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管理職に残業代が支払われない場合の労働局の申立書の記載例

このページでは、管理職の地位に就いていることを理由に会社が残業代を支払わない場合(いわゆる名ばかり管理職の問題)に、労働局に対して個別労働関係紛争の解決に関する援助を申し込む場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。

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なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。

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管理職の地位に就いていることを理由に残業代(時間外労働の割増賃金)が支払われない場合における労働局への紛争解決援助申立書の記載例


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 神奈川県横浜市旭区〇〇町〇番〇号
氏名 平貝伊代
電話番号 080-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都杉並区〇〇町〇番〇号
名称 株式会社ハラワン・ファシリティーズ
代表者 名羽刈奈乃世
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

管理職にも時間外労働の割増賃金を支払うよう、事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人はオフィスビルの清掃業務を営む従業員256名の株式会社であり、杉並区の本社事業所に営業や管理部門があるほか、都内28か所のオフィスビルで清掃業務を受託している。
 申立人は平成〇年〇月に清掃員のパート従業員として入社した後、平成○年○月から正社員として本社管理部門に配属され、主にパート従業員の労務管理や資材手配、ビルオーナーやテナントからの苦情処理などの業務を担当しているが、平成○年○月に部長職に昇進して以降、残業代や休日出勤などの時間外の割増賃金(以下”残業代等”)が支払われないようになった。
 申立人は残業代等が支払われないことについて経理部門の役職者に確認をとったが、「部長職以上には役職手当が毎月5万円ついているから残業代や休日出勤手当は支払われないことになっている」というのみで残業代等が支払われることはなく、平成○年○月には社長に直接抗議したものの「労働基準法でも管理職には残業代を支払わなくてもよいとなっているから残業代は出ない」の一点張りで現在に至るまで残業代等は全く支払われていない。
 しかしながら、労働基準法第41条は、職務に関する重要な権限や自由な裁量権が与えられていたり、役所に見合う処遇や待遇が与えられている者についてのみ「監督若しくは管理の地位にある者」として時間外労働の割増賃金の支払いを定めた労働基準法第37条の適用除外を定めた規定であって(昭和63年3月14日基発150号)、賃金が他の一般正社員とほぼ変わらず、出退勤の時間も他の一般社員と全く同じ時間で管理されていて、パート従業員の採否についても全て本社の総務部門が管理し経営への参画も全くできていない申立人は、いわゆる「名ばかり管理職」に過ぎないといえるから、労働基準法第41条第2号に規定される「監督若しくは管理の地位にある者」には該当しないはずである。
 よって、このような被申立人の管理職であることを理由とした残業代等の不払い行為は、労働基準法第37条1項に違反するものであり違法である。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年○月ごろ、部長職に昇進した平成〇年〇月以降、残業や休日出勤に関する時間外労働の割増賃金が支払われなくなったことから、その理由を経理部門の○○に質問したところ、部長職以上には役職手当が毎月5万円支払われているため残業代や休日出勤手当は付与されない旨の説明を受けた。
 これに疑問を持った申立人は同年○月○日、代表取締役の名羽刈に直接抗議したが、「労働基準法でも管理職には残業代を支払わなくてもよいとなっているから残業代は出ない」と回答するのみで、申立人が部長職は名ばかり管理職に過ぎず労働基準法第41条2号の適用除外には含まれないことを説明しても全く聞く耳を持たず、時間外労働の割増賃金を支払おうとしない。
 そのため申立人は平成○年○月○日、「時間外労働の割増賃金を支払うよう求める申入書」を作成し、同日付で被申立人に内容証明郵便で送付したが、被申立人は何らの回答をすることもなく、現在に至るまで全く時間外労働の割増賃金を支払っていない。

4 添付資料

・タイムカードの写し ○通
・給与明細書の写し ○通
・時間外労働の割増賃金を支払うよう求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。

援助を求める理由の欄について

上記の記載例では、部長という管理職にあるものの「名ばかり管理職」に過ぎないため、管理職には残業代を支払わなくても良いと規定された労働基準法の第41条の第2号(労働基準法第37条の適用除外)には該当しないという表現にしています。

労働者が残業や休日出勤を行った場合には時間外労働の割増賃金を支払わなければならないと労働基準法の第37条に規定されていますが、「監督若しくは管理の地位にある者(いわゆる管理職)」については労働基準法41条第2号によって37条が適用除外とされていますので、通常は管理職には残業代や休日出勤手当を支払わなくても良いことになります。

しかし、労働基準法第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」とは単にその呼称が「部長」や「店長」や「工場長」などというだけではなく、勤務態様や労務管理について自由な裁量が与えられていたり経営者と同等の権限を有するような者であることが必要と考えられていますので(この点については旧労働省の出した指針(昭和63年3月14日基発150号)において解説されています)、そのような権限や地位の与えられていない上記の事例ではたとえ”部長”の地位にあっても残業代や休日出勤手当を支払うべきであるということになります。

【労働基準法第37条第1項】
使用者が第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(以下、省略)
【労働基準法第41条】
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。
第1号 (省略)
第2号 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
第3号 (省略)

添付書類の欄について

※添付書類は必ずしも添付が必要なものではありませんので、添付できる資料がない場合には「4」の項目は削除しても構いません。

上記の記載例では、時間外手当の割増賃金が支払われていないことを証明するため、タイムカードと給与明細書の写し(コピー)と、時間外労働の割増賃金を支払うよう求める申入書の写し(コピー)を添付することにしています。

なお、「時間外労働の割増賃金を支払うよう求める申入書」の記載例(文例)についてはこちらのページを参考にしてください。

≫ 管理職に残業代が支払われない場合の請求書【ひな形・書式】

≫ 残業代(時間外手当・割増賃金)請求書【ひな形・書式】

なお、管理職の地位に就いていることを理由に残業代や休日出勤手当が支払われない問題に関する詳細については『管理職であることを理由に残業代が支払われない場合の対処法』のページを参考にしてください。