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会社の都合による休業日、その日の賃金を請求できる?

クローズの看板

機械の故障や原材料の調達不足、行政指導による営業停止など、その理由は様々ですが、使用者(会社)に何らかの事情が発生し休業を余儀なくされることがあります。

このような休業が発生した場合、当然そこで就労する労働者も働くことができなくなりますから、その会社の休業期間中は休みになることになりますが、会社によってはその休業期間中の賃金(休業手当)を支払わないケースがあるようです。

しかし、このような事情を理由とする休業は、労働者に何の落ち度もない休業といえますので、そのような理由で休業が発生し働く機会を奪われてしまった労働者に対して賃金が支払われないのは不合理に感じます。

また、そもそも労働者が会社を休んだ場合には査定に響いたりして不利益を受けるのに、会社が休業する場合には給料を払わないということが認められるとなるのでは、会社(使用者)と労働者の公平性が保たれず不平等な結果となってしまうでしょう。

そこで、今回は使用者(会社)の都合で休業になった場合に休業期間中の賃金を請求することができるのか、という問題について考えてみることにいたしましょう。

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「会社の都合による休業」は「使用者に帰責事由のある休業」と「使用者に帰責事由のない休業」の2種類がある

前述したように、会社側の都合で休業が発生した場合にその休業期間中の賃金の請求ができるか、という点が問題となりますが、「会社の都合による休業」とはいってもその休業の「帰責事由」が会社側にある場合(使用者に帰責事由のある休業)と会社側にない場合(使用者に帰責事由のない休業)の2とおりの休業が存在します。

たとえば、製造業の会社で経営環境が悪化したため工場を一時閉鎖する場合の休業などは、その原因がもっぱら会社(使用者)側に存在していることになりますので「使用者に帰責事由のある休業(使用者の責めに帰すべき休業)」といえます。

また、たとえば小売業を営む会社が会社の棚卸をするために休業を行うような場合にも、その休業の原因はもっぱら会社(使用者)側にあることになりますので「使用者の責めに帰すべき休業」ということになるでしょう。

一方、たとえば製造業の会社で原材料等の不足が発生して生産調整のため休業する場合や、交通機関の障害等により資材等の搬入に支障が発生して生産ラインを停止させる必要がある場合、機械の検査が必要な場合などは、その休業の原因の帰責性が会社(使用者)にあるわけではありませんので「使用者に帰責事由のない休業」ということになります。

また、会社が何らかの法令違反を犯したため監督官庁から指導を受けて一定期間操業を停止する場合なども、その遠因は会社(使用者)側にあるといえますが、休業を命じているのは監督官庁であって使用者そのものが休業を望んでいるわけではありませんから「使用者に帰責事由のない休業」ということになるものと考えられます。

このように、「会社側の都合による休業」といってもその休業には「使用者の責めに帰すべき休業」と「使用者に帰責事由のない休業」の2種類があるといえますので、「会社の都合による休業」の場合に労働者が賃金(休業手当)の支払いを求めることができるか、といった問題を考える場合にも、この2種類の休業それぞれの場合で別個に考える必要があります。

「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合、「休業期間中の賃金の全額」を請求することができる

前述したように「会社側の都合による休業」には「使用者の責めに帰すべき休業」と「使用者に帰責事由のない休業」の2種類がありますが、「使用者の責めに帰すべき休業」の場合には労働者はその休業期間中の賃金(平均賃金)の全額の支払いを請求することが可能です。

なぜなら、民法では契約の相手方の責めに帰すべき事由によって債務の履行ができない場であってもその反対給付を受ける権利を失わないと規定されているからです(民法第536条第2項前段)。

【民法第536条第2項】
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。(以下省略)

この点、労働者が使用者(会社)の下で働くという「雇用契約」では、労働者(従業員)側においては使用者(会社)に対して「労働力を提供する」という「債務」を履行することにより「賃金の支払い」という「反対給付」を受けるという契約になり、一方で使用者(会社)側においては労働者(従業員)に「仕事を提供する」という「債務」を履行し「労働力の提供」を受ける「反対給付」として「賃金の支払い」をするという契約になります。

