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労基署に告発したことを理由に会社から処分された場合の対処法

勤務している会社が労働基準法に違反する行為を行っている場合には労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことができます。

労働基準監督署(労基署)に違法行為の是正申告を行うと、労働基準監督署の監督官は会社に対して臨検を行ったり書類や帳簿などの提出を求めて違法行為の有無を調査するすることができるようになります。

その臨検や調査によって違法行為が認定できるようであれば、労働基準監督署から指導などがなされることになりますから、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことで会社の違法行為が改善されることが期待できます。

しかし、この労働基準監督署に対する違法行為の是正申告を行う際に気になるのが、違法行為の申告を行ったことによって会社から報復措置として解雇や減給などの処分をされてしまうのではないか、という点です。

法律に違法する行為を行っているような会社がまともな会社であるとは思えませんから、監督署に密告したことが知られてしまえば会社からどのような報復措置がなされるか心配になるのも当然です。

そこで今回は、労働基準監督署に会社の違法行為を申告したことを理由に会社から解雇や減給などの不当な報復措置を受けた場合にはどのような対処をとればよいか、といった点について考えてみることにいたしましょう。

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労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことを理由に解雇や減給などの処分をすることは違法

まず知っておいてほしいのが、使用者(会社・雇い主)は、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行った労働者に対して解雇や減給などの不利益な処分を行うこと出来ないという点です。

労働基準法の第104条第2項では、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことを理由として労働者に解雇その他の不利益な取り扱いをすることが明確に禁止されていますから、仮に労働基準監督署に対して会社の労働基準法に違反する行為を申告した報復として会社から解雇や減給などの処分が出された場合には、その会社の処分は明らかな法律違反ということになります。

【労働基準法第104条】
第1項 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
第2項 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない

このように、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことを理由に会社が解雇や減給など労働者に不利益となる処分をすることは法律で明確に禁止されていますから、もし会社から労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことを理由に解雇や減給の処分を受けてしまったとしても、その処分は法律に違反するものとして無効になると考えられます。

他の理由をこじつけて不利益な処分をしてきたら?

前述したように、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことを理由に解雇や減給などの処分を行うことは法律で明確に禁止されていますから、仮に会社からそのような処分がなされたとしても、法律に違反する違法な処分ということで処分の無効を主張し、解雇や減給の処分の撤回を求めることが可能です。

しかし、ずる賢い悪質なブラック企業では、このような違法性を回避するために、労働基準監督署に申告したことの報復として処分をするのではなく、他の理由をこじつけて解雇や減給などの処分を行う場合があります。

あからさまに労基署に申告したことの報復として処分をしてしまうと法律違反となってしまいますから、「この処分は監督署への申告とは関係ありませんよ、あなたのこれまでの勤務態度が悪かったから減給したんですよ」などと、本心では監督署への申告を行ったことの報復として処分をしているにもかかわらず、表向きは他の理由をこじつけて解雇や減給などの処分を行う事例も多く見受けられるのです。

もっとも、このように会社が他の理由をこじつけて解雇や減給の処分を行ってきたとしても、その処分は違法なものとして無効になると考えられます。

なぜなら、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行った直後にそのような解雇や減給の処分が出されたのであれば、たとえ他の理由で処分がなされたとしても監督署への申告の報復として処分がなされたということが推認できるからです。

労働基準監督署に会社の違法行為を申告した直後に解雇や減給の処分がなされれば、たとえその処分が他の理由を根拠としてなされたものであったとしても、その監督署への申告との関連性が推定されますし、そもそもそのような処分が必要となるような労働者の非違行為があったのであれば監督署に申告する以前に処分がなされているはずですから、監督署に申告した直後にそのような処分がなされるのは不自然ですし、仮にその処分が必要となるような労働者の非違行為が過去に存在していたとしても、それまで解雇や減給の処分がなされていないのであれば、その非違行為は治癒されていると考えてしかるべきです。

