広告

高速バスの交替運転手配置義務違反に関する内部告発文書の記載例

このページでは、高速バスなどを運行する旅客運送事業者が道路運送法および旅客自動車運送事業運輸規則の規定に違反して、交替運転手の配置が必要となる路線に交替要員を配置せずに高速バスを運行していることを理由として、監督官庁に内部告発する場合の申出書の記載例(サンプル)を公開しています。

適宜、ワードなどの文書作成ソフトで複製するなど自由に使用してかまいませんが、著作権を放棄するわけではありませんので無断転載や配布などは禁止します。

なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。

この書式例(ひな形例)を使用して損害が発生したとしても当サイトの管理人は一切責任を負いませんのでご了承のうえご使用ください。

広告

交替運転手の配置が必要な路線であるにもかかわらず交替要員が配置されずに高速バスが運行されていることを理由として監督官庁に内部告発する場合の申出書の記載例


申出書

平成

国土交通大臣 殿 ← 注1

氏名 告発 太郎 ㊞

 事業者の道路運送法に違反する行為につき、下記のとおり申し出ます。

1 申出人の氏名又は名称及び住所並びに電話番号

 氏名又は名称 告発 太郎

 住所 兵庫県芦屋市〇〇三丁目〇番〇号〇〇マンション〇号室

 電話番号 080-****-****

2 申出に係る通報の種類

過労運転(交替運転手の配置義務違反)

3 申出の理由

申出人は事業者の西淀川営業所において高速バス(高速乗合バス)のドライバーとして勤務しているが、同営業所が運行している大阪駅前と鹿児島中央駅前の区間を結ぶ定期高速バス「スーパーエクスプレス桜島号」については、その運転時間が2日間で平均して1日あたり9時間を超えているにもかかわらず、交替運転者が配置されていない。

4 申出に係る旅客自動車運送事業者等の氏名又は名称及び住所

 氏名又は名称 株式会社アローンバス

 住所 大阪市中央区〇〇一丁目〇番〇号

5 申出に係る違法行為を行っている事業所の場所及び氏名又は名称

 氏名又は名称 株式会社アローンバス 西淀川営業所

 住所 大阪市西淀川区〇〇二丁目〇番〇号

以上

 


注1:道路運送法に違反する事業者の内部告発に関する申出書は国土交通省に設置された公益通報窓口に提出することになりますので(※詳細は後述の(2)を参照)、名宛人は「国土交通省公益通報窓口 御中」と記載しても構いません。

※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。


【匿名で内部告発したい場合】

自分の氏名を申告せずに匿名で告発したい場合は上記の「氏名」の欄や「1 申出人の氏名又は名称及び住所」の欄を白紙のまま提出するか、「6 備考」の項目を追加して「本件申出をしたことが事業者に知れると勤務先で不当な扱いを受ける恐れがあるため事業者に対しては申出人の氏名を公表しないよう求める。」などと記載するなどしてください。

※ただし、匿名で内部告発する場合は監督官庁としてもその告発内容の信ぴょう性を確認できず単なる「情報提供」や「いたずら」などとしか判断しない可能性もありますので注意してください。また、仮にこのように記載したとしても監督官庁が確実に氏名を秘匿してくれるかは保証できませんのでご自身の判断で申出を行ってください。

申出書の記載要領

(1)申出書の様式

道路運送法に違反する事業者を監督官庁に申告するための申出は法律で定められた手続きではありませんので情報提供に使用する申出書に定型の様式はありません。

そのため高速バスの交替運転手の配置義務違反など過労運転に関する違法行為を監督官庁に内部告発する場合の申出書も適宜な書式で記載しても構いませんが、このサイトでは上記のような様式で記載することにしています。

(2)申出書の提出先

消費者庁のウェブサイトに掲載されている情報では、高速バス(乗合バス・貸切バス)など長距離バスの交替運転手の配置義務違反など過労運転の防止義務違反などを規制する道路運送法に違反する事業者の告発(情報提供先)については国土交通省に設置されている公益通報窓口に対して行うことになっていますので、その内部告発の申出書も国道交通省の公益通報窓口に提出することになります。

なお、申出書を送付する国土交通省の公益通報窓口の具体的な住所は消費者庁のこちらのページに掲載されています。

▶ 公益通報の通報先・相談先 行政機関検索 | 消費者庁

(3)申出の根拠

高速バスのドライバーが疲労や過労などで運行の安全を確保できない場合、重大な事故の発生によりそのドライバーだけでなくバスに乗車した乗客やその他バス路線を通行する国民の生命や財産に重大な危険が生じます。

