来ます。

公務員や弁護士、医者などと異なるのは罰則の規定がないだけ

このように、一般のサラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員であっても、仕事上知り得た事実を漏らしてはならないという守秘義務(秘密保持義務)は存在します。

ただし、一般のサラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員における守秘義務(秘密保持義務)については明文化された法律はありませんので、当然ながら守秘義務違反に対する罰則を規定した法律も存在しません。

したがって、公務員や弁護士、医者などが守秘義務違反を犯した場合には「6月以上の懲役又は10万円以下の罰金(※公務員の場合は1年以下または50万円以下の罰金)」などの刑事罰が科されますが、一般のサラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員が守秘義務違反を犯しても、基本的には刑事罰は科されないことになります。

しかし、一般のサラリーマンやOL、アルバイトやパート従業員が守秘義務違反を犯した場合であっても、前述したように会社に対する義務違反となり損害賠償の対象となりますし、仮にお客の個人情報を漏らしたような場合にはそのお客について不法行為による損害賠償の対象となりますので、刑事罰はなくとも民事罰(多くの場合は損害賠償金を請求されるという罰)は発生することになります。

(※ただし、不正競争防止法における”不正競争”に含まれる情報漏えい等の場合には刑事罰が科される可能性があります→不正競争防止法の概要と改正(METI/経済産業省)

twitter や facebook などSNSで顧客の個人情報を公開する行為は「顧客+会社」に対する守秘義務違反になる

最近よくニュースになるツイッターやフェイスブックなどSNSでお客の個人情報を公開する、いわゆる「バカッター」や「バラスブック」問題ですが、このような仕事中に知り得たお客の個人情報を公開する行為は、そのお客に対するプライバシーの侵害というだけの問題ではありません。

そのお客以外にも、会社に対する守秘義務違反という性質も有していますので、お客と会社の2方向に対する権利侵害(義務違反)ということになり社会的責任はとても重大と言えます。

(※このように労働者がその勤務する企業の顧客の個人情報を漏えいした場合は、その顧客に対する損害賠償と、勤務している会社に対する損害賠償の2つの損害賠償責任が発生することになります)


スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連トピックス