悪質なブラック企業では、雇用した従業員に対して「〇年〇月まで辞めません」とか「定年退職まで辞めません」などと言った誓約書に署名させる事例があるようです。
このような誓約書を書かせられている場合、その誓約に従って誓約書に記載されて期日まで会社を辞めることはできないのでしょうか?
憲法(日本国憲法第18条)で奴隷的拘束の禁止が明確に謳われている以上、そのような退職しない旨の誓約書が違法とならないのかが問題となります。
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
「辞めない」旨の誓約書は100%無効
結論から言うと、「〇年〇月まで辞めません」とか「定年退職まで辞めません」などという誓約書は、100%無効であるといえます。
労働基準法では、第5条で強制労働の禁止を明確に規定していますので、仮にこのような誓約書があったとしても、その誓約に従って働くことを強制することは明らかな労働基準法違反となりますからその誓約は100%無効であるということが出来ます(労働基準法第5条)。
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
なので、このような誓約書を書かせられている場合であってもそのような誓約は違法であり無効ですから、そのような誓約書は無視して退職することが出来ます。
勿論、そのように会社を辞めないということを誓約すること自体が違法ということになりますので、自ら進んで誓約書を作成し自らの自由な意思で会社に誓約書を提出していたとしてもその誓約は100%無効となります。
「辞めない」旨の誓約書を書かせられた場合の対処法
前述したように「辞めません」という誓約書を会社に差し入れていたとしても、そのような誓約は違法となり無効と判断されますから、たとえ会社から「辞めないと誓約書を書いたんだから辞めさせない」と言われたとしてもそのような誓約は無視して退職することが出来ます。
なお、会社が辞めさせてくれない場合の対処法はこちらのページで詳細に解説していますので参考にしてください。
労働基準監督署に違法行為の是正申告を行う場合
勤務先の会社(個人事業主も含む)が労働基準法に違反している行為を行っている場合には、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことが可能です。
この点、前述したように会社が労働者に「辞めない」という誓約書を書かせたり、「辞めない」という誓約書を根拠に退職を認めないような場合には、その会社は労働基準法の第5条に違反することになりますから、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことが可能となります。
労働基準法に違法行為の是正申告を行えば労働基準監督署から臨検や調査がなされそれによって会社側が態度を改めて退職の妨害を止めることも考えられます。
そのため、もし会社から「会社を辞めないという誓約書にサインしろ」と誓約書への署名を強要されていたり「辞めないという誓約書にサインしたんだから退職させない」などと退職を妨害されている場合には、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うというのもトラブル解決方法の一つとして有効ではないかと思われます。
なお、この場合に労働基準監督署に提出する違法行為の是正申告書の記載例については『「辞めません」という誓約書を書かせられた場合の労基署の申告書』のページに掲載していますので参考にしてください。