広告

残業代(時間外労働と休日労働)の計算方法とは?

残業をした場合には、会社に対して残業代を請求できる権利が発生します。

しかし、会社が残業代を支払わない場合には、労働基準監督署に違法行為の申告をしたり、自分で裁判や労働審判を起こして請求しなければならないこともあるでしょう。

このような場合、いったいいくら残業代が発生しているのかということは、請求する自分が計算しなければなりません。

とはいっても、労働基準法に規定されている残業代の計算方法は少々ややこしいので、初めて計算する場合は計算するのに戸惑うこともあるでしょう。

そこで、今回は、労働基準法(36条・37条)に規定されている残業代(割増賃金)の計算方法について説明することにいたしましょう。

広告

時間外労働とは?(法内残業と法外残業)

残業代は一般的に時間外労働のことを指しますが、この「時間外労働」には「法内残業」と「法外残業」の2種類に区別されます。

法内残業とは?

会社では通常、就業規則などにその会社における勤務時間(所定労働時間)というものが設定されています。

この就業規則でさだめられた所定労働時間は、各会社やそこで働く人の労働契約(正社員かパートかなど)によって違いがありますので、その労働者によっては7時間であったり、6時間であったり様々です。

この、その会社で規定されている所定労働時間を越えてする残業のうち、後述する労働基準法で定められている「8時間」という労働時間を超えない範囲で行う残業のことを「法内残業」と言います。

例えば、就業規則で勤務時間が7時間と定められている会社で1時間残業する場合は、「1時間の法内残業」となりますが、2時間残業する場合は「1時間の法内残業と1時間の法外残業」となります。

しかし、例えば就業規則で勤務時間が8時間と定められている会社では1時間残業しても「法外残業」となりますし、2時間残業しても「法外残業」となります。

法外残業とは?

一方、法外残業とは「労働基準法で定められた労働時間を超える残業」のことをいいます。

日本の会社での労働時間は、労働基準法という法律で1日8時間と定められていますから(労働基準法32条2項)、この法律で定められた「8時間」を越えて残業することが「法外残業」と言われます(法律の上限を超えてする残業ということ)。

例えば、就業規則で1日の勤務時間(所定労働時間)が7時間と定められている会社では、1時間残業しても労働基準法で定められた8時間を超えないため「法外残業」とはなりませんが、2時間残業した場合には「1時間の法外残業(1時間の法内残業と1時間の法外残業)」となります。

法内残業と法外残業では残業代の割増率に違いがある

以上のように、会社が規定する所定労働時間(会社が設定している勤務時間)によって、残業した場合にその残業が「法内残業」か「法外残業」なのか違いが出てきます。

この違いは、割増賃金の計算の際に重要となってきます。

時間外労働(残業)の時間が、「法内残業」にあたる場合には、その残業代については「割増賃金」は発生しないことになります。

法内残業の場合は、所定労働時間の時給相当額の金額が支払われますので、通常の勤務時間と同額の賃金が残業代の金額となります。

一方、時間外労働(残業)の時間が、「法外残業」にあたる場合は、その残業代については「割増賃金」が発生することになります(労働基準法37条)。

「法外残業」は法律で定められている労働時間を超過して働かせることになるのですから、法外残業の時間については法律で「割増賃金」を支払わなければならないとされているのです。

休日労働とは?

「休日」には「法定休日」と「法定外休日」の2種類があります。

法定休日とは?

「法定休日」とは法律で定められた休日になります。

労働基準法では「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と規定されていますので(労働基準法35条1項)、就業規則などで「法定休日」として指定された日が「法定休日」となります。

一般的な企業では就業規則で「日曜日」が「法定休日」とされています。

法定外休日とは?

法定外休日とは、「”法定休日”の他に会社の規定で休日とされている日」のことをいいます。

毎週土曜日と日曜が休みとなっているような週休二日制の企業では、一般的に就業規則で「日曜日」が「法定休日」とされていることが多いですが、そのような会社では「土曜日」が「法定外休日」にあたります。

なお、法定休日と法定外休日の違いについてはこちらのページで詳しく解説しています。

▶ 法定休日と法定外休日の違いとは?

