このページでは、職能資格を引き下げられることによって降格させられたような場合に、労働局に紛争解決援助の申立てを行う場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
適宜、ワードなど文書作成ソフトを利用して自由に複製してもかまいませんが、著作権を放棄するわけではありませんので無断転載や配布などは禁止します。
なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。この書式例(ひな形例)を使用して生じる一切の損害につき当サイトの管理人は責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。
職能資格が引き下げられることによって降格させられたことを理由に労働局に紛争解決援助の申し立てをする場合の申立書の記載例
(1)就業規則が変更されていないことを理由とする場合
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都葛飾区〇〇六丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 納得仙代
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都中野区〇〇一丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社ムリヤリコウカク・システムズ
代表者 判高須瑠奈
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
職能資格の引下げに基づく降格を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、マドレーヌの糖分を瞬時に判定するスマートフォン向けアプリ「マドレーヌハカレール」を開発及び配信する従業員999名の株式会社であり、就業規則に勤務年数に応じた等級を定めることにより従業員の社内における地位や待遇を区別する等級制度を採用している。
申立人は、平成〇年〇月にアプリケーションエンジニアとして被申立人に採用され新規アプリケーションの開発業務に従事している。
申立人は、平成○年〇月で勤続3年を経過したことから就業規則に定められた基準に従ってその等級が10等級から9等級に引き上げられたが、平成○年〇月下旬、被申立人が突如として「勤続3年以上5年未満で9等級」と定められていた等級を「勤続6年以上7年未満で9等級」に引き下げたことから、職能資格が9等級から10等級に引き下げられることにより降格させられてしまった。
しかしながら、職能資格が就業規則によって定められている被申立人のような会社では、職能資格(職能等級)を引き下げるためには就業規則の定め変更を要するものと考えられるが、被申立人が就業規則に定められた職能資格の規定を変更した事実はない。
したがって、被申立人の行った職能資格の引下げに基づく降格は労働契約上の根拠のない無効なものといえる。
3 紛争の経過
申立人は平成○年○月上旬、上司の〇〇から突然「社内会議で等級の基準が変更されたから君の等級も9等級から10等級に引き下げられることになる」と一方的に等級の引下げによる降格を命じられた。
これに対して申立人は、就業規則で定められた職能等級の変更には就業規則の変更が必要である旨抗議したが、「会議で決まったんだから仕方ないだろう」と回答するのみで一切聞き入れてもらえなかった。
そのため申立人は、同年○月○日付で「職能資格の引下げによる降格の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法でその撤回を申し入れたが、現在に至るまで当該職能資格の引下げによる降格は撤回されていない。
4 添付資料
・職能資格の引下に基づく降格を命じた辞令書の写し 1通
・降格の撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。
(2)変更後の就業規則について労働者に周知されていないことを理由とする場合
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都墨田区〇〇七丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 南茂詩蘭
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都中野区〇〇一丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社コッソリヘンコウ・システムズ
代表者 周知仙太郎
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
職能資格の引下げに基づく降格を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、マドレーヌの摂取カロリーを瞬時に識別するスマートフォン向けアプリ「マドレーヌカロリーヌハカレール」を開発及び配信する従業員777名の株式会社であり、就業規則に勤務年数に応じた等級を定めることにより従業員の社内における地位や待遇を区別する等級制度を採用している。
申立人は、平成〇年〇月にスマホ向けアプリのメンテナンス担当者として被申立人に採用され人気アプリの「マドレーヌカロリーヌハカレール」のメンテナンス業務に従事している。
