このページでは、休職が必要な病気や怪我でないにもかかわらず使用者から休職を命じられた場合に、その不当な休職命令の撤回を求めるため労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
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休職が必要な状態でないにもかかわらず病気や怪我を理由に休職を命じられた場合に、その休職命令の撤回を求めるため労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 福岡県北九州市八幡東区〇〇町〇番〇号
氏名 唐田元気
電話番号 080-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 福岡市中央区〇〇三丁目〇番〇号
名称 株式会社ドゥーノットカムヒアー
代表者 海勺瑠奈
電話番号 092-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
休職命令を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、ウイルスの感染を100%防止できる使い捨てマスク「ウイルスカット100」を開発・販売する従業員123名の株式会社である。
申立人は、平成〇年〇月に営業職員として入社し、本社営業所にて医療用マスクの販売促進業務に従事している。
申立人は、平成〇年〇月〇日に高熱が出たことから医師の診察を受けたところインフルエンザと診断されたため翌〇日から〇日まで3日間の休職を被申立人に申請し、被申立人の許可を得て当該3日間休職したが、休職期間の3日が経過した後も復職が認められず、「他の従業員へのインフルエンザ感染の拡大防止のため」という理由でその後1カ月間の休職を命じられた。
しかしながら、申立人は当初の休職期間である3日間で従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復しており、医師からも「感染を拡大させる可能性はほぼない」という診断を受けているから、当初の休職明け後1か月間という長期間にわたって休職しなければならない合理的な理由はない。
したがって、被申立人の行った休職命令は権利の濫用といえ法令上の違反がある。
3 紛争の経過
申立人は当初の休職期間の3か目である平成○年○月○日に医師の診察を受け、インフルエンザのウイルスは検知できないし熱も37度まで下がっていたことから復職しても問題ないだろうという診察を受けたため、直属の上司である△△に翌日から出社できる旨の電話を入れたが、「社内の会議によりインフルエンザに感染した場合は感染拡大防止のため1か月間の休職を命じることに決まった」と、翌日の〇日から更に1か月間の休職をするよう命じられた。
これに対し申立人は、同日夕方に会社に出社し、上司の△△に対して「インフルエンザは治癒しており感染拡大の恐れはない」旨を記載した診断書を提示して復職に問題ないことを説明したが、「会議で決まったことだから」と回答するのみで一切取り合ってもらえなかった。
その2日後の○月○日、被申立人から申立人宅に休職命令を命じる通知書が送付されてきたため、申立人は「休職命令の撤回を求める申入書」を作成し被申立人に対して文書で改めて休職命令の撤回を求めたが、現在に至るまで当該休職命令は撤回されていない。
4 添付資料
・休職命令を命じた通知書の写し 1通
・休職命令の撤回を求める申入書写し 1通
・○月○日に交付を受けた医師の診断書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を起こしていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。
上記の事例では、インフルエンザが治癒し従前の職務を通常の程度に行える程度に回復して感染の拡大もする可能性はないという医師の診断を受けたにもかかわらず、合理的な理由がないまま会社が一方的に1か月間という長期間にわたる休職を命じたことが権利の濫用(労働契約法第3条4項ないし5項、民法第1条2項ないし3項)であって無効であるとして、その違法な休職命令を撤回するよう求めるという文章にしています。
なお、不当な休職を命じられた場合の対処法などの詳細についてはこちらのページでご確認ください。
▶ インフルエンザで上司に休めと言われたら休まないといけない?
※「紛争の経緯」の欄について
紛争の経緯の欄には、会社との間に発生した紛争がどのようなきっかけで発生し、会社とどのような交渉を行ってきたのか、ということを記載します。
上記の事例では、インフルエンザが治癒し従前の職務を通常の程度に行える程度に回復して感染の拡大もする可能性はないという医師の診断を受けた後に上司の△△から1か月間の休職を命じられたことや、医師の診断書を提示しても休職命令を撤回してもらえなかったこと、その後文書で撤回を求めても一切聞き入れてもらえなかったことなどを紛争の経緯として記載しています。
※「添付書類」の欄について
添付書類の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の事例では、「会社から休職命令を受けたこと」を明らかにするために「休職命令を命じた通知書」の写しを、「会社に対して休職の撤回を求めたこと」を明らかとするために「休職命令の撤回を求める申入書」の写しを、また「休職しなければならない合理的な理由がないこと」を明らかとするために「休職命令が出される前に医師から交付を受けた診断書」の写しを添付することにしています。
ちなみに、「休職命令の撤回を求める申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
▶ 病気や怪我を理由とした休職命令の撤回を求める申入書の記載例
なお、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。
(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)
様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。
上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。