このページでは、使用者から自己負担で免許や資格を取得するよう命令された場合に、その撤回を求めるため労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
適宜、ワードなどの文書作成ソフトを利用して自由に複製してください。ただし、著作権を放棄するわけではありませんので無断転載や配布などは禁止します。
なお、この記載例(ひな形・書式)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。
この記載例(ひな形・書式)を使用して生じる一切の損害につき当サイトの管理人は責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。
自己負担で免許や資格を取得するよう命じられた場合にその撤回を求めて労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例
(1)自己負担での免許資格取得の命令を撤回するよう求める場合
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 大阪市淀川区〇〇一丁目〇番〇号
氏名 南出屋稔侍
電話番号 080-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 大阪市中央区〇〇町〇番〇号
名称 株式会社ジバラデ配送
代表者 地原出斗礼弥
電話番号 06-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
自己負担による免許取得の職務命令を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、輸送トラックによる宅配事業を営む従業員777名の株式会社である。
申立人は平成〇年〇月にトラック運転主(配達員)として入社し、2トントラックによる配達員として勤務している。
申立人は平成〇年〇月〇日、上司の〇〇から「来年の4月から大型トラックに乗ってもらうことになったからすぐに大型の免許を取得するように」と指示されたが、その費用については全額自己負担となり被申立人は一切負担しないとの説明を受けた。
しかしながら、申立人が被申立人に入社するにあたっては単に「トラックドライバー」や「配送員」として入社したのであって「大型トラック」に乗車することは当初の労働契約で予定されておらず、また大型免許の取得についてもその取得費用を申立人で負担するような合意はなされていないから、被申立人が申立人に対して自己の負担で大型免許を命じる労働契約上の権利はないはずである。
よってこのような被申立人の行為は、労働契約を申立人の合意を得ずに一方的に変更するものといえるから、労働契約は当事者の合意に基づいて変更すべきと規定した労働契約法第3条1項に、また労働契約に基づく教育訓練を命ずる権利を濫用するものとして労働契約法第3条5項に違反する。
3 紛争の経過
申立人は平成○年〇月〇日に上司である〇〇に呼び出され「来年の4月から大型トラックに乗ってもらうことになったからすぐに大型の免許を取得するように」と指示されたが、その費用について尋ねると「費用については自己負担になる」と回答するのみで一切その費用を負担しようとしなかった。
申立人は平成○年〇月下旬、自動車教習所に電話で費用の総額を確認したところ23万円以上必要になることが判明したため再度上司に相談したが「大型を取れば大型手当も付くし転職する際も有利だからお前にもメリットあるだろ」と回答するだけで一切取り合ってもらえなかったため○月○日付の「自費での免許取得に関する命令を撤回するよう求める申入書」を作成し書面の形で被申立人にその撤回を申し入れたが、現在に至るまでその命令は撤回されていない。
4 添付資料
・労働契約書の写し 1通
・自費での免許取得に関する命令を撤回するよう求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする場合はA4サイズの用紙を使用してください。
(2)免許・資格の取得費用を会社で負担するよう求める場合
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 大阪市淀川区〇〇一丁目〇番〇号
氏名 南出屋稔子
電話番号 080-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 大阪市中央区〇〇町〇番〇号
名称 株式会社ジバラデシステム
代表者 地原出斗礼弥
電話番号 06-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
資格取得の費用を事業主が負担するよう、事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、宅配事業者向けの荷物配送状況確認システムを開発する従業員777名の株式会社である。
申立人は平成〇年〇月に一般事務員として入社し、総務部における事務員として勤務している。
申立人は平成〇年〇月〇日、上司の〇〇から「来年の4月から経理部に移動することになったからそれまでに簿記の3級を取得するように」と指示されたが、その費用については全額自己負担となり被申立人は一切負担しないとの説明を受けた。
しかしながら、申立人が被申立人に入社するにあたっては簿記の資格は必須の条件ではなかったし、仮に業務で簿記の知識が必要になったとしても、その資格取得費用を申立人で負担するような合意はなされていないから、被申立人が申立人に対して簿記の資格を自己の費用負担で取得するよう命じる労働契約上の権利はないはずである。
よってこのような被申立人の行為は、労働契約を申立人の合意を得ずに一方的に変更するものといえるから、労働契約は当事者の合意に基づいて変更すべきと規定した労働契約法第3条1項に、また労働契約に基づく教育訓練を命ずる権利を濫用するものとして労働契約法第3条5項に違反する。
3 紛争の経過
申立人は平成○年〇月〇日に上司である〇〇に呼び出され「来年の4月から経理部に移動することになったからそれまでに簿記の3級を取得するように」と指示されたが、その費用について尋ねると「費用については自己負担になる」と回答するのみで一切その費用を負担しようとしなかった。
申立人は平成○年〇月下旬、簿記の専門学校に電話で費用の総額を確認したところ2万円程度必要になることが判明したため再度上司に相談したが「簿記を取れば資格手当も付くし転職する際も有利だからお前にもメリットあるだろ」と回答するだけで一切取り合ってもらえなかったため○月○日付の「資格の取得費用の負担を求める申入書」を作成し書面の形で被申立人に申し入れたが、現在に至るまでその費用を被申立人が負担するとの回答は得られていない。
4 添付資料
・労働契約書の写し 1通
・資格の取得費用の負担を求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする場合はA4サイズの用紙を使用してください。
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を起こしていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。
上記の事例では、会社が労働契約で合意していないにもかかわらず一方的に免許や資格を自己負担で取得するよう命令していることが問題となっていますので、労働契約の変更には労働者の合意が必要と規定した労働契約法第3条1項と、労働契約の範囲を逸脱した権利の濫用として権利の濫用を禁止した労働契約法第3条5項に違反するというような文章にしています。
なお、このように会社が免許や資格を自己負担で取得するよう命じることの法律的な問題点やその場合の対処法などについてはこちらのページで解説しています。
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間に発生した紛争がどのようなきっかけで発生し、会社とどのような交渉を行ってきたのか、というその経緯を記載します。
上記の事例では、上司から免許や資格を自己負担で取得するよう指示された後、口頭や書面でそれを撤回するよう求めたものの拒否されたことを簡単に記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の事例では、「自己負担で免許や資格を取得しなければならないことが労働契約として合意されていないこと」と明らかとするために「労働契約書」の写しを、また「会社に撤回や費用の負担を申し入れても拒否されたこと」を明らかとするために「自費での免許取得に関する命令を撤回するよう求める申入書」や「資格の取得費用の負担を求める申入書」の写しを添付することにしています。
なお、「自費での免許取得に関する命令を撤回するよう求める申入書」や「資格の取得費用の負担を求める申入書」の記載例はこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。
(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)
様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。
上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。