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「セクハラだ!」とやたら騒ぎ立てる女性に問題はないのか?

このサイトでも『セクハラに遭った場合の対処法』などのページで解説していますが、セクハラの違法性が認知されてからかなりの年月が経ちますので、セクハラの被害に遭った場合の対処方法はある程度理解が進んできたのではないかと思われます。

しかし、セクハラへの対処法が広く認知されるようになった反面、その対処法などを悪用してセクハラとまでいえない行為にまで「セクハラだ!」と主張して相手を陥れようと考える不当な輩も少なからず増えてきたように思えます。

100人程度の従業員がいる会社であれば、どの職場にも少し体が触れただけで「セクハラは止めてください!」と声を荒げたり、相手を不快にさせるような性的な言動をしたわけでもないのに「セクハラをされました」と上司に報告するような労働者が一人はいるのではないでしょうか。

一番タチが悪いのは、セクハラの事実が一切ないにもかかわらず自分の気に入らない社員を退職させる目的でセクハラの被害をでっち上げ、懲戒処分を求めるケースです。

セクハラなどの性的な問題に関してはどうしても男性の方が立場が悪くなる傾向があるため、いったんセクハラの加害者という烙印を押されてしまうと会社側も女性労働者の主張ばかりを鵜呑みにして男性側の反論に耳を貸さず、その結果事実無根なセクハラ冤罪で処分させられてしまう事例も多いのではないかと思われます。

では、このように社会的に弱い立場にあることを不当に利用してセクハラをでっち上げる女性労働者に法律的な問題は発生しないのでしょうか、また、そのような悪質な女性社員からセクハラの汚名をかぶせられた場合には具体的にどのような対処をとればよいのでしょうか?

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「性的な言動」→「セクハラ」ではない

これってセクハラ?(セクハラの判断基準とは)』のページでも詳しく解説していますが、男女雇用機会均等法の第11条1項でいう「セクハラ」と判断されるためには、「性的な言動」があっただけでなく、その「性的な言動」を受けた労働者が「労働条件につき不利益を受け」たり「就業環境が害され」た、というような事実があることが必要です。

なぜなら、男女雇用機会均等法の第11条1項は職場で「セクハラ」が発生した場合の事業主の対処義務を定めた規定ですが、その対処義務が発生するには「性的な言動」があったことに加えてその「性的な言動」を受けた労働者が「労働条件につき不利益を受け」たり「就業環境が害され」たことが要件とされているからです(男女雇用機会均等法第11条1項)。

【男女雇用機会均等法第11条1項】
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

したがって、仮に職場で「性的な言動」を受けた労働者がいたとしても、その労働者がその受けた「性的な言動」によって「労働条件につき不利益を受け」たり「就業環境が害され」たりしたような事実がなかった場合には、その「性的な言動」は男女雇用機会均等が想定した「セクハラ」には該当しないのであって、そもそも「セクハラ」として会社に対処しなければならない義務は発生しないことになります。

職場で「性的な言動」があったとしても、その「性的な言動」を受けた労働者が「労働条件につき不利益を受け」た事実もなく、「就業環境が害され」た事実もないのであれば、その「性的な言動」を受けた労働者は特段の不利益を受けていないと考えることが出来ますから、当然の帰結と言えるでしょう。

それにもかかわらず、そのような具体的な不利益を発生させない「性的な言動」を取り上げて「セクハラだ!」と騒ぎ立てる労働者がいたとすれば、その労働者は単にその「性的な言動」を行った労働者に対して何らかの不利益を及ぼすことを意図して(たとえばその「性的な言動」を行った労働者に懲戒処分を与えるなど)ことさらに「セクハラだ!」と騒ぎ立てているに過ぎないでしょう。

このように、相手になんらの不利益をも及ぼさない「性的な言動」を取り上げてことさらに「セクハラだ!」と騒ぎ立てる労働者は、単に何らかの悪意を持ってありもしないセクハラを「でっちあげ」ているにすぎないのです。

セクハラの「でっちあげ」は明らかな不法行為

前述したように、世の中にはセクハラの被害に遭ったわけでもないのに「セクハラに遭った」と嘘の被害を会社に報告し、その加害者にさせられた労働者(多くの場合は男性)を退職等に追いやる不当な輩(多くの場合は女性)が少なからずいるようです。

このような行為は当然、その加害者とされた労働者の人格権を侵害し、就労環境を害する結果につながりますから、そのようなセクハラをでっち上げた労働者(多くの場合は女性労働者)はその加害者とされた労働者(多くの場合は男性労働者)に対する不法行為責任(民法709条)を負わなければなりません。

したがって、そのセクハラをでっち上げられた労働者(多くの場合は男性労働者)は、そのセクハラをでっち上げた労働者(多くの場合は女性労働者)に対して慰謝料等の損害賠償請求を行うことが可能となりますし、その請求を受けた労働者(多くの場合は女性労働者)はその損害賠償義務を負わなければならないということになります。