そのため、高速バスなどを運行するバス会社に対しては道路運送法第27条1項で高速バス運転手の「適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他の運行の管理その他事業用自動車の運転者の過労運転を防止するために必要な措置」を講じることが義務付けられています。

【道路運送法第27条1項】
一般旅客自動車運送事業者は、(省略)、事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他の運行の管理その他事業用自動車の運転者の過労運転を防止するために必要な措置を講じなければならない。

この場合の「必要な措置」には連続運転の制限や休憩時間の確保など様々な項目がありますが、国土交通省令では長距離又は夜間の運転を行う伴う路線で運転手が疲労等によって安全な運転を継続することが出来ない恐れがある場合には交替要員となる運転手を配置することが義務付けられていますので(旅客自動車運送事業運輸規則21条6項)、その国土交通省令で交替運転手を配置することが義務付けられている路線であるにもかかわらず交替運転手を配置せずにその路線のバスを運行した場合には、そのバス会社は道路運送法に違反することになります。

【旅客自動車運送事業運輸規則21条6項】
一般乗合旅客自動車運送事業者及び一般貸切旅客自動車運送事業者は、運転者が長距離運転又は夜間の運転に従事する場合であって、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ、交替するための運転者を配置しておかなければならない。

この点、どのような「長距離運転又は夜間の運転」となるバス路線の運転が「疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるとき」に該当することになるかという点が問題となりますが、国土交通省の指針によれば「運転時間が2日を平均して1日9時間を超える場合」には交替運転手の配置が必要となるという解釈で運用されていますので(旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について)、上記の記載例のような高速バスの路線についても交替運転手をあらかじめ配置しておくことがバス会社に対して義務付けられているということが出来ます。

したがって、上記の記載例のバス会社は旅客自動車運送事業運輸規則の第21条6項に違反し、かつ道路運送法の第27条1項に違反していることになります。

※なお、交替運転手を配置することが必要となる「疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるとき」に該当する事例としては、上記の「運転時間が2日を平均して1日9時間を超える場合」以外にも「拘束時間が16時間を超える場合 」や「連続運転時間が4時間を超える場合」など多くの事例が該当します。詳細は国土交通省が出している「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」に記載されていますので興味がある方はそちらをご覧ください。

そして、この道路運送法に違反するバス会社(旅客運送事業者)があるときは、国土交通大臣はその違反する自動車(バス等)の使用の停止や一般旅客自動車運送事業者の許可を取消すこともできますので(道路運送法第40条1号)、国土交通省に対して「国の基準を超えた過労運転(長時間労働)」という違法行為が行われていることを情報提供(内部告発)することにより、勤務先のバス会社の違法行為を改善させることが可能となります。

【道路運送法第40条1号】
国土交通大臣は、一般旅客自動車運送事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。
第1号 この法律(省略)に違反したとき。
第2号(以下省略)

なお、このページではバス会社に勤務している従業員が”内部告発”を行う場合を想定して申出書の記載例を作成していますが、道路運送法に違反する行為の監督官庁に対する情報提供の申出は法律上制度化された申出ではありませんので、その違法行為を行っているバス会社の従業員のみならず、その運送業者と直接関係のない一般の人でもその違法行為を申出ることは可能です。

(4)過労運転の防止義務に違反した場合の罰則等

なお、バス会社などの一般旅客自動車運送事業者が道路運送法で禁止された長時間労働など過労運転の防止義務に違反した場合には、前述したように国土交通大臣により6月以内の業務の停止や運送事業の許可の取消(※許可が取り消されればその運送業者は基本的に廃業となります)などの処分が出されることがあります(道路運送法第40条1号)。

また、国土交通大臣から輸送施設の使用の停止や事業の停止の命令が出されたにもかかわらず、その業務停止命令に違反して業務を継続したような場合(例えば過労運転(長時間勤務)を理由に国土交通省から運送事業の一部の停止が命じられたにもかかわらず、密かにその停止を命じられたバス路線の運行を行った場合など)には、そのバス会社は一年以下の懲役もしくは150万円以下の罰金(又はこれを併科)に処せられる場合があります(道路運送法第97条3号)。

(5)内部告発を行う場合の注意点

なお、内部告発をする際の注意点などについては『内部告発(公益通報)の正しい方法と順序』のページを参考にしてください。