また、そもそも使用者が労働者を解雇する場合には法律上「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」であると認められない限り無効と判断されますし(労働契約法第16条)、減給の場合といった労働条件の変更もその減給を受ける個別の労働者の同意を得ない限り無効と判断されますから(労働契約法第8条)、仮に会社側が「この処分はあなたが監督署に申告したこととは無関係ですよ」と主張してきたとしても、処分を受ける労働者の側がその処分を受け入れない限り、会社側の行った解雇や減給の処分が有効と判断されることはまずありません。

【労働契約法第16条】
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
【労働契約法第8条】
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

このように、会社が他の理由をこじつけて不利益な処分をしてきたとしても、ほとんどの場合はその処分は無効と判断されますから、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うに際して会社からの報復措置を恐れる必要はないのではないかと思われます。

労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことの報復として解雇や減給などの不利益処分を受けた場合の対処法

前述したように、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことの報復として解雇や減給の処分を受けた場合であっても、その処分は違法となり無効なものと判断されます。

しかし、違法で無効な処分であっても、いったん会社からそのような処分が出されてしまった場合には、それを放置していても問題は解決しませんので、以下の方法によって対処することも考えなければならないでしょう。

① 労働基準監督署に再度違法行為の是正申告を行う

前述したように、会社が労働基準法に違反する行為を行っていることを理由として労働基準監督署に違法行為の是正申告を行った場合に、その報復措置して会社が解雇や減給などの不利益処分を行うことは労働基準法で禁止されていますから、仮に労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことを理由に会社が減給や解雇などの処分を行った場合には、会社は新たな労働基準法に違反する行為を行ったということになります。

そのため、会社が労働基準監督署に違法行為の是正申告を行ったことを理由として減給や解雇などの不利益処分を行った場合には、その報復として不利益処分を行ったこと自体を理由として(別件の事件として)労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことが可能となります。

この場合、違法行為の是正申告を行うことによって監督署が臨検や調査を行うことになれば会社側も違法な不利益処分を撤回することも考えられますので、会社の新たな労働基準法違反行為として違法行為の是正申告を行うことも問題の解決方法として有効と考えられます。

なお、この場合労働基準監督署に提出する違法行為の是正申告書の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 労基署に申告し会社から処分された場合の労基署の申告書の記載例

② 労働局に紛争解決援助の申立を行う

全国に設置された労働局では、労働者と事業主の間に何らかの紛争が生じた場合には当事者の一方からの申立に基づいて、紛争解決のための助言や指導、あっせんなどを行うことが可能です(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条および第5条1項)。

この点、会社の労働基準法違反行為を労働基準監督署に申告したことを理由に解雇や減給などの処分を受けた場合も、事業主と労働者との間に紛争が発生しているということになりますから、労働局に対して「会社から報復措置として違法な不利益処分を受けてしまったので会社に撤回するよう助言してください」と援助の申立を行うことが可能となります。

労働局に対する援助の申立を行い、労働局の助言や指導に従って会社側が態度を改める場合には、会社が違法な不利益処分を撤回する可能性がありますのでこの労働局に対して紛争解決援助の申立を行うことも問題の解決方法として有効でしょう。

ただし、労働局の助言や指導に強制力はありませんので、会社が労働局の指示等に従わない場合には他の方法による解決方法を考える必要があります。

③ 弁護士・司法書士に相談する

労働基準監督署への違法行為の是正申告や労働局への紛争解決援助の申立を行っても会社側が違法な不利益処分を撤回しない場合には、弁護士や司法書士に相談して示談交渉や裁判などを通じて解決することを考えるしかないかもしれません。

なお、労働トラブルに関する法律は全ての弁護士や司法書士が精通しているというわけではありませんので、労働問題を弁護士や司法書士に相談する場合には、労働関係の事件を過去に多く扱ったことがあるか、労働法に精通している弁護士・司法書士を選ぶ方が問題解決への近道になると思われます。

なお、弁護士や司法書士など法律専門家に相談する場合の注意点はこちらのページで解説していますので参考にしてください。

なお、会社から解雇や減給など違法な処分を受けた場合の適切な対処法などについてはこちらのページでも解説していますので参考にしてください。

▶ 「給料を下げる」と言われたら?(一方的な賃金引下げの対処法)

▶ 解雇されたときにこれだけはやっておきたい4つのこと