このページでは、休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答することが義務付けられている場合に、労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例(ひな形・文例・書式)を公開しています。
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会社から休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答するよう指示されている場合における労働局の紛争解決援助申告書の記載例
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 大阪市淀川区十三○丁目〇番〇号
氏名 安見泰子
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 大阪市北区〇〇丁目〇番〇号
名称 株式会社古希塚井興業
代表者 安間仙蔵
電話番号 06-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
休日に会社からの電話やメールに応答することを強制しないよう、また、これまでに会社からの電話やメールに応答することを強制した休日について休日労働の賃金を支払うよう、事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、スマートフォンケースの輸入販売業を営む従業員20名の株式会社であり、市内の電気店や携帯電話販売店などに外国から輸入したスマートフォンケースを納品する卸売業を営んでいる。
申立人は、平成〇年〇月に営業社員として入社し、新規販売店の開拓や担当販売店への納品調整業務を主な業務として勤務しているが、上司からの指示により、休日であっても9時から17時の時間帯については会社からの電話やメールに常時応答するように義務付けられている。
しかしながら、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいうと解されるところ(三菱重工長崎造船所事件:最高裁平成12年3月9日判決に同旨)、被お申立人のように休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答することを義務付けている場合には、たとえ休日であっても申立人らの従業員が使用者である被申立人の指揮命令下に置かれていると言えるから、その休日は形式的には”休日”であっても実質的には労働が義務付けられる”実労働日”と判断できるものである。
そのため、被申立人は、申立人らの従業員に対して休日に会社からの電話やメールに応答できる状態でいることを指示していた以上、その休日に関しては実労働日として労働基準法第37条第1項所定の賃金を支払う義務があると考えられるが、被申立人は休日労働とは認識しておらず休日労働に対する割増賃金を支払っていない。
また、労働基準法第35条においては、使用者は毎週少なくとも毎週1回(または4週間に4回)の休日を与えなければならいと規定されているが、被申立人が申立人ら従業員に対して休日に会社からの電話やメールに応答できる状態でいることを指示したことによってその休日は実際には実労働日として休日には当たらないから、申立人らは実質的に法定の休日を与えられないまま無休で労働させられている状態にあるといえる。
以上のような状況であるため、このような被申立人の行為は、労働基準法第37条第1項にまた同条35条に違反するものである。
3 紛争の経過
申立人は直属の上司である〇〇から「休日でも取引先から連絡がある場合があるから9時から17時の間は常時会社からの電話やメールに応答できるようにしておくように」と指示されたため、上司に指示された平成〇年〇月以降は休日であっても会社からの電話やメールに応答(返答)ができるようにし、実際に月に3~4回程度は休日に会社に出勤している上司や同僚から電話を受け、自分が担当している取引先との在庫調整の程度や製品の出荷状況などについて助言などを行っている。
しかし申立人は、休日に会社からの電話やメールに応答しなければならないとなると電波の届かない地域に旅行等に出かけることもできず、仮に電波の届く範囲にいたとしても会社からの電話やメールが来るとその都度頭の回路を仕事モードに切り替えなければならず、十分に休息することができないことから、上司である〇〇に対して休日に会社からの電話やメールに応答しなければならないという現在の取り決めを改善するよう要請した。
これに対して上司の〇〇は、「仕事の都合上、休日でも対応しなければならないのはお前もわかっているだろう」「みんな文句言わずに頑張ってるんだからお前だけ特別扱いできるわけないだろう」などと言うのみで、一向に改善する気配がない。
そのため申立人は同年○月○日、被申立人の経営者である代表取締役の安間仙蔵にに対し「休日に会社からの電話やメールに応答しなければならないという状況ではゆっくりと休息することができないから改善してほしい」「どうしても改善できないなら会社からの電話やメールに応答しなければならない時間については休日出勤と考えて休日労働にあたる割増賃金を支払ってほしい」と要請した。
しかし代表取締役の安間仙蔵は、「取引先は土日関係なく営業してるんだから”担当者が休んでるんで月曜日まで待ってください”とは言えないだろ」「休みの日に会社からの電話やメールに応答するなんて社会人として当たり前だろ」「みんな文句を言わずに頑張ってんだからお前だけ特別扱いできるか」などと言うのみで、休日の電話やメールに応答しなければならないという決まりを改善することはなく、電話やメールに応答することを義務付けた休日ている休日について休日労働として賃金を支払うことも拒否している。
4 添付資料
・休日であっても電話やメールに応答するよう上司から命令されたメールをプリントアウトしたもの 1通
以上
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を起こしていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。
上記の事例では、休日であっても上司や同僚からの電話やメールに応答(返答)することが義務付けられている場合には、その休日の9時から17時の間は「会社の指揮命令下」に置かれている状況にあることから形式的には”休日”であっても実質的には賃金の発生する”労働時間”に該当することになるにもかかわらず、その休日出勤の賃金が支払われていないことを、また、形式的には”休日”であっても実質的には”労働日”と判断できる限り使用者は労働者に対して毎週すくなくとも1回(または4週間のうち4回)は休日を与えなければならないと規定した労働基準法第35条に違反していることを根拠として、使用者が労働者を休日に労働させた場合には、休日労働に関するの割増賃金を支払わなければならないと規定した労働基準法の第37条1項と、使用者は労働者に休日を与えなければならないと規定した労働基準法第35条に違反するという文章にしています。
なお、上記の記載例でも記載しているように、最高裁判所の判例では賃金が発生する”労働時間”とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいうと判断されていますので、たとえ休日で会社に出勤していない場合であっても、上記の事例のように会社からの電話やメールに応答することが義務付けられている場合には「会社の指揮命令下」に置かれていると解されることから、その休日は”休日”ではなく”実労働日”にあたり、電話やメールに応答することが義務付けられた9時から17時までの時間については休日労働の賃金を支払わなければならないと考えられます。
なお、この点の法律上の解釈については『休日に来る上司からの電話やメール、返答しないといけないの?』のページで詳細に解説していますので参考にしてください。
※「紛争の経緯」の欄について
紛争の経緯の欄には、会社との間に発生した紛争がどのようなきっかけで発生し、どのような交渉を行ってきたのか、ということを記載します。
上記の事例では、申立人が会社の上司に対して休日の電話やメール応対の慣例を改善するよう要請したものの何らの改善もなされなかったことから会社の代表取締役に直訴したが、会社代表者も何らの改善も行わないまま問題を放置したという状況を記載して会社の違法性を説明する文章にしています。
※「添付書類」の欄について
添付書類の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の事例では、会社側が休日であっても会社からの電話やメールに応答することを義務付けていたことを明らかとするために「休日であっても電話やメールに応答するよう上司から命令されたメール」をプリンターでプリントアウトしたものを添付するものとしています。
なお、労働局への紛争解決援助の申立は裁判所における”裁判”とは異なりますから、必ずしも会社の違法性を証明する証拠がなければ申立できないというわけではありません。
添付書類として添付出来るような書類等がない場合には、添付書類の欄には「特になし」と記載して申立を行っても一向に問題ありませんので誤解の内容にしてください。