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人事上の判断を理由とする降格に関する労働局の申立書

このページでは、会社から「人事上の理由」とか「人事上の措置」という理由で一方的に降格させられた場合に、労働局に紛争解決援助の申立てを行う場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。

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なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。この書式例(ひな形例)を使用して生じる一切の損害につき当サイトの管理人は責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。

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人事上の措置として一方的に降格を命じられた場合にその撤回を求めて労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例

(1)降格が労働契約で合意した職種の変更を含むことを理由に撤回を求める場合


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都世田谷区〇〇八丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 納得仙子
電話番号 090-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都渋谷区〇〇七丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社ヘアスタジオ・降格
代表者 降格佐須造
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

 申立人のアシスタント職への降格を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、「ヘアスタジオ・降格」の名称で都内23か所に美容室を展開する従業員87名の株式会社である。
 申立人は、平成〇年〇月に美容師として被申立人に採用され「ヘアスタジオ・降格 池袋駅前店」に勤務していたが、平成○年○月上旬、「カット技術が基準に達していない」という理由で一方的にアシスタント職に降格させられた。
 しかしながら、人事権の行使としての降格が労働契約上当然に認められるとしても、その人事権は労働契約で合意された内容の範囲内で認められるべきものといえるから、使用者が裁量的に労働者の降格を命じられる範囲も労働契約で合意された範囲に制限されると考えるべきである。
 この点、申立人が被申立人との間で締結した労働契約においてはその職種は美容師と限定されているから、その美容師の職種とは異なるアシスタント職への降格は労働契約で合意した職種を変更するものであり、労働契約上認められる人事権の範囲を超えているといえる。
 したがって、被申立人が申立人を美容師職からアシスタント職に降格させた行為は労働契約上の根拠のない無効なものといえる。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年○月上旬、店長の〇〇から突然「覆面調査で君のカット技術が基準に達していないことが分かったから来月からアシスタントに降格させることになった」と一方的にアシスタント職への降格を命じられた。
 これに対して申立人は、入社時の契約書で美容師職に限定して採用されていたためアシスタント職への降格は職種の変更にあたり納得できないと抗議したが、「人事上の評価だから」「お前の技術が足りないから仕方ないだろう」と回答するのみで一切聞き入れてもらえなかった。
 そのため申立人は、同年○月○日付で「降格の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法で改めてアシスタント職への降格を撤回するよう申し入れたが、現在に至るまで当該降格は撤回されていない。

4 添付資料

・労働契約書の写し 1通
・降格の撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。

(2)降格が人事権の濫用にあたることを理由に撤回を求める場合


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都世田谷区〇〇九丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 天筋仙太郎
電話番号 090-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都中野区〇〇二丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社アプリケーションシステム降格
代表者 降格須瑠世
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

 申立人の一般職への降格を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、マドレーヌのカロリーを瞬時に測定するスマートフォン向けアプリ「マドレーヌハカレール」を開発及び配信する従業員87名の株式会社であり中野区に本社営業所があるほか、沖縄県の那覇市にコールセンターが設けられている。
 申立人は、平成〇年〇月上旬に那覇市のコールセンターへの転勤を打診されたが、入社時の労働契約で勤務地が東京都内に限定されていたことから転勤に応じる義務が無いと考えてこれを拒否したところ、その数日後に突然「人事上の判断で課長職の任を解く」との理由で課長職から一般職に降格させられた。
 しかしながら、人事権の行使としての降格が労働契約上当然に認められるとしても、その人事権を濫用することは禁止されるから(労働契約法第3条5項)、転勤を拒否したことの報復とした降格は認められるべきではない。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年○月上旬、上司の〇〇(部長)から那覇市のコールセンターでセンター長として勤務するよう転勤の打診を受けたが、東京から遠く離れた沖縄で勤務することに抵抗があったため、その転勤の打診を拒否した。
 これに対して上司の〇〇は「断ったら査定に影響するかもしれないよ」などと執拗に転勤に同意するよう求めてきたが、申立人は入社時の契約で勤務地が東京都内に限定されていたことから転勤を拒否しても人事評価に影響は生じないと考えたため、その転勤に同意する意思がないことを明確に伝えてこれを拒否した。
 するとその2日後、申立人は上司の〇〇に会議室に呼び出され「人事の評価で課長は〇〇くんに代わってもらうことになったから」と一方的に課長から一般の平社員への降格を告知された。
 申立人は転勤を拒否した報復として降格させるのは不当である旨抗議したが、上司の〇〇は「人事上の措置だから問題ないだろう、報復だという証拠はあるのか?」というのみで一切聞き入れられないため、同年○月○日付で「降格の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法で改めて一般職への降格を撤回するよう申し入れたが、現在に至るまで当該降格は撤回されていない。

4 添付資料

・「断ったら査定に影響する…」という発言の音声記録 USBメモリ1個
・降格の撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。

申立書の記載要領

※「援助を求める理由」の欄について

援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。

上記の(1)の記載例では、入社時の労働契約で「美容師」と職種を限定されて採用されているにもかからわず、その契約で合意した職種とは異なる「アシスタント職」に降格させるのは労働契約上みとめられた人事権の範囲を超えているというような文章にしています。

(2)の事例では、労働契約書で勤務地が「東京都」に限定されていることから沖縄への転勤を拒否することは労働契約上全く問題ないにもかかわらず、それを拒否した数日後に特段の理由なく降格をすることが権利の濫用に当たるというような文章にしています。

なお、人事権の行使として不当に降格させられた場合の対処法などはこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。

▶ 人事上の判断という理由で一方的に降格させられた場合

※「紛争の経過」の欄について

紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。

上記の事例では、店長や上司から降格を命じられた際にそれに口頭で抗議したこと、また文書で撤回を求めても降格が撤回されなかったことなどを簡単に記載しています。

※「添付資料」の欄について

添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。

上記の記載例では小規模の会社でよくある口頭でのみ降格の処分を言い渡す事例を想定していますので特段の書類を添付していませんが、(1)の記載例では、「労働契約上職種が美容師に限定されていること」を明らかとするために「労働契約書」の写しを、また(2)の記載例では、「転勤を拒否した報復として降格させられたこと」を明らかとするために「断ったら査定に影響するかもしれないよ」と上司から脅された際の会話を録音していたと仮定して「その際の会話を録音した電子記録」をダウンロードしたUSBメモリを添付することにしており、これらに加えて「書面で撤回を求めても撤回されなかったこと」を明らかとするために「降格の撤回を求める申入書」も添付することにしています。

なお、この場合に添付する「降格の撤回を求める申入書申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 人事上の措置を理由とする降格の撤回を求める申入書

ちなみに、裁判所における裁判と異なり労働局の紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必ずしも必要ではありませんので、紛争の事実を証明できる文書やデータ(画像や音声・画像記録)がない場合には「特になし」と記載して提出しても問題ありません。

なお、「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出するようにしてください。

※ 様式について

労働局に提出する紛争解決申立書に定型の様式は定められていないため適宜の様式で提出して問題ありませんが、東京労働局のサイトから申立書のひな型をダウンロード(Word)することも可能です(東京労働局の様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。

様式 | 東京労働局

もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申立する労働局に事前連絡や相談を行うと思いますので、その相談の際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。

なお、申立書を提出する労働局の具体的な住所等については厚生労働省のサイトで各自ご確認をお願いします→ 都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省)。