このページでは、会社から不当な減給(罰金)の懲戒処分を受けたことを理由として、労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例(ひな型・書式)を後悔しています。
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不当な減給の懲戒処分を受けたことを理由に労働局に紛争解決援助申立を行う場合の申立書の記載例
(1)就業規則に定めがないことを理由とする場合
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都世田谷区〇〇四丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 平良佐奈伊乃
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都千代田区〇〇七丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社サダメズシステムズ・減給
代表者 減給須瑠造
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
懲戒処分に基づく減給を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、ひな人形のお内裏様とお雛様の相性を瞬時に占うスマートフォン向けアプリ「フィーリング♡HINA」を開発及び配信する従業員33名の株式会社である。
申立人は、平成〇年〇月に入社しスマホ向けアプリで表示させるひな人形のアニメデザインをプログラミングする業務に従事していたが、平成○年〇月上旬、プログラムしたデータの不具合を原因としたバグが見つかったことから「過失により使用者に損害を与えた」ことを理由として減給〇円の懲戒処分を命じられた。
しかしながら、使用者が労働者に対して懲戒処分を行う場合には、その懲戒処分の種類及び程度が就業規則に明確に定められることによりその懲戒権の根拠が労働契約の内容となっていることが必要であって(労働基準法の第89条9号、国鉄札幌運転区事件最高裁昭和54年10月30日に同示)、かかる就業規則の定めがない場合には、その懲戒処分には客観的合理的な理由がないものとして労働契約法第15条により権利の濫用として無効と判断すべきものである。
この点、申立人が仕事上のミスでスマホ向けアプリの配信に不具合が発生したことは事実はあるものの、被申立人の就業規則には懲戒事由として「故意または過失により使用者に損害を与えたとき」などという事項は定められておらず、また就業規則には懲戒処分の種類として懲戒解雇や降格、出勤停止などの定めは明記されているものの”減給”についてはその定めがなされていない。
したがって、被申立人の行った懲戒処分としての減給には客観的合理的な理由が存在しないといえるから、その懲戒処分は権利の濫用として無効なものといえる。
3 紛争の経過
申立人は平成○年○月上旬、上司の〇〇から「君のプログラミングのミスでアプリの配信に不具合が生じ復旧作業に膨大な時間が必要になった」「今回の件は懲戒事由に該当するから次の給料の際に〇円が減給されることに決まったから」と一方的に減給の懲戒処分を命じられた。
これに対して申立人は、「故意または過失により使用者に損害を与えたとき」という懲戒事由や「減給」という懲戒処分の種類やその程度が就業規則に明確に定められていないことを指摘して就業規則に根拠のない懲戒処分は不当である旨抗議したが、「お前のミスで会社に損害が出たんだから懲戒は仕方ないだろう」というのみで一切聞き入れてもらえなかった。
そのため申立人は、同年○月○日付で「減給の懲戒処分の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法でその撤回を申し入れたが、現在に至るまで当該減給の処分は撤回されていない。
4 添付資料
・懲戒処分に基づく減給を命じた辞令書の写し 1通
・減給の懲戒処分の撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする場合はA4用紙を利用するようにしてください。
(2)企業秩序を損なったとはいえないことを理由とする場合
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都青梅市〇〇町二丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 指樋玖奈
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都中野区〇〇五丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社減給アプリケーションズ
代表者 減給志多代
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
減給の懲戒処分を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、ひな人形の”ぼんぼり”の明るさを瞬時に計測するスマートフォン向けアプリ「ぼんぼりチェッカー」を開発及び配信する従業員303名の株式会社である。
申立人は、平成〇年〇月に被申立人に入社し、スマホ向けアプリのメンテナンス業務に従事していたが、平成○年〇月上旬、上司の既婚男性といわゆる不倫関係にあったことが社内で知られてしまったことから「社内の風紀を乱した」との理由で減給〇円の懲戒処分を命じられた。
しかしながら、使用者が労働者に対して懲戒処分を行う場合であっても、就業規則で定められた懲戒事由に該当することとなる行為の性質や態様その他の事情に照らして客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められる事情がない場合には、その懲戒処分は権利の濫用として無効と判断されるものであると考えられる(労働契約法第15条)。
この点、確かに申立人が既婚者の上司といわゆる不倫関係にあった事実はあるものの、その不倫の事実を知っているのは社内でもほんの数人に過ぎないから「社内秩序を乱した」とまではいえないから、その不倫したことだけを理由に減給という重い懲戒処分を下すことには客観的合理的な理由があるとはいえず、社会通念上相当であるともいえない。
したがって、被申立人の行った減給の懲戒処分は労働契約法第15条により権利の濫用として無効なものといえる。
3 紛争の経過
申立人は平成○年〇月ごろから既婚者である上司の男性と交際を始めいわゆる不倫関係に陥ってしまったが、その上司の妻から慰謝料の請求を受けていることが数人の従業員に知られてしまったことで不倫のうわさが社内で広がるようになり、平成○年〇月下旬、上司の〇〇に会議室に呼び出され「君の不倫で社内の風紀が乱れたから懲戒処分の減給が決まった」と一方的に減給の懲戒処分を命じられた。
これに対して申立人は、不倫の事実はあったもののその事実を知っているのはほんの数人で「社内の風紀を乱した」というほどのことはなかったと認識していたことから減給という懲戒処分は納得できない旨抗議したが、「じゃあ不倫をしてもいいということか?」「不倫で風紀を乱さないという証拠でもあるのか?」」というのみで一切聞き入れてもらえなかった。
そのため申立人は、同年○月○日付で「減給の懲戒処分の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法でその撤回を求めたが、現在に至るまで減給の懲戒処分は撤回されていない。
