このページでは、仕事上のミスを理由として給料から罰金を差し引かれた場合(懲戒処分の減給を受けた場合)に、懲戒処分の種類や程度が就業規則に定められていないこと、または労働基準法第91条の上限を超過した減給がなされていることを理由として、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行う場合の申告書の記載例(ひな形・文例)を公開しています。
適宜、ワードなどの文書作成ソフトで複製するなど自由に利用してください。ただし、著作権を放棄するわけではありませんので無断転載や配布などは禁止します。
なお、この記載例(書式・ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。
この記載例(書式・ひな形例)を使用して生じる一切の損害につき当サイトの管理人は責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。
仕事上のミスを理由として給料から罰金を差し引かれた(懲戒処分の減給を命じられた)場合の労働基準監督署への違法行為の是正申告書の記載例
(1)懲戒処分の種類及び程度が就業規則に記載されていないことを理由とする場合
〇〇労働基準監督署長 殿
労働基準法違反に関する申告書
平成〇年〇月〇日
申告者
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都大田区〇〇七丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 甲斐都蘭
電話番号 090-****-****
違反者
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都江東区〇〇二丁目〇番〇号
名称 株式会社罰金運送
代表者 佐田免造
電話番号 03-****-****
労働基準法104条1項に基づき、下記のとおり労働基準法に違反する事実を申告いたします。
記
1 当事者
違反者は、軽貨物運送を業とする従業員800名の株式会社である。
申告者は、平成〇年〇月に配送ドライバーとして入社し、違反者の新宿配送センターにおいて軽トラックを運転して軽貨物を配送する業務に従事している。
2 労働基準法に違反する事実
申告者は、平成○年○月上旬、軽トラックを運転中に自らの不注意から物損事故を起こしてしまい軽トラックの修繕費用として金10万円の損害を違反者に与えてしまったことから、懲戒事由の「故意または過失により使用者に損害を与えたとき」に該当するとして○月分支払の給与から金〇円を差し引かれるという罰金(減給)の懲戒処分を受けた。
しかしながら、違反者の就業規則には「故意または過失により使用者に損害を与えたとき」という懲戒事由は定められておらず、また懲戒処分として「懲戒解雇」や「降格」などは定められているものの「罰金(減給)」という懲戒処分は定められていない。
3 是正措置の申立
違反者の行為は、労働基準法第89条9号の規定に違反する。よって、速やかに調査を行うとともに是正措置をとられるよう求める。
4 添付資料
・罰金(減給)が差し引かれた○月分の給与明細書の写し 1通
5 備考
本件申告をしたことが違反者に知れると勤務先で不当な扱いを受ける恐れがあるため、違反者に対しては申告者の氏名を公表しないよう求める。
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。
(2)減給(罰金)として給料から差し引かれた金額が労働基準法第91条の上限金額を超えていることを理由とする場合
〇〇労働基準監督署長 殿
労働基準法違反に関する申告書
平成〇年〇月〇日
申告者
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都文京区〇〇二丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 肥手益代
電話番号 090-****-****
違反者
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都渋谷区〇〇二丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称(屋号) アンティークショップ・罰金
代表者 罰金波良江
電話番号 03-****-****
労働基準法104条1項に基づき、下記のとおり労働基準法に違反する事実を申告いたします。
記
1 当事者
違反者は、渋谷区の道玄坂でアンティークショップを営む個人事業主である。
申告者は、平成〇年〇月に販売員アルバイトとして違反者から雇用され、違反者の営むアンティークショップ道玄坂店において販売員として就労している。
