このページでは、勤務先の会社から「職種」の変更や「勤務地」の変更(転勤)を伴う配置転換(配転命令)を受けたものの、その配転命令が法令(法律)に違反する行為を含むものであることを根拠に、労働局に紛争解決援助の申立てを行う場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
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配転命令(配置転換)が法令に違反していることを理由に労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 東京都文京区〇〇三丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室
氏名 久実愛子
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都中野区〇〇三丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社イリーガルシステム&アウトロー
代表者 杯羅仙蔵
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
配転命令を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は、お菓子の最適な組み合わせを瞬時に識別するスマートフォン向けアプリ「おかしな組み合わせちゃん」を開発および配信する従業員982名の株式会社であり、中野区の本社営業所の他に、北海道の択捉島に顧客からのクレーム対応を行うコールセンターが設けられている。
申立人は、平成〇年〇月にアプリケーションの開発エンジニアとして入社し、新規アプリケーションのシステムメンテナンス業務を担当していたが、平成〇年〇月〇日付辞令書をもって、同年〇月〇日から択捉島のコールセンターに職種の変更をともなう転勤(配転)の命令を受けた。
しかしながら、この配転は申立人が上司から労働組合に加入しないよう勧められていたにもかかわらず、それを無視して労働組合に加入したことに対する報復として命令されたものであることは明らかであるから、不当労働行為として労働組合法第7条に違反する違法な配転命令であるといえる。
3 紛争の経過
申立人は平成○年○月ごろから、労働組合に加入することを考えていたが、上司から「労働組合に加入したら僻地にとばされるぞ」といわれていたため組合に加入することを躊躇していた。
しかし平成○年○月に入ってから労働組合に加入している同僚から「不当な転勤にあっても組合が助けてくれるから大丈夫」と助言を受けたため同年〇月から労働組合に加入する手続きを行ったところ、上司の〇〇に会議室に呼び出され一方的に択捉島への転勤を命じられた。
これに対して申立人は不当労働行為にあたるから転勤には応じられない旨抗議したが、「俺の忠告を無視するからこういうことになるんだ」というのみで一切転勤を撤回聞き入れてもらえなかった。
そのため申立人は、同年○月○日付の「配転命令の撤回を求める申入書」を作成し、被申立人に郵送する方法で改めて配転命令の撤回を申し入れたが、現在に至るまで当該配転命令は撤回されていない。
4 添付資料
・配転を命じた辞令書の写し 1通
・「俺の忠告を無視するから…」との音声を記録したUSBメモリ 1個
・配転命令の撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。
申立書の記載要領
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。
上記の記載例では、労働組合に加入した申立人に報復として転勤を命じた行為が労働組合法第7条に違反するから、その法令違反行為に基づく配転命令は無効(権利の濫用等)というような文章にしています。
なお、「就業規則や労働契約書に配転の根拠がないこと」を理由に配転命令(人事異動)を拒否することができるのかといった点についてはこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。
上記の事例では、上司から択捉島への転勤(配転)を命じられた際に不当労働行為であることを説明しているにもかかわらず配転(転勤)が強制されていること、書面で配転命令の撤回を求めても撤回されなかったことなどを記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の記載例では、「転勤を命じられていること」を明らかとするために「平成○年○月○日付の配転命令に関する辞令書」の写しを、また「労働組合法第7条に違反する不当労働行為であること」を明らかとするために「「俺の忠告を無視するからこういうことになるんだ」と上司が言った際の会話を録音した電子記録」をダウンロードしたUSBメモリを添付することにしています。
なお、この場合に添付する「配転命令の撤回を求める申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。
(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)
※ 様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられていないため適宜の様式で提出しても問題ないと思いますが、東京労働局のサイトから申立書のひな型をダウンロード(Word)することもできますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。
なお、申立書を提出する労働局の具体的な住所等については厚生労働省のサイトで各自ご確認をお願いします→ 都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省)。