雇止めを拒否できる場合と雇止めされた場合の対処法

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食肉加工工場

アルバイトやパート、契約社員などのいわゆる非正規労働者は、入社時に定められた契約期間が満了すれば、会社が契約を継続してくれない限り会社を辞めないといけません(契約の更新がされない=雇止めされる・・・ということ)

しかし、全ての場合に会社を辞めなければならないわけではなく、場合によっては契約期間が満了した後であっても会社を辞めることなくそれまでどおり働くことができる場合があります。

そこで今回は、アルバイト・パート・契約社員などの非正規労働者の契約期間が満了した後も引き続き働き続けることができる(雇止めされない)のはどのような場合か、また、雇止めされた場合にはどのような対処をとればよいか、という問題について考えてみることにいたしましょう。

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通算して5年を越えて契約が更新されている場合で、無期労働契約に転換するよう申し込みをした場合

アルバイトやパート、契約社員といった有期労働契約(期間の定めのある雇用契約)であっても、その契約期間が5年を超えて更新されているような場合には、勤め先の会社に対して「正社員にしてください」と申し込みをすることが可能です(労働契約法18条)。

この正社員への申し込みがあった場合には、会社はそれまでの有期労働契約ではなく無期労働契約として雇い続けないといけませんので、契約期間が満了した後であっても勤め先を辞めることなくそのまま(しかもアルバイトなどではなく正社員として)働き続けることが可能となります。

バイト・パート・契約社員が正社員になる方法

有期労働契約が繰り返し更新されている場合

アルバイトやパート、契約社員などの有期労働契約(期間の定めのある雇用契約)の契約期間が満了した後に、繰り返し契約が更新されているような場合には、労働者の側としては「次も更新されるだろう」という期待を持って働いていることが多いですし、契約が継続して更新されているような形態の場合は、正社員などと同様に「無期労働契約(期間の定めのない雇用契約)」と同じような働き方をしていることが多いでしょう。

そのため、このように繰り返し更新がなされているような場合には、契約期間が満了したからと言って会社が契約を更新しないことが「権利の濫用」として制限される場合があります。

たとえば過去の裁判例でも、工場の臨時工が契約期間満了により雇止めされた事案では、それまでは契約期間満了によって雇止めされることなく契約期間満了後も継続して雇用されていたなどの事情があることを理由に、契約期間満了後に契約を更新しないことは「解雇」と同じであるとして、契約の更新をしないことは許されないと判断されています(東芝柳町工場事件・昭和49年7月22日)(類似の事案として日立メディコ事件・昭和55年12月16日)。

このように、有期労働契約が繰り返し更新されているような場合には、契約を更新しないことが「解雇」とみなされることになりますので、解雇の制限が定められている労働契約法16条に従って、その契約の更新をしないことが無効と判断される(したがって契約が更新されることになる)可能性が高いと言えるでしょう。

【労働契約法16条】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

有期労働契約の期間満了後、契約の更新がなされないまま継続して働いているのに使用者が異議を出さなかった場合

アルバイトやパート、契約社員など有期労働契約(期間の定めのある雇用契約)で働く労働者が、契約の更新がなされなかったものの、契約期間が満了した後もそれまでと同じように働いている場合(くだけた言い方をすれば「しれ~と働いている」ような場合)に、使用者(会社・雇い主)が「契約期間は終了したんだから家に帰れ」などと言わずに、そのまま働くことを許しているような場合があります。

このような場合には、契約の「黙示の更新」があったものとして、それまでの「有期労働契約(期間の定めのある雇用契約)」が「無期労働契約(期間の定めのない雇用契約)」として存続すると考えられています。

その根拠は民法629条にあるのですが、

【民法629条前段】

雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件でさらに更新をしたものと推定する。

この条文を素直に読むと「従前の雇用と同一の条件でさらに更新」となっていますので、新しく更新される契約は無期労働契約(期間の定めのない雇用契約)ではなく、元々契約していた「有期労働契約(期間の定めのある雇用契約)」になるのではないかという疑問が生じますが、過去の裁判例では労働契約の内容(賃金などの労働条件)は従前の契約が引き継がれるものの、このような場合には期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)として更新されるという考え方がとられています(紀伊高原事件・大阪地裁平成9年6月20日)。

そして、無期雇用契約(期間の定めのない雇用契約)というのは「正社員」と同じ地位になるということですから、その後に使用者(会社・雇い主)が「契約の更新はしない」と言ったとしても、それは「解雇」を行うのと同じことになります。

そのため、前述した労働契約法16条に定められた解雇の制限がかかってきますので、解雇権の濫用として継続して働かせないことが権利の濫用と判断される可能性が高いということができます。

【労働契約法16条】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

このような事情から、有期労働契約の期間満了後、契約の更新がなされないまま継続して働いているのに使用者が異議を出さなかった場合にも、会社を辞めさせられることなく正社員と同様に働き続けることができるということになります。

