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パワハラに遭った場合の対処法

上司からの陰湿ないじめや不合理な業務命令など、企業で働いていると思わぬ形で理不尽な待遇を受けることがあります。

このようなパワハラ(パワーハラスメント)を受けた場合に、皆さんはどのような対応を取るでしょうか?

毅然とした態度で対処する人もいるかもしれませんが、多くの人は報復や社内での立場が悪くなることを恐れて泣き寝入りしているのが現状ではないでしょうか?

しかし、パワハラと認定できる行為は明らかな違法行為であり、本来許されるものではなく、その行為をやめさせるよう会社は十分な配慮をしなければならないはずです。

そこで今回は、職場でパワハラを受けた場合の対処法などについて考えて行くことにいたしましょう。

なお、上司ではなく同僚からいじめを受ける問題は「モラハラ(モラルハラスメント)」と呼ばれますが、モラハラについてもパワハラと同じ対処法を取って問題ないと思いますので、社内でイジメを受けている人全般に共通する対処法と考えて差し支えないと思います。

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パワハラの判断基準

パワハラに対処するためには、そもそも自分が受けている何らかの行為が「パワハラ」と認定できるようなものであることが必要です。

仕事で失敗をして上司に注意を受けているだけなのに「パワハラだ!」とクレームを付けたのでは、誰も相手にしてくれませんし、単なるクレーマーと同じです。

上司の部下に対する叱責や注意も、その程度によっては「パワハラ」となりますが、正当な理由で業務を正常に遂行するために必要な程度で注意する分には「パワハラ」には該当しません。

何がパワハラになり、どのような行為がパワハラとならないかといった判断基準は微妙なものがありますが、一般的には「上司がその権限(権力)を利用して部下の人格を損ねる行為」がパワハラと判断されます。

また、その人格権を損なう行為が業務命令の形で行われる場合は「①業務命令の必要性②業務命令の適正性③不利益の程度」という3つの基準でパワハラか否かの判断がなされます。

このような判断基準に照らして、自分が受けている社内いじめの行為が「パワハラ」であると思われる場合は、そのパワハラに対して具体的な対処法を考えなければなりません。

なお、パワハラの判断基準についてはこちらのページでレポートしていますので参考にしてください。

▶ パワハラとは?(パワハラの具体例とモラハラ、セクハラとの違い)

▶ これってパワハラ?(パワハラの判断基準とは)

パワハラの証拠を残しておく

自分がパワハラを受けていると感じた場合は、その受けている行為を証拠として残しておくよう心掛けることが大切です。

後々、そのパワハラについて裁判を起こす場合だけでなく、会社に対してパワハラをやめるよう求める際であっても、「パワハラがあったこと」を証拠を提示して説明しなければ、会社側に「パワハラの事実はありません」と言われてしまえば万事休すです。

また、自分が受けている行為がパワハラに当たるのか、それとも上司の部下に対する正当な業務行為に当たるのかといった判断基準は微妙なところがありますから、客観的な証拠がないと「これはパワハラです」という主張を認めてもらうことは非常に難しいのが現状です。

そのため、「パワハラがあったこと」を示す証拠を残しておくことは最重要課題と言っても過言ではありません。

パワハラを受けている証拠の具体的なものは次のようなものが挙げられます。

・上司から叱責されている場面を撮影した動画や音声記録
・上司からの暴言が記載されてるメールや手紙等
・パワハラが業務命令の形をとっている場合はその業務命令書や辞令書
・日記をつけている場合はパワハラを受けている状況を日記に記載しておく

会社に対してパワハラの被害申告を行う

パワハラの被害にあった場合は、まず会社に対してパワハラの被害申告をするのが第一段階の対処法となります。

使用者(会社・雇い主)は、労働者(従業員)が生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務を負っていますので(労働契約法5条)、労働者からパワハラの申告があった場合にはそのパワハラをやめさせるような措置をとらなければなりません。

【労働契約法第5条】
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

そのため、パワハラに遭った場合には会社に対してパワハラの実情を報告し、会社がそのパワハラを行っている上司に対してパワハラを止めるような処置をとるよう促すようにするのが先決です。

パワハラの事実を会社に対して申告する方法は、パワハラを行っている上司の上司に相談する(たとえば課長からパワハラを受けている場合は部長にそうだんするなど)等でもよいと思いますが、後々裁判になった場合に証拠として使えるようにパワハラの事実を文書に記述し内容証明郵便で送付する方法を採る方が良いと思います。

なお、この場合に会社に送付するパワハラの中止を求める申入書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

パワハラの改善を求める申し入れ書【ひな形・書式】

労働局に個別労働紛争解決の援助の申し立てを行う

各都道府県に設置された労働局では、労働者と事業主の間で紛争が生じた場合に、当事者の一方から援助の申立があった場合にはその解決のために助言や指導を行うことができます。

そして、前述したとおり、労働者が上司からパワハラを受けているにもかかわらず、そのパワハラを止めさせたりパワハラの防止策を講じない事業主は、労働契約法5条に規定された「労働者(従業員)が生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務」を怠っているということになりますから、労働局に援助の申立をすることで、労働局から法的な助言を受けたり、労働局に事業主に対して「ちゃんとパワハラに対処しなさい」といった指導をしてもらうことが期待できます。

パワハラに関する労働局への紛争解決援助の申立書の記載例

また、この援助申立による助言や指導によっても解決しない場合には、労働局に対して紛争解決の”あっせん(裁判所の調停のようなもの)”を求めることも可能となりますから、パワハラの解決も十分に期待できると思われます。

何より、この労働局に対する援助の申立や”あっせん”の申立は「無料」で利用できますので、後述する弁護士など法律専門家に相談するのと比べれば、気軽に利用できるパワハラ解決手段といえるでしょう。

なお、これら援助やあっせんの手続は最寄りの労働局に行けば親切に教えてもらえると思います。

弁護士などの法律専門家に相談する

会社にパワハラに適切に対処するよう文書を送付しても改善が見られないような場合には、弁護士などの法律専門家に相談に行く方が無難です。

会社にパワハラの事実を申告しても何らの対応もしないということは、会社がパワハラを黙認しているか、パワハラの申告があってもそれをパワハラとして認めていないものと思われます。

このような場合にいくら自分で会社に対応を求めても、「暖簾に腕押し」状態に陥り、無駄な時間が経過していくだけになります。

そのため、会社が何も対応しない場合には、早急に専門家である弁護士などに相談に行く方が良いでしょう。

弁護士などの法律専門家に相談したうえで、その後どのような対処を行っていくか(具体的には裁判を行うか、労働審判を申し立てるか、ADRなどの裁判外紛争処理手続きをとるかなど)を考える方がいいと思います。

なお、前述した会社に対して送付するパワハラの改善を文書で要求する場合も、自分の名前だけではなく弁護士の名前入りで送付すると、驚いた会社が何らかの対応を取るといった場合も多く見受けられますので、そういった点でも弁護士など法律専門家に相談するメリットはあると言えるでしょう。

弁護士?司法書士?社労士?労働トラブルの最適な相談先とは?

警察に相談に行く

受けているパワハラが、殴る蹴るなどの身体的な暴力を伴ったり、名誉や人格を傷つけるk鳥羽の暴力である場合には、傷害罪や暴行罪、名誉棄損罪や侮辱罪に該当する可能性があります。

このような悪質パワハラの場合には、警察に被害届を出すことも考えて良いかもしれません。

警察に被害届を出す場合は、最寄りの警察署にパワハラに遭った際の画像や録音データなどを持参していく方がパワハラの事実が伝わりやすいでしょう。