2 労働基準法に違反する事実
申告者は、平成○年○月、就業中に誤ってアンティーク商品を落下させ破損させる事故を5回発生させたことから、懲戒事由の「故意または過失により使用者に損害を与えたとき」に該当するとして事故1回あたり金5千円の罰金(減給)の懲戒処分を1月内に5回命じられたことにより、○月支払い分の給与から合計金2万5千円を差し引かれた。
しかしながら、申告者の日給は金1万円で1か月に20日勤務となっているため1月分の賃金の総額は金20万円にしかならないから、金2万5千円を差し引かれた場合にはその減給の懲戒処分によって差し引かれた金額は1賃金支払期における賃金総額の10分の1を5千円超過することになる。
3 是正措置の申立
違反者の行為は、労働基準法第91条の規定に違反する。よって、速やかに調査を行うとともに是正措置をとられるよう求める。
4 添付資料
・罰金(減給)が差し引かれた○月分の給与明細書の写し 1通
5 備考
本件申告をしたことが違反者に知れると勤務先で不当な扱いを受ける恐れがあるため、違反者に対しては申告者の氏名を公表しないよう求める。
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。
違法行為の是正申告書の記載要領
(1)「当事者」の欄
当事者の欄は、会社やご自身の会社の業務に合わせて適宜書き直してください。匿名で申告したい場合は申告者の欄は空欄のまま提出しても構いません。
なお、具体的な提出先は会社の所在地を管轄する労働基準監督署になるかと思われますが、その具体的な住所等については厚生労働省のサイトで各自ご確認をお願いします。
(2)「労働基準法に違反する事実」の欄
労働基準法に違反する事実の欄には、使用者(会社)からどのような労働基準法に違反する行為を受け、どのような不利益を受けているのかといった点についてある程度具体的に記載します。
上記の事例では、月給20万円の労働者が給料から2万5千円を差し引かれていますが、使用者(会社)が労働者に対して懲戒処分として減給(罰金)を命じる場合であっても、その減給できる上限金額については労働基準法の第91条で「1回の額が平均賃金の1日分の半額」「総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1」と定められていますので、5千円上限を超過して差し引かれていることが労働基準法違反にあたるというような文章にしています。
なお、この減給(罰金)の上限金額の規定の詳細や、仕事上のミスを理由に罰金や減給の懲戒処分を命じられた場合の具体的な対処法などについてはこちらのページで解説しています。
(3)「是正措置の申立」の欄
是正措置の申立の欄には、会社の行為が労働基準法の何条(何項)に違反するのかを記載します。
上記の事例では、減給(罰金)の上限金額を超過した金額が給料から差し引かれていることが問題となっていますので、懲戒処分による減給の上限金額を定めた労働基準法の第91条に違反するというようなことを記載しています。
なお、労働基準監督署に対する違法行為の是正申告は会社が労働基準法という法律の条文に違反していることが前提となりますので、どの条文に違反するか分からない場合は労働基準監督署に相談に行って聞いてみるか、事前に弁護士などの法律専門家に相談する方が良いかもしれません。
(4)「添付書類」の欄
添付書類の欄には、労働基準法違反の事実を証明するような書類等があれば、その書類等の名称と添付する通数を記載します。
労働基準監督署への違法行為の是正申告は裁判所における裁判と異なりますから添付書類は必ずしも添付する必要はありませんが、使用者の労働基準法違反を証明するような書類(※画像や動画の記録などの電子データでもよい)がある場合には添付書類として提出してください。
なお、上記の文例では、「一賃金支払期の賃金の総額の10分の1を超える金額が減給(罰金)の懲戒処分として差し引かれていること」を明らかとするために「○月分の給与明細書」の写しを添付することにしています。
なお、添付書類として提出する文書の「原本」は、後に裁判になった際に使用する可能性がありますので、労働基準監督署に対しては原本ではなく「写し(コピー機で複写したもの)」を提出するようにした方が良いでしょう。
(5)「備考」の欄
労働基準監督署への違法行為の是正申告は、労働基準監督署には氏名を明らかにしつつも会社には匿名にして申告することも可能です。
是正申告したことを会社に知られても構わない場合は備考の欄は削除しても構いません。
なお、上記の記載例のように記載して提出した場合、労働基準監督署が調査を行う場合は”一般的な臨検”として調査が行われるものと思われます。