このページでは、試用期間(研修期間)が経過した後に会社から賃金を引き下げられた場合にその賃金の引下げの撤回を求めて労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
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試用期間(研修期間)満了後に一方的に賃金を引き下げられた場合にその撤回を求めて労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都大田区〇〇七丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 萬両志多代
電話番号 080-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都中野区〇〇八丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社ペイカット・フォースィブリー
代表者 引沙毛瑠男
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
賃金の引下げを撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、バレンタインデーにもらえるチョコレイトの数を瞬時に予測するスマートフォン向けアプリ「ちょこっとチェッカー」を開発及び配信する従業員214名の株式会社である。
申立人は、平成〇年〇月○日、被申立人が募集したアプリケーションの動作確認作業アルバイトに応募し、翌月の〇日から契約期間1年、時給1000円、試用期間2週間の労働条件で就業を開始したが、試用期間の2週間が経過した同月○日に上司の〇〇から呼び出され、「試用期間中の評価では時給800円が相当」という理由で一方的に賃金を800円に引き下げられた。
しかしながら、過去の判例(三菱樹脂事件:最高裁昭和48年12月12日)によれば試用期間の法的性質は「解雇権留保付きの雇用契約」と解されているから、当初契約した時給1000円という労働条件による雇用契約が有効に締結されているといえ、試用期間経過後に賃金を引下げることは労働条件の不利益変更にあたるといえる。
この点、使用者が労働条件を変更する場合には個別の労働者の同意が必要であると考えられるが(労働契約法第3条1項または同法第8条)、申立人が当該賃金の引下げに同意した事実は存在しない。
したがって、被申立人の行った賃金の引下げは労働契約法第3条1項または同法第8条に違反し無効であるといえる。
3 紛争の経過
申立人は平成〇年〇月ごろにインターネットの求人サイトで被申立人が募集をおこなっていたアプリケーションの動作確認作業のアルバイトに応募し、翌月の〇日から「契約期間1年、時給1000円、試用期間2週間」などの労働条件を提示されて就業を開始したが、試用期間の2週間が経過した同月○日に上司の〇〇から呼び出され、「試用期間中の君の働きぶりでは本採用するにしても時給は800円しか出せないよ」と告知され一方的に賃金を800円に引き下げられた。
これに対して申立人は当初1000円と説明を受けていたことからその時給の引下げには応じられない旨抗議したが「嫌なら本採用はできないと思うよ」と告知されたため渋々受け入れざるを得なかった。
申立人はその後数週間時給800円で勤務し続けたがどうしても納得できなかったことから○月○日に「賃金引下げの撤回を求める申入書」を作成して被申立人に送付したが現在に至るまで賃金の引下げは撤回されていない。
4 添付資料
・時給1,000円で募集していた求人サイトの画面をプリントアウトしたものの写し 1通
・○月分の給与明細書の写し 1通
・賃金引下げの撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を使用するようにしてください。
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。
上記の記載例では、採用される際は「時給1000円」と説明していたのに時給を800円に強制的に下げられたこと、過去の判例では「試用期間」が「解雇権留保付きの雇用契約」と判断されており(三菱樹脂事件:最高裁昭和48年12月12日)そうであれば試用期間が経過した時点で「時給1000円」の雇用契約から留保された「解雇権」が消滅するだけで「時給1000円」の雇用契約が継続しているはずだということ、「時給1000円」の雇用契約が継続されているのであれば時給を800円に引き下げる行為は「労働条件の一方的な引き下げ」にあたること、「労働条件の変更」には労働契約法第3条1項または同法第8条で個別の労働者の同意が必要であることを説明し、その同意をした事実はないから時給を一方的に800円に引き下げた会社の行為は違法で無効であるという趣旨の文章にしています。
なお、試用期間経過後に賃金を引下げられるトラブルの具体的な法律的考え方やその場合の具体的な対処法などについてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。
上記の事例では、試用期間が満了した後に上司に呼び出されて一方的に賃金の引下げを告げられ、それに抗議しても受け入れてもらえなかったこと、またその後数週間働いたものの納得できなかったため再度抗議するべく「賃金引下の撤回を求める申入書」を作成し文書(書面)の形で賃金の引下げの撤回を求めたものの、現在に至るまで一切撤回がなされていないことなどを記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の記載例では、「時給1000円の雇用契約が成立していたこと」を明らかにするために「時給1,000円で募集していた求人サイトの画面をプリントアウトしたもの」の写しを、「時給が800円しか支払われていないこと」を明らかにするために「○月分の給与明細書」の写しを、また「文書で賃金引下の撤回を求めたこと」を明らかにするために「賃金引下の撤回を求める申入書」の写しを添付することにしています。
もっとも「時給1,000円で募集していた求人サイトの画面をプリントアウトしたもの」については、試用期間が始まる前に雇用契約書(労働契約書)が作成されている場合にはその契約書の写しを添付すれば足りるでしょう。
なお、「賃金引下の撤回を求める申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。
(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)
様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。
上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。