このページでは、勤務先の会社の就業規則や労働契約書(雇用契約書)に「会社は配転を命じることができる」といったような定めがなされていないにもかかわらず、会社から「職種」の変更や「勤務地」の変更(転勤)を伴う配転命令(配置転換)を受けていることを理由として、労働局に紛争解決援助の申立てを行う場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
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就業規則や労働契約に根拠のない配転命令(人事異動)を受けたことを理由に労働局に紛争解決援助の申し立てを行う場合の申立書の記載例
〇〇労働局長 殿
個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 神奈川県川崎市中原区〇町目〇番〇号
氏名 海都蘭
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都墨田区〇〇町〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社ムリヤリテンキン・システムズ
代表者 門久優菜
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
配転命令を撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人は企業の就業規則を自動で作成するスマートフォン向けアプリ「自動で出来太くん・就業規則版」を開発配信する従業員180名の株式会社であり、墨田区の本社営業所においてアプリケーションの開発及び配信業務を行っているほか、顧客からの問い合わせに応じるコールセンターを沖縄県の那覇市に開設している。
申立人は、平成〇年〇月にアプリケーション開発のエンジニアとして入社し、システム開発を主に担当していたが、平成○年の4月から沖縄のコールセンターに配置転換(転勤及び職種の変更)される旨の配転命令を受けた。
しかしながら、使用者が労働者に対して人事権の行使として配転を命じる場合には、就業規則等によってその配転の根拠が定められその配転命令権が労働契約の内容となっていることが必要であり、その定めがない場合には配転の対象となる労働者の個別の同意がない限り使用者は配転を命じることができないはずである。
この点、被申立人の就業規則および申立人が被申立人との間で締結した労働契約書には転勤や職種の変更などの配転を認める定めは設けられていないし、申立人がその配転命令に同意した事実も存在しない。
したがって、被申立人は転勤(配転)を命じる労働契約上の権利を有しておらず、また申立人においても当該配転命令に従わなければならない労働契約上の義務ははないといえる。
3 紛争の経過
申立人は平成○年○月○日、直属の上司である○○(課長)から「来年の4月から沖縄のコールセンターでクレーム処理業務を担当してもらうことになったから引き継ぎの準備をしておくように」と転勤と職種の変更に関する配置転換の配転命令を受けた。
これに対して申立人は、入社以来、転勤や職種の変更があるとは聞いたことがなかったことから入社時に取り交わした雇用契約書を確認し、また会社の総務部で就業規則を確認したところ、雇用契約書及び就業規則の双方に転勤や職種の変更の定めが一切ないことが判明した。
そのため申立人は平成○年○月○日、再度上司の〇〇に対して就業規則や労働契約書の根拠がないのに転勤が命じられるのはおかしい旨抗議したが、「会議で決まったことだからしょうがない」「じゃあ誰が沖縄に行くんだよ」などと一切取り合おうとしなかった。
その後申立人は、平成○年○月○日付の「配転命令の撤回を求める申入書」を作成して書面という形で改めて配転命令の撤回を求めたが、現在に至るまで当該配転命令は撤回されていない。
4 添付資料
・平成○年○月○日付の配転命令に関する辞令書の写し 1通
・労働契約書の写し 1通
・就業規則の写し 1通
・配転命令の撤回を求める申入書の写し 1通
以上
※添付書類は必ず必要なものではありませんので、添付する書類がない場合は削除しても構いません。
※官公庁では全ての書類をA4で統一しているためプリントアウトはA4を利用すること。
申立書の記載要領
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を行っているのか、といったことを記載します。
上記の記載例では、会社が労働者に対して転勤や職種の変更などの配転(配置転換)を命じる場合には就業規則や労働契約書にその根拠が明示されていることが必要であるにもかかわらず、就業規則や労働契約書にその定めの記載がなかったこと、またその定めがないにもかかわらず労働者の同意を得ずに一方的に転勤や職種の変更を命じているのは人事権の範囲を超えているというような文章にしています。
なお、「就業規則や労働契約書に配転の根拠がないこと」を理由に配転命令(人事異動)を拒否することができるのかといった点についてはこちらのページで詳しく解説していますので参考にしてください。
※「紛争の経過」の欄について
紛争の経過の欄には、会社との間の紛争がどのようなきっかけで発生し、会社側とどのような交渉を行ってきたのか、その経緯を記載します。
上記の事例では、上司から沖縄への転勤(配転)を命じられた際に就業規則や労働契約書にその配転の根拠が明記されていないことを説明しているにもかかわらず配転(転勤)が強制されていること、などを記載しています。
※「添付資料」の欄について
添付資料の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の記載例では、「転勤を命じられていること」を明らかとするために「平成○年○月○日付の配転命令に関する辞令書」の写しを、「就業規則や労働契約書に配転命令権が明示されていないこと」を明らかとするために「労働契約書」と「就業規則」の写しを、また「書面で配転命令の撤回を求めても撤回されなかったこと」を明らかにするために「配転命令の撤回を求める申入書申入書」の写しを添付することにしています。
なお、この場合に添付する「配転命令の撤回を求める申入書申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。
▶ 就業規則や労働契約書に定めのない配転命令を拒否する通知書
ちなみに、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」と記載して申立てをしても構いません。
(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)
※ 様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。
上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。