『「労基署に相談しても対応してもらえない」が間違っている理由』のページでも解説しているとおり、労働基準監督署は「労働基準法」に違反する事業主を「監督」する機関ですから、労働基準法ではない他の法律に違反する会社の違法行為についてはその監督権限を行使できません。
したがって、労働基準法以外の法律に違反する会社の行為を労働基準監督署に相談しても労働基準監督署は積極的に関与してくれない(関与したくても関与できない)ため、どのような会社の違法行為が労働基準法に違反し、どのような会社の行為が労働基準法以外の法律に違反することになるのか、という点を理解しておくことも、労働トラブルの解決手段を考える上で意味のあることなのではないかと思われます。
そこで、このページでは一般的に発生する確率の高い労働トラブルについて、どの労働トラブルが労働基準法に違反し、又は労働基準法以外の法律に違反することになるのか、言い換えればどの労働トラブルが労働基準監督署で受け付けてもらうことが可能で、どの労働トラブルが労働基準監督署で受け付けてもらうことが出来ない(受け付けてもらいにくい)のかといった、労働トラブルの分類について一覧表でそれぞれ分類してみることにいたします。
労働基準監督署で受け付けてもらうことが出来るまたは出来ない労働トラブルの分類一覧表(※一部のトラブルのみ抜粋)
労働基準監督署で受け付けるトラブル | 労働基準監督署で基本的に受け付けないトラブル | ||
労働トラブルの種類 | 労働基準法の条文 | 労働トラブルの種類 | 関連する法律の条文 |
解雇予告手当の不払 | 法第20条 | 普通解雇、懲戒解雇 | 労働契約法16条 |
傷病を理由とした解雇 | 法第19条 | 内定取消 | 労働契約法16条 |
積立金の未返還 | 法第23条 | 同意のない労働条件の変更 | 労働契約法3条1項 |
賃金の不払 | 法第24条 | 同意のない給料の減額 | 労働契約法3条1項 |
休業手当の不払 | 法第26条 | 会社都合休業の賃金不払 | 民法536条2項 |
休憩時間の付与違反 | 法第34条 | セクハラ | 均等法11条1項 |
休日の付与違反 | 法第35条 | パワハラ | 労働契約法5条 |
残業代等の不払 | 法第36条 | 職場いじめ(モラハラ) | 労働契約法5条 |
有給休暇の付与違反 | 法第39条 | 不当な配置転換 | 労働契約法3条1,3項 |
産休、育休の付与違反 | 法第65条 | 育休の付与違反 | 育児休業法5条 |
告発への報復人事等 | 法第104条2項 | 産休育休への不利益処分 | 均等法9条3項 |
その他のトラブル | その他の条文 | その他のトラブル | その他の法律 |
※上記の「労働基準監督署で受け付けないトラブル」に挙げたトラブルであっても、そのトラブルに労働基準法に違反する行為が含まれているような場合には労働基準監督署に申告することで解決できる場合も有ります。 |
※上記の表に挙げたのはあくまでも一例です。上記に挙げた以外の労働トラブルでも労働基準法に違反し労働基準監督署で申告を受け付けてもらえるものはありますし、上記以外でも労働基準監督署で受理できない労働基準法以外の法律に違反する労働トラブルは数多く存在します。