このページでは、内定先の企業から執拗に内定を辞退するよう求められている場合に、労働局に対して紛争解決援助の申立てを行う場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
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内定先の企業から内定を辞退するよう強要されている場合に労働局に紛争解決援助の申し立てを行う場合の申立書の記載例
※内定者研修(入社前研修)への出席を拒否したり欠席したことを理由に内定を辞退するよう迫られている場合の記載例
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都荒川区〇〇六丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 寺田井仙子
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都文京区〇〇三丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社強要システム
代表者 八女佐須造
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
内定辞退の強要を止めるよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、洗濯ばさみの圧力を瞬時に測定するスマートフォン向けアプリ「洗濯ばさみチェッカー」を開発及び配信する従業員88名の株式会社であり、申立人は、〇〇工業大学に通う大学生(4年)である。
申立人は平成〇年〇月ごろ被申立人の本社ビルで行われた採用試験を受験し、同年〇月〇日付の採用内定通知書によって被申立人から採用内定の通知を受けたが、被申立人が主催する内定者研修への出席を拒否した日以降、頻繁に被申立人から電話を受けるようになり内定を辞退するよう執拗に迫られるようになった。
しかしながら、採用内定が入社予定日を就労開始日とする解約権留保付きの労働契約であることを考えれば、その就労開始日である入社予定日が到来するまでの期間においては申立人が被申立人の指揮命令下に置かれなければならない労働契約上の義務は存在しないから、申立人が内定者研修への出席を拒否したことは何ら内定取消事由には該当しないはずであって、申立人が内定を辞退しなければならない義務も存在しないといえる。
したがって、このような被申立人の内定辞退の強要は、理由のない執拗な退職強要行為といえ不法行為(民法709条)を構成する。
3 紛争の経過
申立人は平成○年〇月ごろ、被申立人から電話で内定者研修への出席を求められたが、卒業論文の執筆が遅れていたこともあり内定者研修への出席を拒否する旨回答した。
これに対して、被申立人は当初「卒論が終わったら連絡してください」と応じるなど納得していたように思えたが、○月上旬ごろに再度申立人に電話を入れ「内定者研修に出席しないなら内定を辞退してください」と告知するようになり、それを断ると数日おきに電話して申立人に内定の辞退を迫るようになった。
申立人は被申立人から電話があるたびに内定を辞退する意思がない旨回答していたが、執拗な内定辞退の勧奨が収まらないため、平成○年○月○日付の「内定辞退の強要を止めるよう求める申入書」を作成し被申立人宛て送付したが、その後も度々電話で内定を辞退するよう迫られている。
4 添付資料
・内定通知書の写し 1通
・内定辞退の強要を止めるよう求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。
上記の記載例では、まず内定が入社予定日を就労開始日とする解雇権留保付きの労働契約と解釈されていることを説明し、そのうえで就労開始日となっている入社予定日までは労働契約上の就労義務がないこと、また就労義務が無いのであれば内定者研修への出席を強制させられる義務もないことを記載して、そもそも出席する義務がない研修を欠席したことを理由に内定の辞退を迫る行為は、理由なく退職を強要している違法な行為(不法行為※民法709条)であるという趣旨の文章にしています。
なお、内定者研修への出席を拒否したり欠席したことを理由に内定を辞退するよう強要されている場合の対処法などについてはこちらのページで詳しく解説しています。
▶ 内定者研修の出席を拒否又は欠席して内定辞退を強要された場合
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。
上記の事例では、(1)の事例では有期労働契約の契約期間満了後に上司に呼び出されて有期雇用契約に契約を変更するように同意を求められ、拒否しても執拗に何度も同意を求められて書面で拒否の通知をしたあとも同意を求められる行為が収まらないことを、(2)の事例では、期間満了後に上司に呼び出されて有期雇用契約の契約書にサインを求められこれを拒否したところ一方的に有期雇用契約で契約が更新されたことされてしまったこと及び書面で撤回を求めても撤回されなかったことなどを記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の記載例では、「内定を受けたこと」を明らかとするために「内定通知書」の写しを、また「内定辞退の強要を止めるよう求めたこと」および「書面で内定辞退の強要辞めるよう求めたにもかかわらずその強要行為が収まらないこと」を明らかとするために「内定辞退の強要を止めるよう求める申入書」の写しを添付することにしています。
なお、この場合に添付する「内定辞退の強要を止めるよう求める申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。
(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)
※ 様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。
上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。