法定休日と法定外休日では休日出勤の賃金の割増率に違いがある

法定休日と法定外休日の違いは、割増賃金が発生するかという点で違いがあります。

法定休日に出勤する場合は「休日労働」となり、割増賃金が発生します。

「法定休日」は法律で定められた休日ですが、その法律の上限を超えて働かさせるので割増賃金が発生するのです。

一方、法定外休日は法律で定められた休日ではなく、会社が任意に休日として設定した休日にすぎませんから、法定外休日に出金した場合であっても「休日労働」には該当しません。

そのため、法定外休日(週休2日制の土曜日など)の出勤については、割増賃金は支払われなくても良いということになります(労働基準法37条)。

ただし、法定外休日の出金であっても、その労働時間が週40時間を超える場合は、超えた分については「時間外労働」としての「割増賃金」が発生します。

割増賃金の計算方法

割増賃金の計算方法は労働基準法という法律で定められています(労働基準法37条)。

(1)時間外労働(残業代)の割増賃金

時間外労働(法外残業)の割増賃金は通常の労働日(労働時間)の賃金の25%となります。

なので、たとえば時給1000円のバイトの時間外手当は、1時間あたり1,250円となります。

なお、時間外労働の割増賃金は次の計算式で求めることができます。

割増賃金額=(通常の賃金額)÷(月間所定労働時間)×(1+0.25)×(時間外労働時間)

例えば、通常の賃金が1日あたり8000円で所定労働時間が8時間と定められた会社で、平日に毎日1時間(月間21日間)時間外労働した場合の1か月当たりの割増賃金は

割増賃金額=(8,000×21)÷(8×21)×(1.25)×(21)=26,250円/月

となります。

(2)休日労働の割増賃金

休日労働の割増賃金は、通常の労働日(労働時間)の35%となります(労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

なので、例えば時給1,000円のバイトの休日手当は、1時間当たり1,350円となります。

なお、休日労働の割増賃金は次の計算式で求めることができます。

割増賃金額=(通常の賃金額)÷(月間所定労働時間)×(1+0.35)×(休日労働時間)

例えば、通常の賃金が1日あたり8,000円(月給168,000円)で所定労働時間が8時間と定められた会社で、1か月間に4日間休日出勤した場合の1か月間の休日出勤の割増賃金は

割増賃金額=(8000×21)÷(8×21)×(1.35)×(8×4)=43,200円

となります。

(3)深夜労働の割増賃金額

深夜労働の割増賃金額は、通常の通常の労働日(労働時間)の賃金の25%となります。

なので、例えば時給1,000円のバイトの深夜労働の深夜手当は1,250円となります。

なお、深夜労働の割増賃金は次の計算式で求めることができます。

割増賃金額=(通常の賃金額)÷(月間所定労働時間)×(1+0.25)×(深夜労働時間)

例えば、通常の賃金が1日あたり8,000円で所定労働時間が8時間と定められた会社で、平日の深夜に毎日2時間(月間21日間)深夜労働した場合の1か月当たりの割増賃金は

割増賃金額=(8000×21)÷(8×21)×(1.25)×42=52,500円

となります。

(4)時間外労働が深夜労働になる場合

時間外労働が深夜労働になる場合は、前述の割増率が合算されます。

すなわち、時間外労働が深夜労働になる場合は、時間外労働の割増率である25%と深夜労働の割増率25%が合算されるので、割増率は50%となります。

この場合の割増賃金の計算式は

割増賃金額=(通常の賃金額)÷(月間所定労働時間)×(1+0.25+0.25)×(時間外深夜労働時間)

となりますので、

例えば、通常の賃金が1日あたり8,000円(月給168,000円)で所定労働時間が8時間(日勤)と定められた会社で、平日の深夜に毎日2時間(月間21日間)深夜労働した場合の1か月当たりの割増賃金(月額)は

割増賃金額=(8,000×21)÷(8×21)×(1.50)×(42)=63,000円

となります。

(5)休日労働が深夜労働になる場合

休日が深夜労働になる場合は、前述の割増率が合算されます。

すなわち、休日労働が深夜労働になる場合は、休日労働の割増率である35%と深夜労働の割増率25%が合算されるので、割増率は60%となります。

この場合の割増賃金の計算式は

割増賃金額=(通常の賃金額)÷(月間所定労働時間)×(1+0.35+0.25)×(休日深夜労働時間)

となります。

例えば、通常の賃金が1日あたり8,000円(月給168,000円)で所定労働時間が8時間(日勤)と定められた会社で、休日の深夜に毎週2時間(月間4日間)深夜労働した場合の割増賃金額は

割増賃金額=(8,000×21)÷(8×21)×(1.60)×(8)=12,800円

となります。

(6)割増賃金算定の基礎となる賃金(通常の賃金額)から除外されるもの

なお、前述の計算式にある「通常の賃金額」からは次の手当などは除外されます。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金(賞与・ボーナス)
  7. 一か月を超える期間ごとに支払われる賃金(精勤手当・勤続手当・奨励加給・能率手当)