申立人は、平成○年〇月で勤続5年を経過したことから就業規則に定められた基準に従ってその等級が9等級から8等級に引き上げられたが、平成○年〇月下旬、被申立人が就業規則で定められた職能資格の等級を「勤続5年以上7年未満で8等級」から「勤続4年以上6年未満で9等級」に引き下げたことから、職能資格が8等級から9等級に引き下げられることにより降格させられてしまった。
しかしながら、職能資格が就業規則によって定められている被申立人のような会社では、職能資格(職能等級)を引き下げるためには就業規則の定め変更を要し、就業規則の変更によって労働者の不利益に労働条件が変更される場合には労働者の個別の合意を得るのが原則で(労働契約法第9条)、労働者の合意を得ない場合にはその変更後の就業規則について労働者に周知させることが必要であるところ(労働契約法第10条)、申立人が職能資格の引下げに関する就業規則の変更に合意した事実はなく、被申立人が変更後の就業規則の内容について労働者に周知させていた事実もない。
したがって、当該就業規則の変更は手続上の瑕疵があり無効であるといえ、またその無効な就業規則の変更によって引き下げられた職能資格に基づく降格もまた無効といえるから、被申立人の行った職能資格の引下げに基づく降格は労働契約上の根拠のない無効なものといえる。
3 紛争の経過
申立人は平成○年○月上旬、上司の〇〇から突然「就業規則が変更されて等級の基準が引き下げられたから君の等級も8等級から9等級に引き下げられることになる」と一方的に等級の引下げによる降格を命じられた。
これに対して申立人は、就業規則の変更を知らされていなかったことを抗議し不当な等級の引下げを撤回するよう求めたが、「就業規則の変更は正式になされているから仕方ないだろう」と回答するのみで一切聞き入れてもらえなかった。
そのため申立人は、同年○月○日付で「職能資格の引下げによる降格の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法でその撤回を申し入れたが、現在に至るまで当該職能資格の引下げによる降格は撤回されていない。
4 添付資料
・職能資格の引下に基づく降格を命じた辞令書の写し 1通
・降格の撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。
申立書の記載要領
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。
上記の(1)の記載例では、就業規則で職能資格の制度を定めている会社で職能資格の引下げを行う場合には就業規則の変更が必要であるにもかかわらず、就業規則を変更することなく職能資格を引き下げている行為は、労働契約上の根拠のない無効なものであるというような文章にしています。
(2)の事例では、就業規則を変更することによって職能資格の制度の基準を引き下げてはいるものの、その就業規則の変更によって職能資格による等級という労働条件が引き下げられる労働者の合意を得ていないことやその変更後の就業規則について労働者に周知されていなかった事情があるから就業規則の変更手続きに瑕疵があり、その結果就業規則の変更による職能資格の等級の引下げも無効と判断されるというような文章にしています。
なお、職能資格(職能等級)を引き下げることによって降格させられた場合の具体的な対処法などについてはこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。
上記の事例では、上司から職能資格の引下げによって降格を命じられた際にそれに口頭で抗議したこと、また文書で撤回を求めても降格が撤回されなかったことなどを簡単に記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の記載例では「職能資格の引下げによる降格を受けたこと」を明らかにするために「職能資格の引下に基づく降格を命じた辞令書の写し」の写しを、また「文書で降格の撤回を求めたにもかかわらず降格が撤回されなかったこと」を明らかとするために「降格の撤回を求める申入書」も添付することにしています。
なお、この場合に添付する「降格の撤回を求める申入書申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
ちなみに、裁判所における裁判と異なり労働局の紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必ずしも必要ではありませんので、紛争の事実を証明できる文書やデータ(画像や音声・画像記録)がない場合には「特になし」と記載して提出しても問題ありません。
なお、「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出するようにしてください。
※ 様式について
労働局に提出する紛争解決申立書に定型の様式は定められていないため適宜の様式で提出して問題ありませんが、東京労働局のサイトから申立書のひな型をダウンロード(Word)することも可能です(東京労働局の様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申立する労働局に事前連絡や相談を行うと思いますので、その相談の際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。
なお、申立書を提出する労働局の具体的な住所等については厚生労働省のサイトで各自ご確認をお願いします→ 都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省)。