雇止めされたとき(有期契約の更新を拒否されたとき)の対処法

上記のように、一定の場合にはたとえ有期雇用契約(期間の定めのある雇用契約)であっても、契約満了時に会社側が契約を更新しないことが違法と判断され、引き続きその会社に勤務することが可能になります。

しかし、そのような法律的な判断を知らずに(又は知ったうえで)契約期間満了とともに雇止めする企業もありますから、有期雇用契約の契約更新を拒否された場合には次のような方法をとって対処していく必要があります。

① 更新拒否の無効及び撤回を求める申入書を送付する

前述したように、有期雇用契約であっても一定の場合には会社が更新を拒否することが権利の濫用として無効と判断される場合もありますから、権利の濫用と認められるような事情があるような場合には、会社に対して「更新拒否の無効・撤回を求める申入書」を送付するのも一つの方法として有効です。

≫ 雇止め(契約更新拒否)の撤回申入書【ひな型・書式】

話し合いで解決しない場合でも、書面という形で申し入れすれば、正式に抗議しているということが会社に伝わりますので、会社側に権利を濫用していることの認識がある場合には、会社側が雇止めを撤回し、契約の更新を認める場合もあるでしょう。

また、書面という形で送付しておくことで、後日裁判になった際に「雇止めの撤回を求めたのに撤回してくれなかった」ということを証明するための証拠として利用することもできますから(ただし内容証明郵便で送付することが必要)、証拠づくりをしておくという面でも申入書(通知書)を送付しておくことは意味があるでしょう。

② 労働局に紛争解決援助の申立を行う

全国に設置された労働局では労働者と事業主(会社)との間に何らかの紛争が発生した場合には、当事者の一方からの申立によって紛争解決に向けた”助言”や”指導”、あっせん(裁判所の調停のような手続)に基づく”解決案”を提示することが可能です(この手続きを紛争解決援助の申立といいます)。

この点、有期雇用契約の更新拒否が権利の濫用となる場合も、労働者と会社(事業主)の間で「契約の更新拒否が有効か無効か」という点で”紛争”が発生しているということができますから、労働局に対して「会社が更新拒否を撤回するよう援助してください!」と紛争解決の援助の申立をすることが可能となります。

≫ 有期契約の更新拒否で解雇された際の労働局の申立書の記載例

会社側が労働局の提示する”助言”や”指導”、”解決案”に従うようであれば、契約の更新拒否を撤回する場合もありますので、労働局に紛争解決援助の申立を行うというのも解決方法の一つとして有効でしょう。

≫ 都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省

もっとも、労働局の紛争解決援助の手続きに強制力はありませんので、会社側が労働局の提示する助言などに応じない場合には、後述するように弁護士などに相談して裁判や労働審判などを申立てて裁判手続きのうえで解決を図るほかないでしょう。

③ ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する

ADRとは裁判外紛争処理手続のことをいい、弁護士などの法律専門家が紛争の当事者の間に立って中立的立場で話し合いを促す裁判所の調停のような手続きのことです。

当事者同士での話し合いで解決しないような問題でも、法律の専門家が間に入ることによって要点の絞られた話し合いが可能となり、専門家が間に入ることで違法な解決策が提示されることがないといったメリットがあります。

ADRは裁判の手続きとは異なる”任意の話し合いの場の提供”に過ぎず強制力がないため、会社側が話し合いに応じない場合には解決策として適当ではありませんが、会社側が話し合いに応じる余地があるようであれば、利用を考えてみるのも良いでしょう。

なお、ADRは裁判所の調停よりも少ない費用(調停役になる弁護士などに支払うADR費用、通常は数千円~数万円)で利用することができるため、経済的な負担をそれほど感じないというメリットもあります。

ちなみに、ADRの利用方法は主催する最寄りの各弁護士会などに問い合わせれば詳しく教えてくれると思いますので、興味がある人は電話で聞いてみると良いでしょう。

≫ 日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:紛争解決センター

≫ 日本司法書士会連合会 | 話し合いによる法律トラブルの解決(ADR)

≫ 職場のトラブル|全国社会保険労務士会連合会

④ 弁護士などの法律専門家に相談する

当事者同士での話し合いで解決しなかったり、労働基準監督署への申告や労働局への申立でも解決しない場合には、弁護士などに相談して訴訟や労働審判などの裁判手続きを利用して解決することも必要かもしれません。

また、自分で交渉することに抵抗があったり、法律の内容があまり理解できないような場合には、労働基準監督署や労働局を利用しないで早めに弁護士などに相談することも考えるべきでしょう。

≫ 弁護士?司法書士?社労士?労働トラブルの最適な相談先とは?

参考サイト(判例リンク)

東芝柳町工場事件|裁判所判例検索

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54173

日立メディコ事件|裁判所判例検索

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62868


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