このページでは、会社が管理職であることを理由に残業代を支払わない場合(いわゆる名ばかり管理職の問題)に、労働基準監督署に対して違法行為の是正申告を行う場合の申告書の記載例(ひな形・文例)を公開しています。
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管理職に就いていることを理由に残業代が支払われない場合における労働基準監督署への違法行為の是正申告書の記載例
〇〇労働基準監督署長 殿
労働基準法違反に関する申告書
平成〇年〇月〇日
申告者
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 神奈川県横浜市鶴見区〇〇町〇番〇号
氏名 古希塚我太
電話番号 080-****-****
違反者
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都江戸川区〇〇町〇番〇号
名称 株式会社ファミリーレストラン名羽刈
代表者 奈仁川ルイ
電話番号 03-****-****
労働基準法104条1項に基づき、下記のとおり労働基準法に違反する事実を申告いたします。
記
1 当事者
違反者は都内でファミリーレストランを展開する従業員667名の株式会社であり、江戸川区に本社営業部があるほか、八王子市に食材加工工場が、また”ファミリーレストラン名羽刈”の店名で都内各所で35店のレストランを運営している。
申告者は、平成〇年〇月に調理補助のアルバイトとして入社した後、平成○年○月に正社員に登用され、平成○年○月からはファミリーレストラン名羽刈の田町駅前店の店長として勤務している。
2 労働基準法に違反する事実
申告者は店長として勤務を始めた平成○年○月以降、休日出勤も含め毎月約200時間を超える時間外労働(法定外労働)を行っているが、違反者は申告者が店長という管理の地位にあることを理由に時間外労働にあたる割増賃金を支払っていない。
しかしながら、申告者は店長という地位にあるものの、賃金は他の一般社員とほぼ変わらず、出退勤の時間も他の一般社員と全く同じ時間で管理されているし、アルバイト従業員の採用についても全て本社で行われていて経営への参画も全くできていないことから、いわゆる「名ばかり管理職」に過ぎず、労働基準法第41条第2号に規定される「監督若しくは管理の地位にある者」に該当しない。
3 是正措置の申立
違反者の行為は、労働基準法第37条1項に違反する。よって、速やかに調査を行うとともに是正措置をとられるよう求める。
4 添付資料
・タイムカードの写し ○通
・給与明細書の写し○通(過去○年分)
5 備考
本件申告をしたことが違反者に知れると勤務先で不当な扱いを受ける恐れがあるため、違反者に対しては申告者の氏名を公表しないよう求める。
以上
※「当事者」の欄
当事者の欄は、会社やご自身の会社の業務に合わせて適宜書き直してください。
なお、匿名で申告したい場合は申告者の欄は空欄のまま提出しても構いません。
※「労働基準法に違反する事実」の欄
労働基準法に違反する事実の欄には、会社が労働基準法に違反してる行為を具体的に記載します。
この事例では、店長という管理職にあるものの「名ばかり管理職」に過ぎないため、管理職には残業代を支払わなくても良いと規定された労働基準法の第41条の第2号(労働基準法第37条の適用除外)には該当しないという表現にしています。
【労働基準法第37条】
第1項 使用者が第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(以下、省略)
【労働基準法第41条】
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。
第1号 (省略)
第2号 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
第3号 (省略)
なお、労働基準法第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」とは、従業員の労働条件の決定や労務管理等について経営者と一体的な立場にある者をいい、たとえ地位の名称が部長や工場長、店長などの名称であったとしても、そのような立場にない管理職(名ばかり管理職)については労働基準法41条の適用除外には該当しない(残業代を支払わなければならないということ)ことになります(昭和63年3月14日基発150号)。
なお、この点の詳細については「管理職であることを理由に残業代が支払われない場合の対処法」のページでレポートしていますので、詳しく知りたい場合はそちらのページをご確認ください。
※「是正措置の申立」の欄
是正措置の申立の欄には、会社の行為が労働基準法の”第何条”に違反するのかを記載します。
この事例では、時間外手当(残業代)の不払いが問題となっており、時間第労働をさせた場合には割増賃金を支払わなければならないと規定した労働基準法第37条の第1項に違反することになりますので「労働基準法第37条1項に違反する」という表現にしています。
【労働基準法第37条】
第1項 使用者が第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(以下、省略)
なお、労働基準監督署に対する違法行為の是正申告は、会社が労働基準法という法律の条文に違反していることが前提となりますので、どの条文に違反するか分からない場合は、いったん弁護士などの法律専門家に相談した方が良いかもしれません。
※「添付書類」の欄
労働基準監督署への違法行為の是正申告書には、会社が違法行為を行っていることを証明する文書がある場合には添付書類としてその書類(PC上の電子記録も可)を提出することができます。
ただし、この添付書類の欄に記載した書面については申告書と合わせて必ず提出(添付)しなければなりませんので注意してください。
上記の文例では、時間外労働を行っていることを証明するため「タイムカードの写し(コピー)」を、また、時間外手当が支払われていないことを証明するため「給与明細書の写し(コピー)」を添付するものとして記載しています。
なお、添付書類として提出する文書の「原本」は裁判になった際に使用する可能性がありますので、労働基準監督署に対しては原本ではなく「写し(コピー機で複写したもの)」を提出するようにした方が良いでしょう(※タイムカード原本は持ち出すことはできないので、タイムカードの写しを手元に保管し、その写しの写しを監督署に提出することにしています)。
※「備考」の欄
労働基準監督署への違法行為の是正申告は、労働基準監督署には氏名を明らかにしつつ会社には匿名にして申告することも可能です。
是正申告したことを会社に知られても構わない場合は備考の欄は削除しても構いません。
なお、この管理職の地位にあることを理由に残業代や休日出勤手当(時間外労働の割増賃金)が支払われていない場合の詳しい説明については『管理職であることを理由に残業代が支払われない場合の対処法』のページでご確認ください。