転籍命令を拒否することはできるのか?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

悩む外国人男性

人事異動は大きく分けて「配転」「出向」「転籍」の3種類がありますが、同一の会社の中で職種や勤務地だけが変更される「配転」や、勤務する会社とは異なる会社で就労することになるものの社員としての籍は元の会社に残される「出向」とは異なり、社員としての籍も移動先の会社に移されてしまうものを「転籍」といいます。

(※なお、出向・転籍の違いについては『配転と出向と転籍の違いとは?』のページで詳しく解説しています。)

この「転籍」の場合は、勤務している会社との労働契約をいったん解消し、新たに別の会社で労働契約を結びなおすことになりますので、事実上は「退職」した後に「再就職」するのと同じ効果が生じます。

転籍元の会社と転籍先の会社はまったく別の会社となり、賃金や勤務時間などの労働条件も転籍先の会社との新しい労働契約が適用されることになりから、転籍先の会社との契約内容によっては待遇等が大きく引き下げられる可能性も否定できません。

そのため、労働者が使用者(会社)から「転籍」を打診された場合、その「転籍」に応じなければならないのか、それともその転籍を拒否することができるのかといった点は非常に重要な事項であるといえます。

そこで今回は、会社から「転籍」を命じられた場合、それを拒否することはできるのか、また「転籍」を打診された場合に具体的にどのように対処すればよいのか、とった点について考えてみることにいたしましょう。

※なお、人事命令のうち転勤や配置転換などの「配転」や「出向」を命じられた場合の対処法についてはこちらのページを参考にしてください。

▶ 人事異動や配転命令を拒否することはできるのか?

▶ 出向命令を拒否することはできるのか?

スポンサーリンク

「転籍」には労働者の同意が必要

使用者(会社)が労働者に「転籍」をさせる場合には、必ずその対象となる労働者の同意を得なければならないと考えられています。

(※過去の裁判例でも、人事異動のうち「転籍(移籍出向)」の場合には必ず労働者の個別の同意を得なければならないと判示されています(日東タイヤ事件(昭和48年最高裁第二小法廷判決)|厚生労働省)。)

なぜなら、前述したように「転籍」はそれまで勤めていた会社をいったん「退職」して新たに別の会社に「再就職」する手続きとなるからです。

労働者が使用者(会社)との間で労働契約を結ぶ場合には、労働者はその使用者(会社)の下で就労することを希望し、会社もその労働者を自分の会社で働かせることを希望していると考えるのが通常です。

常識的に考えれば、当初就職した会社との間で結んだ労働契約では「転籍」によって労働者が全く別の会社に移籍されることが予定されているとはいえませんから、使用者(会社)が労働者に対して一方的に「転籍」を命じることはできず、必ず労働者の同意が必要になるということになるのです。

※なお、仮に転籍に同意する場合であっても転籍は退職と再就職を伴う労働契約の再契約という性質を持ちますので、むやみに同意するのではなく転籍先の会社との契約条項について十分に吟味する必要があります。

この点の詳細はこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。

▶ 転籍を承諾する場合に注意すべきこと

就業規則や入社時の労働契約書に「転籍を命じることができる」と定められていても労働者の同意が必要となる

人事異動のうち「配転」や「出向」については、就業規則や労働契約書(雇用契約書)に「配転」や「出向」を命じることができる根拠が明確に定められている限りその「配転命令権」や「出向命令権」が労働契約の内容として合意されているものと解釈されますから、使用者(会社)は労働者の個別の同意を得ることなく「配転」や「出向」を命じることが可能です。

(※ただし「出向」の場合には就業規則などに「出向先での労働者の地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格週休等の査定、その他の処遇など」と出向先での労働条件等が具体的に定められている必要があります。)

人事異動や配転命令を拒否することはできるのか?

▶ 出向命令を拒否することはできるのか?

しかし「転籍」の場合は、仮に労働契約書(雇用契約書)や就業規則に「配転(転勤)を命ずることができる」といった規定や「転籍先での労働者の地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格週休等の査定、その他の処遇など」などといった転籍先での労働条件等に関する基本的な事項が明確に定められている場合であっても、使用者(会社)は必ず労働者の同意をえることが必要で、労働者の同意のない限り使用者(会社)は「転籍」を命じることができません。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連トピックス