このページでは、勤務している美容院(美容室)において「くし」や「はさみ」など顧客の皮膚に直接触れることのある器具等について法律上義務付けられた消毒が行われていないことを監督官庁に内部告発する場合の申出書の記載例(サンプル)を公開しています。
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美容院(美容室)でハサミやクシなど皮膚に直接触れる器具の消毒が行われていないことについて監督官庁に内部告発する場合の申出書の記載例
申出書
平成〇年〇月〇日
渋谷区長 殿 ←注1
氏名 告発 スル美 ㊞
美容師法に違反する行為につき、下記のとおり申し出ます。
記
1 申出人の氏名又は名称及び住所並びに電話番号
氏名又は名称 告発スル美
住所 神奈川県川崎市中原区〇〇二丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
電話番号 080-****-****
2 申出に係る通報の種類
皮ふに接する器具の消毒義務違反
3 申出の理由
申出人は事業者が経営する美容院「ヘアスタジオ・ベリーダーティー 渋谷店」で美容師見習いとして勤務しているが、同美容院では店長の指示により、一度使用したハサミやクシなど顧客の皮膚に直接触れる器具について法令で定められた方法により消毒を行うことなく使いまわすことが常態化している。
4 申出に係る事業者等の氏名又は名称及び住所
氏名又は名称 株式会社ベリーダーティー
住所 東京都千代田区〇〇三丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
5 申出に係る違法行為を行っている事業所の場所及び氏名又は名称
氏名又は名称 ヘアスタジオ・ベリーダーティー 渋谷店
住所 東京都渋谷区〇〇一丁目〇番〇号〇〇ビル1階
以上
注1)この記載例では「渋谷区」に所在する美容院の違法行為を通報する場合を想定していますので「渋谷区長 殿」と記載していますが、保健所が設置されている市の場合には「〇〇市長 殿」と、また保健所が設置されていない自治体の場合には「都道府県知事 殿」や「〇〇県庁〇〇部〇〇課 御中」などと記載してください(※詳細は後述の(2)を参照)。
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。
【匿名で内部告発したい場合】
自分の氏名を申告せずに匿名で告発したい場合は上記の「氏名」の欄や「1 申出人の氏名又は名称及び住所」の欄を白紙のまま提出するか、「6 備考」の項目を追加して「本件申出をしたことが事業者に知れると勤務先で不当な扱いを受ける恐れがあるため事業者に対しては申出人の氏名を公表しないよう求める。」などと記載するなどしてください。
※ただし、匿名で内部告発する場合は監督官庁としてもその告発内容の信ぴょう性を確認できず単なる「いたずら」として処理される可能性もありますので注意してください。また、仮にこのように記載したとしても監督官庁が確実に氏名を秘匿してくれるかは保証できませんのでご自身の判断で申出を行ってください。
申出書の記載要領
(1)申出書の様式
美容師業務に関して規定された美容師法に違反する事業者を監督官庁に申告する申出は法律で定められた手続きではありませんので、美容師法に違反する事業者について情報提供する場合に使用する申出書についても定型の様式は定められていません。
そのため美容院(美容室)で美容師の免許を持たない無免許者(無資格者)が美容業務に従事している行為について監督官庁に内部告発する場合の申出書も適宜な書式で記載しても構いませんが、このサイトでは上記のような様式で記載することにしています。
(2)申出書の提出先
消費者庁のサイトによると、美容師法に違反する行為については、その違法行為が行われている美容院(美容室)が「保健所が設置されている”市”」に所在している場合にはその『市』に(※ただし東京23区に所在している場合にはその”区”に)、「それ以外(保健所が設置されていない市又は東京23区以外の市町村等)」に所在している場合には『各都道府県』がその通報先(情報提供先)になっているようです。
そのため、上記の記載例のように「東京都渋谷区」で営業する美容室の場合には「渋谷区(渋谷区長)」に対して通報することになろうかと思います。
(※なお、これとは異なり、たとえばその美容院が大阪市の淀川区で営業しているような場合には大阪市の行政区は東京都23区のように特別区ではなく保健所が区ごとに設置されていませんので「淀川区」ではなく「大阪市」に申告することになります。またたとえば東京でも保健所の設置されていない檜原村に所在している美容室であれば「東京都(東京都知事)」を名宛人として通報することになります)。
なお、『都道府県』に通報する場合には申出書の名宛人は「〇〇県知事 殿」や「〇〇県庁〇〇部〇〇課 御中」などと、『市』に通報する場合は「〇〇市長 殿」などと記載してください。
ちなみに、美容師法に関する公益通報の具体的な通報先の住所は消費者庁のこちらのページに掲載されています。
(3)申出の根拠
美容師は、美容師業務で使用する器具のうち、顧客の皮膚に直接接触することのある器具については、美容師法施行規則第25条第2号で定められた方法による消毒を行うことが義務付けられています(美容師法第8条および美容師法施行規則第25条2号)。
