このページでは、勤務先の会社から「職種」の変更や「勤務地」の変更(転勤)を伴う配転命令(配置転換)を受けた場合に、その配転命令が労働契約法第3条5項に規定された「権利の濫用」にあたることを理由に、労働局に紛争解決援助の申立てを行う場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
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配転命令(配置転換)が権利の濫用にあたることを理由に労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 神奈川県横浜市保土ヶ谷区〇〇三丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 井鹿奈伊代
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都品川区〇〇町〇番〇号
名称 株式会社濫用システム
代表者 古都和ルナ
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
配転命令を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、就業規則の書き間違えを瞬時に検出するスマートフォン向けアプリ「自動で検出くんMAX」を開発および配信する従業員90名の株式会社であり、品川区の本社営業所の他に、北海道室蘭市に顧客からのクレーム対応を行うコールセンターが設けられている。
申立人は、平成〇年〇月にシステムエンジニアとして入社し、新規アプリケーションの開発業務を担当していたが、平成〇年〇月〇日付辞令書をもって、同年〇月〇日から室蘭市のコールセンターに転勤と職種の変更にかかる配転の命令を受けた。
しかしながら、被申立人においては来年度からコールセンター業務を外部の企業に全面的に委託することが決定しているから、仮にコールセンターの人員が不足していると考えてもコールセンター業務とは異なる業務に従事している申立人の職種を変更してまであえて室蘭市のコールセンターに配置転換させる必要はない。
また、被申立人は現在ハローワークにおいて本社営業所におけるシステム開発業務として中途採用の求人を行っているが、仮に室蘭市のコールセンターで人員が不足しているのであれば室蘭市でコールセンター業務を求人すれば済む話であり、何も本社営業所で申立人の代わりとなる中途採用者を募集してまで申立人を室蘭市に転勤させる必要はないはずである。
したがって、被申立人の配転命令に業務上の必要性は認められないから、その配転命令は労働契約法第3条5項で禁止される人事権を濫用するものとして違法であるといえる。
3 紛争の経過
申立人は上司から転勤の話が合った際に、室蘭市のコールセンターが来年3月で廃止されることや本社事業所で中途採用者を募集していることなどの事実があることを考えれば配転命令に合理的な理由がないことを抗議したが、一切話を聞いてもらえなかった。
そのため申立人は平成○年○月○日付の「配転命令の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法で改めて配転命令の撤回を申し入れたが、現在に至るまで当該配転命令は撤回されていない。
4 添付資料
・配転を命じた辞令書の写し 1通
・室蘭市のコールセンターが廃止される旨告知した社内メールの写し 1通
・本社営業所で中途採用を募集している求人票の写し 1通
・配転命令の撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※添付書類は必ず必要なものではありませんので、添付する書類がない場合は削除しても構いません。
※官公庁では全ての書類をA4で統一しているためプリントアウトはA4を利用すること。
申立書の記載要領
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。
上記の記載例では、室蘭市のコールセンターは廃止されることが決定されているため人員補充の必要性がないこと、また仮に人員削減の必要性があったとしても、申立人が現在従事している業務と同じ業務で本社営業所において中途採用の募集するのであればそのような募集をせずに申立人をそのまま現在の業務に就かせて室蘭市のコールセンターで短期契約の従業員を募集すれば済むことなどを説明したうえで、申立人が転勤しなければならない業務上の必要性がなく、業務上の必要性がないにもかかわらず転勤を強要する行為が権利の濫用に当たるというような文章にしています。
なお、「配転命令が権利の濫用にあたること」を理由に配転命令(人事異動)を拒否することができるのかといった点についてはこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。
上記の事例では、上司から室蘭市への転勤(配転)を命じられた際にその業務上の必要性がないことなどを説明しても聞き入れてもらえなかったこと、また書面で撤回を求めても撤回されなかったこと、などを記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の記載例では、「転勤を命じられていること」を明らかとするために「平成○年○月○日付の配転命令に関する辞令書」の写しを、「配転命令に業務上の必要性がないこと」を明らかとするために「室蘭市のコールセンターが廃止される旨告知した社内メールをプリントアウトしたもの」と「ハローワークの求人票」の写しを、また「書面で配転命令の撤回を求めても撤回されなかったこと」を明らかにするために「配転命令の撤回を求める申入書申入書」の写しを添付することにしています。
なお、この場合に添付する「配転命令の撤回を求める申入書申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。
(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)
※ 様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。
上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。