4 添付資料
・減給の懲戒処分を命じた辞令書の写し 1通
・減給の懲戒処分の撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする場合はA4用紙を利用するようにしてください。
(3)懲戒処分を必要とするような行為ではないことを理由とする場合
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都大田区〇〇二丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 佐志陽玖奈
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都目黒区〇〇八丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社罰金エージェント・システムズ
代表者 罰金司太郎
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
懲戒処分に基づく降格を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、”ひなあられ”の個数を瞬時に計測するスマートフォン向けアプリ「ひなあられカウンター33」を開発及び配信する従業員333名の株式会社である。
申立人は、平成〇年〇月に入社しアプリケーションエンジニアとして勤務しているが、平成○年○月に2度遅刻したことから「無断で遅刻を繰り返したとき」という懲戒事由に該当するとして被申立人から罰金として金〇円を〇月分の給与から差し引くという懲戒処分を受けた。
しかしながら、使用者が労働者に対して懲戒処分を行う場合であっても、就業規則で定められた懲戒事由に該当することとなる行為の性質や態様その他の事情に照らして客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められる事情がない場合には、その懲戒処分は権利の濫用として無効と判断されるものである(労働契約法第15条)。
この点、申立人が〇月に2回遅刻したことは事実であるが、2回の遅刻によって会社の秩序を害されたとは考えられないから、かかる事実をもって罰金(減給)という重い懲戒処分を下すのは社会通念上相当とは言えないはずである。
したがって、被申立人の行った罰金(減給)の降格処分は労働契約法第15条により権利の濫用として無効なものといえる。
3 紛争の経過
申立人は平成○年○月上旬、上司の〇〇に会議室に呼び出され「〇月に2回遅刻したことは懲戒事由に該当するから罰金として○月分の給料から〇円差し引かれるから」と一方的に懲戒処分による罰金(減給)を命じられた。
これに対して申立人は、2回遅刻したことは事実ではあるが、その遅刻によって社内の秩序が乱れたということはいえないから懲戒処分を与えるほどではないはずである旨抗議したが、「お前が遅刻したことは事実だし無断遅刻が懲戒事由にあたるとも就業規則に定められているからどうしようもないだろう」というのみで一切聞き入れてもらえなかった。
そのため申立人は、同年○月○日付で「減給の懲戒処分の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法でその撤回を求めたが、現在に至るまで当該減給の懲戒処分は撤回されていない。
4 添付資料
・罰金の懲戒処分を命じた辞令書の写し 1通
・減給の懲戒処分の撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする場合はA4用紙を利用するようにしてください。
申立書の記載要領
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。
上記の(1)の記載例では、仕事上のミスで会社に損失を与えたことは事実であるものの、それを理由に懲戒処分を与える場合に必要となる「故意または過失により使用者に損害を与えたとき」といった就業規則の定めや、懲戒処分としての”減給”の種類やその程度などが就業規則に明確に記載されていないといった事情があることから、減給の懲戒処分に労働契約上の根拠がないことを指摘して労働契約法第15条の客観的合理的な理由がない懲戒処分として無効になるというような文章にしています。
(2)の事例では、上司の既婚男性と不倫したことは事実であるものの、その事実を知っているのは社内でも数人にしか過ぎないことから社内の秩序を乱したということはいえないから、懲戒事由として定められた「社内の風紀を乱したとき」には当たらず労働契約法第15条の客観的合理的理由や社会通念上の相当性がない、というような文章にしています。
(3)の事例では、過去に2回遅刻したことは事実であるため「無断で欠勤又は遅刻を繰り返したとき」という懲戒事由に形式的にはあてはまるものの、2回だけの遅刻を理由に罰金という重い懲戒処分を与えるのは社会通念上相当とはいえず無効であるといった文章にしています。
なお減給(罰金)の懲戒処分を命じられた場合の具体的な対処法などについてはこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。
上記の事例では、上司から減給(罰金)の懲戒処分を命じられた際に客観的合理的な理由や社会通念上相当といえる事情がないことなどを説明して抗議したものの一切聞いてもらえず、減給の懲戒処分の撤回を求める申入書を送付しても現在まで撤回されていないことなどを簡単に記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の記載例では「減給の懲戒処分を受けたこと」を明らかにするために「減給の懲戒処分を命じた辞令書の写し」の写しを、また「文書で減給の懲戒処分の撤回を求めたにもかかわらず減給が撤回されなかったこと」を明らかとするために「減給の懲戒処分の撤回を求める申入書」も添付することにしています。
なお、この場合に添付する「減給の懲戒処分の撤回を求める申入書申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
ちなみに、裁判所における裁判と異なり労働局の紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必ずしも必要ではありませんので、紛争の事実を証明できる文書やデータ(画像や音声・画像記録)がない場合には「特になし」と記載して提出しても問題ありません。
なお、「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出するようにしてください。
※ 様式について
労働局に提出する紛争解決申立書に定型の様式は定められていないため適宜の様式で提出して問題ありませんが、東京労働局のサイトから申立書のひな型をダウンロード(Word)することも可能です(東京労働局の様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申立する労働局に事前連絡や相談を行うと思いますので、その相談の際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。
なお、申立書を提出する労働局の具体的な住所等については厚生労働省のサイトで各自ご確認をお願いします→ 都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省)。