会社は中立的な立場で調査し、最終的には中立的な第三者機関に解決を委ねなければならない

前述したように、「セクハラのでっち上げ」についてはその噓の申告をした労働者(多くの場合は女性労働者)が不法行為責任を負うことになりますが、そのような場合には会社も一定の責任が生じることになります。

なぜなら、会社(使用者)は労働者からセクハラの相談があった場合にはそれに適切に対処することが法律で義務付けられていますので(男女雇用機会均等法第11条1項)、「セクハラのでっち上げ」が申告された場合にも、それに適切に対処することが義務付けられていることになるからです。

【男女雇用機会均等法第11条1項】
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない

もちろん、従業員からセクハラの相談を受けた会社がそのセクハラ被害を「でっち上げ」とすぐに見破れるわけではないでしょう。

しかし、会社はこのような場合中立的な立場でそのセクハラの被害者と加害者の当事者双方から事実関係の確認をすることが求められますから、被害者の申告だけを鵜呑みにして加害者とされた労働者に一方的に処分することは認められません。

また、厚生労働省の指針(平成18年厚生労働省告示第615号3‐(3))でも、セクハラの当事者の主張が食い違い、当事者以外の第三者から聴取を行っても事実関係の確認が困難な場合には、労働局の調停を利用するなど第三者機関に紛争処理を委ねることが求められていますから、セクハラをでっち上げられた加害者とされる労働者(多くの場合は男性労働者)がその事実を否定している場合には、仮にその他の全ての従業員が「セクハラの事実はあった」と申告している場合であってもそれを鵜呑みにして加害者とされた労働者を一方的に処分することは認められず、必ず労働局に調停の申立を行うなど中立的な第三者機関に解決を委ねなければならないことになっています。

このように、セクハラの申告があった場合には、会社はその解決について中立的な立場で調査する義務を負い、事実関係が判然としない場合には労働局に調停を申し立てるなどして中立的な第三者機関に解決を委ねなければならない労働契約(雇用契約)上の義務を負っているということにないます。

したがって、仮に「セクハラのでっち上げ」によって加害者に仕立て上げられた労働者(多くの場合男性労働者)がその事実を否定している場合には、会社は最終的に労働局奈と中立的な第三者機関に解決を委ねる必要がありますから、それをせずに一方的に処分を行ったような場合には、その会社はその加害者とされた労働者に対して労働契約(雇用契約)上の債務不履行責任等が発生し慰謝料等の損害賠償請求の対象にもなるということになります。

セクハラをでっち上げられた場合には具体的にどう対処すればよいか

以上のように、セクハラをでっち上げられて加害者に仕立て上げられてしまった場合には、そのでっち上げた労働者(多くの場合は女性労働者)に不法行為に基づく慰謝料等の損害賠償請求を求めることもできますし、会社が適切に対処しない場合には会社に対して労働契約上の債務不履行等に基づく損害賠償等の請求も可能となります。

しかし、このような損害賠償請求はあくまでも最終的な手段であって、セクハラをでっち上げられて不当な処分を受けた場合の事後的な救済手段に過ぎませんから、セクハラをでっち上げられた場合に具体的にどのように対処すればよいか、という点が問題となります。

この点については『身に覚えのないセクハラで処分された場合の対処法』のページでも詳細に解説していますのでそちらを確認してもらいたいと思いますが、端的に言えばそのようにセクハラをでっち上げられた場合であっても、冷静に対処するしかないと思われます。

前述したように、会社はセクハラの申告があった場合には一方の意見だけを鵜呑みにして処分することは認められませんから、真実にセクハラをしていないのであれば「やってない」と堂々とかつ冷静に自分の潔白を主張していくほかありません。

また、前述したように当事者の意見が食い違い他の社員の意見を聴いても事実関係の確認ができない場合には、会社は労働局に調停を申立てるなど中立的な第三者機関にその解決を委ねなければなりませんので、自分が真実にセクハラをしていない限り「セクハラをした」という証拠はこの世に存在しえないことになりますから、最終的には必ず労働局など中立的な第三者機関に紛争解決の申し立てが行われ、身の潔白が明らかにされるはずです。

仮に会社が第三者機関に解決を委ねることなく、セクハラをでっち上げた女性労働者の意見だけを鵜呑みにして処分するような場合には「労働局に調停の申し立てをしろ」と要求しても良いですし、自分から申立を行っても良いでしょう。

もちろん、セクハラをでっち上げられた時点ですぐに弁護士に相談し、法律に基づいて適切に対処してもらうのが最善と言えますが、上記のようなセクハラにおける会社の対処義務などについて正確な知識があれば、ある程度のセクハラのでっち上げには対応できるのではないかと思います。

なお、前述した厚生労働省の指針(平成18年厚生労働省告示第615号)にはセクハラの相談があった場合に会社がとらなければならない措置が詳細に記載されていますから、セクハラをでっち上げられた場合に会社に適切な対応を取ってもらう場合にはこの指針を提示して交渉すると何かと有益です。

ですから、「セクハラをでっち上げられたら不安だ」と感じている人は、休み時間などにでもこの厚生労働省の指針を一読しておくことをお勧めします。