未払い賃金の請求や不当解雇の問題など、労働トラブルの問題が持ち上がった場合に相談する法律専門家は、弁護士・司法書士・社会保険労務士の3種類があります。
しかし、一般の人にとっては弁護士・司法書士・社会保険労務士のいったいどの専門家が自分の労働トラブルの解決に最適なのかは判断が付きにくいでしょう。
弁護士も司法書士も社会保険労務士も、法律の専門家として業務を行っているので基本的にはどの職種の法律家に相談してもよさそうに思えますが、実際にトラブルに見舞われた場合に、いったいどの専門家に相談すればよいか迷うこともあると思います。
そこで、ここでは労働トラブル(労働問題)が生じた場合に、いったいどの法律専門家に相談するのが一番よいのか、について考えてみることにいたしましょう。
弁護士に相談する場合
未払い賃金や不当解雇の問題などが生じた場合に、裁判を起こして未払い分の賃金を請求したり不当解雇の是正(社員としての地位確認や、解雇が無効として解雇されて以降の賃金の請求をするような場合)を求めることが、あらかじめ自分の中で決まっているような場合には、弁護士に依頼する(相談する)方がよいかもしれません。
なぜなら、弁護士は未払い賃金の請求や不当解雇の撤回など、雇い主側(会社側)との示談交渉(裁判を通してではなく直接弁護士が雇い主と交渉すること)のみならず、代理人として裁判を行うことができるため、最初から弁護士に相談しておけば全ての手続きをお任せすることが可能となるからです。
弁護士は司法書士や社会保険労務士と異なり、あらゆる裁判について代理人として裁判を行うことが可能ですから、当初想定したていたものよりも、自分の労働トラブルの法律的な主張がいかに難解なものになった場合でも最後まで全てをお任せしてトラブル解決に尽力してもらえます。
そのため、自分に降りかかった労働トラブルを法律の専門家に相談したいというような場合には、まず弁護士に相談するというスタンスが安心かつ安全な手段だと思われます(これは当サイト管理人の個人的な意見です)。
もっとも、一概に弁護士とは言っても、全ての弁護士が労働問題(労働関係の法律)に精通しているわけではありませんので、依頼する場合には労働トラブルに実績のある弁護士を探して相談するほうが安全です。
身近に労働問題に詳しい弁護士がいる場合は問題がないと思いますが、そうでない場合には最寄りの弁護士会に電話をして「労働問題に詳しい弁護士を紹介してもらいたいのですが」と聞いてみるのも一つの方法として有効でしょう。
司法書士に相談する場合
司法書士(法務大臣の認定を受けた司法書士に限る)は140万円までの請求にかかる裁判(簡易裁判所で行われる裁判)については、弁護士と同様に代理人となって裁判を行うことが可能です。
そのため、仮に未払いになっている賃金や不当解雇によって生じた損害金(解雇がなかったとした場合に受け取るべきであった給料)の金額が140万円を超えないような案件であれば、弁護士ではなく司法書士に相談しても問題ないと思います。
もっとも、司法書士は簡易裁判所(140万円を超えない範囲の裁判を専門に行う裁判所)でしか代理人となることができないため、司法書士に依頼して裁判を行った後、控訴して(または相手方に控訴されて)地方裁判所で再度裁判がおこなわれるような場合には、司法書士は代理人となることができません。
そのため、そのような場合は別の弁護士を探して改めて依頼するか、引き続きその司法書士に裁判所に提出する書類の作成を依頼して(地方裁判所では司法書士は代理人として裁判を行うことはできないが裁判所に提出する書類を作成することはできます)司法書士のサポートを受けながら裁判所には自分が出廷して裁判を継続して行うか、どちらかを選択する必要があるでしょう。
社会保険労務士に相談する場合
社会保険労務士のうち、厚生労働大臣の認定を受けた「特定社会保険労務士」は、裁判外紛争解決手続(ADR)の代理人となることができます。
「裁判外紛争手続(ADR)」とは、裁判所以外で行われる「使用者と労働者の紛争を解決する話し合い」のことで、特定社会保険労務士は相談者の代理人となってこの「裁判外紛争解決手続」に出席し会社側(雇い主側)と交渉をすることが可能です。
弁護士や司法書士と違い、裁判所で行われる「裁判」の代理人にはなれませんが、未払い賃金などの請求を「裁判以外の話し合いで解決したい」という方であれば、社会保険労務士に相談して解決を目指すのも一つの方法でしょう。
また、社会保険労務士は一般的には弁護士や司法書士などよりも労働関係の法律に精通していますので、弁護士の中でも訴訟になった場合には知り合いの社会保険労務士とタッグを組んで裁判を遂行するという先生も多くみられます。
そのため、社会保険労務士の中でも弁護士と連携している先生はいると思いますので、そういう社会保険労務士にまず相談し、裁判が必要な場合にはその社会保険労務士から弁護士を紹介してもらうなどといった方法もあるとおもいます。