なお、「皮ふに接する器具」とは具体的には「クリッパー」「はさみ」「くし」「刷毛」「ふけ取り」「かみそり」「その他の皮膚に直接接触して用いられる器具」を指します(美容師法施行規則第24条)。
美容師は、美容の業を行うときは、次に掲げる措置を講じなければならない。
第1号 皮ふに接する布片及び皮ふに接する器具を清潔に保つこと。
第2号 皮ふに接する布片を客一人ごとに取り替え、皮ふに接する器具を客一人ごとに消毒すること。
第3号 その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置
法第8条第1号及び第2号に規定する器具とは、クリッパー、はさみ、くし、刷毛、ふけ取り、かみそりその他の皮膚に直接接触して用いられる器具とする。
法第8条第2号に規定する消毒は、器具を十分に洗浄した後、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定めるいずれかの方法により行わなければならない。
第1号(省略)
第2号 前号に規定する器具以外の器具に係る消毒
イ 二十分間以上一平方センチメートル当たり八十五マイクロワット以上の紫外線を照射する方法
ロ 沸騰後二分間以上煮沸する方法
ハ 十分間以上摂氏八十度を超える湿熱に触れさせる方法
ニ エタノール水溶液中に十分間以上浸し、又はエタノール水溶液を含ませた綿若しくはガーゼで器具の表面をふく方法
ホ 次亜塩素酸ナトリウムが〇・〇一パーセント以上である水溶液中に十分間以上浸す方法
ヘ 逆性石ケンが〇・一パーセント以上である水溶液中に十分間以上浸す方法
ト グルコン酸クロルヘキシジンが〇・〇五パーセント以上である水溶液中に十分間以上浸す方法
チ 両性界面活性剤が〇・一パーセント以上である水溶液中に十分間以上浸す
そのため、上記の記載例のような「はさみ」や「くし」といった顧客の「皮ふに接する器具」について「客一人ごとに消毒すること」をせずに使いまわしているような場合には、その美容師は美容師法に違反する違法な行為を行っているということになります。
そして、この美容師法8条で規定された「皮ふに接する器具」について「客一人ごとに消毒すること」という義務に違反した美容師については都道府県知事から「業務の停止」や「免許の取消」がなされることがあり(美容師法第10条)、またその「業務の停止」が命じられているにもかかわらず、美容院の経営者がその「業務の停止」を受けた美容師に美容師の業務を行わせた場合には、その美容院(美容室)は都道府県知事から一定期間の営業停止(閉鎖)が命じられることがあります。
第1項(省略)
第2項 都道府県知事は、(省略)第8条の規定に違反したとき(省略)は、期間を定めてその業務を停止することができる。
第3項 厚生労働大臣は、美容師が前項の規定による業務の停止処分に違反したときは、その免許を取り消すことができる。
第4項(省略)
第1項 都道府県知事は(省略)第10条第2項の規定による業務の停止処分を受けている者にその美容所において美容の業を行わせたときは、期間を定めて当該美容所の閉鎖を命ずることができる。
第2項(省略)
そのため、上記の記載例のように「皮ふに接する器具」について美容師法施行規則第25条で定められた方法に従って消毒が行われていない場合には、美容師法第8条に違反することを根拠としてその事実を監督官庁(保健所の設置されている「市」や「東京都の区」や「各都道府県」)にその違法行為を申告することにより、勤務している美容院(美容室)に所属する美容師やその勤務する美容院(美容室)自体に対する行政処分をうながすことによってその違法行為を改善することが可能となります。
なお、前述したとおり美容師業務に関して規定された美容師法に違反する事業者を監督官庁に申告する申出は法律で定められた手続きではありませんので、このような「皮ふに接する器具」の消毒が行われていないことを監督官庁に告発する場合には、上記の記載例のようにその美容院(美容室)に勤務している従業員だけでなく、例えばその美容院の顧客であったり出入り業者であったりその美容院とは直接関係のない第三者であっても上記のような申出することに差し支えありません。
(4)美容師法の第8条に違反した場合の罰則等
前述したように「皮ふに接する器具」の消毒義務に違反した美容師本人については都道府県知事から業務停止が命じられたり、その業務停止を受けた美容師に美容師業務を行わせた美容院(美容室)が都道府県知事から一定期間の営業停止(閉鎖)を命じられる可能性があります。
なお、美容院(美容室)が都道府県知事から命じられた営業停止(閉鎖)の処分に違反して美容院(美容室)の営業を継続した場合には、その美容院(美容室)の経営者や所属する美容師その他の従業員が30万円以下の罰金に処せられる場合があります(美容師法第18条及び19条)。
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
第1号~4号(省略)
第5号 第15条の規定による美容所の閉鎖処分に違反した者
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前条第2号から第5号までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。
(5)内部告発を行う場合の注意点
なお、内部告発をする際の注意点などについては『内部告発(公益通報)の正しい方法と順序』のページを参考にしてください。