そのため、これを民法第536条2項の条文を労働契約の場面に当てはめると、「債権者」が「会社」、「債務の履行」が「労働力の提供」、「債務者」が「労働者」、「反対給付」が「賃金の支払い」ということになりますから、「会社の責めに帰すべき事由によって労働力の提供をすることができなくなったときは、労働者は、賃金の支払いを受ける権利を失わない。」ということなります。

したがって、使用者の「責めに帰すべき理由」によって発生した休業の場合は、労働者は会社(使用者)に対して賃金の請求権を失わないことになり、その休業期間中の賃金の「全額」を請求できるということになります。

なお、これは正社員に限られたものではなく、アルバイトやパートであっても同様ですので、たとえアルバイトであっても会社の「責めに帰すべき事由」で休業となった場合には、会社に対してその休業期間中のバイト代の「全額」を請求することが可能となります。

「使用者に帰責事由のない休業」の場合、「最低でも休業期間中の6割の休業手当」を請求することができる

前述したように「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合には、使用者(会社)に対して休業期間中の賃金の全額(平均賃金の全額)を請求することが可能です。

では、休業が「使用者に帰責事由のない休業」である場合には一切休業期間中の賃金の支払いを請求できないかというとそういうわけでもありません。

「使用者に帰責事由のない休業」の場合であっても、労働者は最低でもその休業期間中の平均賃金の60%の賃金の支払いを求めることが可能です。

なぜなら、使用者(会社)には、労働基準法の第26条で休業期間中の平均賃金の100分の60に相当する金額の「休業手当」を支払うことが義務付けられているからです(労働基準法第26条)。

【労働基準法第26条】
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

この点、上記の労働基準法第26条の条文を見てもらうとわかるように、労働基準法第26条では「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては…」と規定されていますので、「使用者に帰責事由のない休業」の場合には労働基準法第26条は適用できないではないか、と思うかもしれませんが、それは間違っています。

なぜなら、前述した民法第536条2項にいう「債権者の責めに帰すべき事由」とこの労働基準法第26条にいう「使用者の責めに帰すべき事由」は、イコールではないからです。

前述した民法第536条2項の規定は「債権者の責めに帰すべき事由」に基づく反対給付を受ける権利を保障する規定にすぎませんから、その成立には「故意や過失」が必要となるため「責めに帰すべき事由」は狭く解釈されることになりますが、この労働基準法第26条の規定は「使用者の責めに帰すべき事由」による休業の場合に「平均賃金の60%」を確保することで労働者の最低限の生活を保障するために規定されたものと解釈されますのでその成立には「故意や過失」は問題になりませんから「責めに帰すべき事由」の範囲も民法第536条2項よりも広く解釈されることになります。

つまり、民法第536条2項の規定で「債権者の責めに帰すべき事由」と判断されなかったような使用者(会社)側に「故意や過失」のないような事情によって休業した場合であっても、労働基準法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」に含まれる場合があるということになります。

具体的には、前述したように「原材料不足」や「交通機関の障害等による資材等の搬入障害」「機械の検査」「監督官庁の指導等による操業の停止」などの場面では、民法第536条2項の「責めに帰すべき事由」は認められない(使用者に帰責事由のない休業)と判断されますが、労働基準法第26条の「責めに帰すべき事由」は認められると判断されることになります。

そのため、前述したように「原材料不足」や「交通機関の障害等による資材等の搬入障害」「機械の検査」「監督官庁の指導等による操業の停止」といった事情によって会社が休業した場合には、会社に対して民法第536条2項の規定に基づいて休業期間中の賃金全額の支払いを求めることはできませんが、そのような場合であっても労働基準法第26条に基づいてその休業期間中の平均賃金の60%にあたる「休業手当」の支払いを求めることはできるということになるのです。

天災事変など純粋な不可抗力が原因となる休業の場合は休業手当の請求もできない

以上で説明したように、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合にはその「休業期間中の賃金(平均賃金)の全額」を、「使用者に帰責事由のない休業」の場合であっても「休業期間中の平均賃金の60%に相当する休業手当」を会社に対して請求することができますが、その休業の原因が「天災事変」などの純粋な不可抗力によるものである場合には、労働者はその休業期間中の賃金や休業手当の支払を求めることはできません。

