このページでは、勤務先の会社以外の人(お客や取引先の社員など)からセクハラを受けた場合に、勤務先の会社が適切にセクハラに対処しないことを理由として、労働局に紛争解決の援助を求める場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。
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「お客」や「取引先の社員」など、会社外部の人間からセクハラを受けた場合に、勤務先の会社が適切に対処しないことを理由に、労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例
〇〇労働局長 殿
紛争の解決に関する援助申立書
(いわゆる男女雇用機会均等法第17条に基づく)
平成〇年〇月〇日
申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 神奈川県川崎市〇〇一丁目〇番〇号
氏名 井屋奈乃世
電話番号 090-****-****
被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都品川区〇〇三丁目〇番〇号〇〇ビル〇階
名称 株式会社放置ソリューション
代表者 南茂仙蔵
電話番号 03-****-****
1 紛争解決の援助を求める事項
出入り業者のセクハラを止めさせ、セクハラの再発防止策を講じるよう事業主に対する助言・指導を求める。
2 援助を求める理由
被申立人はペインティングソフトの開発を行う従業員90名の株式会社であり、品川区の本社営業所にてソフトウェアの開発及びウェブマーケティング業を営んでいるものである。
申立人は、平成〇年〇月にプログラマとして入社し、スマートホン向けペインティングアプリ開発班の一般社員として勤務しているが、座席が出入り口に一番近いという理由から、配達員等が被申立人の事業所に訪れた際にはその応対をするよう上司から指示を受けている。
申立人は平成〇年〇月ごろ、被申立人が関連会社との間で機密データのやり取りをするために定期的に利用しているバイク便の配達員〇〇(以下「バイク便配達員A」という)から交際を求められたが、交際する意思が全くなかったためその申し出を丁重に断った。
しかしバイク便配達員Aはその後も被申立人の事業所を訪れる都度、繰り返し申立人に対して交際を求め続けたことから申立人は恐怖を感じるようになり、上司である〇〇に対してそのバイク便配達員Aの行動を何とかしてもらうよう相談した。
これに対し上司である〇〇は、「それぐらいいいだろう」「モテる女はつらいな」などというのみで、そのようなバイク便配達員Aの言動を止めさせるような具体的な対処を何ら行おうとしない。
このような被申立人の対応は、労働者の安全配慮義務を規定した労働契約法第5条に、また職場における性的な言動に起因する諸問題に適切に対応するため必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないと規定する男女雇用機会均等法11条1項に違反する。
3 紛争の経過
申立人はバイク便配達員Aの執拗な交際の誘いについて明確に拒否し、バイク便配達員Aから繰り返しデートの誘いを受けた際も明確に迷惑である意思を伝えていた。
しかしながらバイク便配達員Aは一向に交際の申込みやデートの誘いを止めず、平成○年○月下旬ごろからは申立人が会社近くの駅で電車を待っている際に(偶然を装って)声をかけられたり、勤務先の会社近くのコンビニで(偶然を装って)声を掛けられたりするなど(※バイク便配達員の営業所は荒川区にあるためバイク便配達員Aが被申立人の事業所の近くの駅やコンビニにいる蓋然性は限りなく低いはずである)、バイク便配達員Aの行動に不自然な点があったことからストーカー的な恐怖を感じたため、平成○年○月、上司である〇〇にそのようなバイク便配達員Aの言動がどうにかならないものかという相談を行った。
これに対し上司の〇〇は、「そのうちあきらめるよ」「モテる女はつらいな」「それぐらい我慢したら」などと真剣に向き合おうとせず、現在に至るまで何ら具体的な対応策を取ろうとしない。
4 添付資料
・バイク便配達員Aが無理やり渡してきた電話番号のメモの写し 1通
以上
※2:添付書類は必ず必要なものではありませんので、添付する書類がない場合は削除しても構いません。
※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。
※「援助を求める理由」の欄について
援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を起こしていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。
上記の事例では、勤務先の取引会社の従業員から執拗に交際を求められているというセクハラ行為を受けているにも拘わらず、そのセクハラ行為の相談を受けていながら勤務先の会社が何らの措置もしないことが、労働者への安全配慮義務を規定した労働契約法第5条に、また職場における性的な言動に起因する諸問題に適切に対応するため必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないと規定する男女雇用機会均等法11条1項に違反するという文章にしています。
なお、この点の法律上の解釈についてはこちらのページで詳細に解説していますので参考にしてください。
※「紛争の経緯」の欄について
紛争の経緯の欄には、会社との間に発生した紛争がどのようなきっかけで発生し、どのような交渉を行ってきたのか、ということを記載します。
上記の事例では、申立人が会社の上司に対してセクハラ行為を繰り返すバイク便配達員Aの言動について相談したにもかかわらず、まじめに受け取らなかったという事実を記載しています。
※「添付書類」の欄について
添付書類の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。
上記の事例では、上司に相談しても上司がまともに取り合ってくれなかったことが会社との間の紛争の原因となっていますが、その事実を証明するような証拠がなかったものとして、とりあえずセクハラの原因となっているバイク便配達員Aが執拗に交際を迫っていることを明らかとするために電話番号の記載されたメモの写しを添付することにしています。
なお、労働局への紛争解決援助の申立は裁判所における”裁判”とは異なりますから、必ずしも会社の違法性を証明する証拠がなければ申立できないというわけではありません。
添付書類として添付出来るような書類等がない場合には、添付書類の欄には「特になし」と記載して申立を行っても一向に問題ありませんので誤解の内容にしてください。
様式について
労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。
上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。
もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。