前述した「原材料不足」や「交通機関の障害等による資材等の搬入障害」「機械の検査」「監督官庁の指導等による操業の停止」などの事情は使用者(会社)側に帰責性はないものの経営上の障害として労働基準法第26条に基づく休業手当の対象となりますが、大地震や水害、戦争などの天災事変など純粋に不可抗力が原因で休業が発生した場合にまで使用者(会社)側に賃金や休業手当の支払を義務付けることは酷になるため、そのような場合には休業手当の請求もできないということになるので注意が必要です。

「会社都合による休業の場合は平均賃金の60%の休業手当しか請求できない」は間違い

以上のように、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合にはその「休業期間中の賃金(平均賃金)の全額」を、「使用者に帰責事由のない休業」の場合であっても「休業期間中の平均賃金の60%に相当する休業手当」を会社に対して請求することができます。

この点、「民法第536条2項の休業期間中の賃金の支払い」と「労働基準法第26条の休業手当の支払い」を混同して、「会社の都合による休業の場合には平均賃金の60%の休業手当だけを支払えばよい」と考えている会社の経営者や役職者がいるようですが、これは明らかな間違いです。

なぜなら、前述した民法第536条2項の規定は「会社都合の休業の場合における労働者の反対給付請求権」の問題に過ぎない一方、労働基準法第26条の規定は「労働者の最低限の生活を保守するための休業補償を定めた規定」であってその性質が全く異なるからです。

つまり、労働基準法の第26条は平均賃金の60%の支払いを義務付けてそれに違反する使用者に罰則(30万円以下の罰金※労働基準法第120条)を規定することで平均賃金の60%の休業手当の支払を確保し最低限度の生活を保障するために設けられた規定と解釈するべきと考えられています。

すなわち、この労働基準法の規定は「使用者の負担において労働者の生活を平均賃金の6割の限度で保障しようとする趣旨」によって設けられた規定であり、「使用者の負担を軽減」するために設けられた規定ではないのです。

そのため、「使用者の責めに帰すべき事由」による休業の場合には、使用者はその休業期間中にかかる賃金の全額を支払わなければならないと考えられています(ノース・ウエスト航空事件・最高裁昭和62年7月17日)。

したがって、もし仮に会社側の都合で休業となった場合に、会社側から平均賃金の60%しか支払われないような場合には、賃金全額との差額分を請求できるということになります。

(※ただし就業規則や労働協約などで「会社都合による休業の場合は休業1日あたり平均賃金の100分の60の賃金を支払う」などと規定されている場合には平均賃金の60%までしか請求できません。)

休業手当が支払われない場合の対処法

以上のように、会社(※個人事業主も含む)の都合による休業の場合には、使用者は労働者に平均賃金の100%の賃金(休業手当)を支払わなければなりませんし(※ただし就業規則等で休業手当が60%を下限として制限されている場合を除く)、たとえ民法536条第2項の「責めに帰すべき事由」といえないような「原材料の不足や入手不能」「交通機関のマヒ」「機械の故障や点検」「監督官庁の臨検や調査」などを原因とするような休業であっても、労働基準法第26条における「責めに帰すべき事由」に含まれると解されますから、天災事変など不可抗力といえるような事由でない限り、使用者は平均賃金の60%の休業手当を労働者に支払わなければなりません。

しかし、法令を遵守していない企業ではこのような法律上の義務に違反して休業日に係る賃金(休業手当)を支払わなかったり、法律上定められた金額以下の休業手当しか支払わないことも多いようです。

そのような場合には、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったり、労働局に紛争解決援助の申立を行う方法や、弁護士などに依頼して示談交渉や裁判などを通じて急病日に係る賃金(休業手当)の支払いを求めていくしかありませんが、その場合の具体的な方法については『会社都合の休業で休業手当が支払われない場合の対処法』のページで解説していますので参考にしてください。

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