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労働基準監督署に提出する違法行為の是正申告書の書き方

勤めている会社に給料や残業代の不払いなど労働基準法に違反する事実がある場合には、労働基準法の第104条1項に基づいて、労働基準監督署にその違法行為の「是正申告」をすることができます。

【労働基準法第104条第1項】
事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うと、その申告に基づいて労働基準監督署が調査を行い、必要に応じて行政指導や是正勧告が行われるのが通常です。

また、会社側が指導等に従わない場合は労働基準監督署が検察に送検したりする場合もありますので、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことで間接的に会社で受けている違法行為が改善される可能性があります。

労働基準監督署に会社の違法行為を申告する方法は特に定められていませんので、労働基準監督署に直接出向いて口頭で行うことも自宅から電話で行うことも可能ですが、通常は書面で行うのが一般的です。

▶ 全国の労働基準監督署の所在案内|厚生労働省

そこで今回は、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行う場合に提出する是正申告書の書き方(ひな形・書式例)と具体的な申告方法などについて解説することにいたします。

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労働基準監督署に提出する違法行為の是正申告書の書き方

労働基準法違反を申告するための「申告書」に定められた書式はありませんので、適宜な文章で申告書を作成すれば問題ないと思いますが、念のため労働基準法違反申告書のひな形を作成してみましたので、各自ワードなどのソフトを使って複製してください(※ただし無断転載や二次配布は禁止します)。

なお、公的機関は文書をA4で統一しているところが多いので申告書を作成する場合はA4用紙でプリントアウトすると喜ばれます。

※赤色の部分は記載例ですので、適宜書きなおして使用してください(※枠線は削除しても構いません)

労働基準法違反申告書(労働基準法104条1項に基づく)
  品川   労働基準監督署長 殿
【申告日】
平成  年  月  日
【申告者】
〒 〇〇〇‐〇〇〇〇
住所: 東京都太田区〇〇町〇〇
氏名: 申告太郎
電話番号: 090-****-****
【違反者】
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地: 東京都品川区〇〇町〇〇
名称:  悪徳システム株式会社
代表者: 護摩樫太郎
業種:  ソフトウェア制作・メンテナンス
電話番号: 03-****-****
【申告者の職務内容および違反者との関係】
入社年月日: 2008 年 4 月 1 日
役職等: グループリーダー
職務内容: ソフトウェア開発・プログラミング
【労働基準法違反の事実】
申告者は、直属の上司である違反者の役職者から命じられ、平成〇年○月から平成〇年〇月までの間に〇時間の時間外労働を行っている。しかし違反者は「社内規定で残業は禁じられている」と主張し、当該時間外労働に対する賃金を支払わない。
【違反する労働基準法の条項】
労働基準法第 37 条
【申告の趣旨】
上記違反者における労働基準法違反の事実調査およびその違反行為に対する速やかな是正措置を求める。
【添付書類】
上司から残業をするように指示のあった社内メールのプリントアウト
タイムカードの写し
【備考】
本件申告をしたことが違反者に知れると、勤務先で不当な扱いを受ける恐れがあるため、違反者に対しては申告者の氏名を公表しないよう求める。

※裁判所における裁判と異なり、労働基準監督署への違法行為の是正申告に証拠書類の提出は必須ではありませんので、使用者の労働基準法違反を裏付けるような証拠(書類・画像等の電子データ等)が無い場合は「添付書類」の欄には「特になし」と記載し添付書類を添付しないで申立を行っても構いません。

なお、労働基準監督署への是正申告書の記載例についてはこちらのページでも雛型を豊富に掲載していますので参考にしてください。

労働基準監督署への是正申告書の書式・サンプル【目次ページ】

ちなみに、労働局に提出する紛争解決援助の申立書の雛型についてはこちらのページに掲載しています。

≫ 労働局への援助申立書の書式・サンプル【目次ページ】

労働基準監督署への申告の方法(匿名での申告の可否)

労働基準監督署に違反行為の申告する場合は、前述した申告書を提出することになりますが、この申告の際には、実名で申告することも匿名で申告することも可能です。

また、匿名で申告する場合も「会社に対しては匿名にするが労働基準監督署には氏名を申告する」方法と、「会社に対しても労働基準監督署にも匿名で申告する」方法の2とおりに分かれます。

① 労働基準監督署と会社の双方に氏名を明らかにして申告する方法
② 労働基準監督署には氏名を明らかにするが会社には匿名にして申告する方法
③ 労働基準監督署にも勤務先の会社にも匿名で申告する方法

前述した申告書のひな形は上記②の「労働基準監督署には氏名を明らかにするが会社には匿名にして申告する方法」で申告する場合を例として挙げているので、「備考」の欄に

「本件申告をしたことが違反者に知れると、勤務先で不当な扱いを受ける恐れがあるため、違反者に対しては申告者の氏名を公表しないよう求める。」

という文章を記入して、労働基準監督署に氏名を会社側に伏せておくよう求めるものになっています。

なお、労働基準監督署に対しても勤務先の会社に対しても氏名を明らかにしないで申告をする場合は、前述の「労働基準法違反の申告書」の「申告者」の欄は空欄に(または「匿名」や「氏名は明らかにしない」などと記入)しておきます。

匿名で申告した場合の労働基準監督署の対応

労働基準法違反の行為を労働基準監督署に申告する際に、自分の氏名を公表するか匿名にするかで労働基準監督署の対応にも若干の違いがあるようです。

まず、前述した①の労働基準監督署にも会社に対しても自分の氏名を明らかにする場合は、労働基準監督署も「〇〇という人が残業代を受け取っていないと言っているがどうなっているのか」「〇〇という人の勤務状態の資料を開示しなさい」と特定の人間について調査することができるため、迅速な解決が期待できます。

一方、前述の②の労働基準監督署には氏名は明らかにするものの会社側には匿名で申告する場合には、申告を受け取った労働基準監督署は「労働基準法違反の申告があったこと」は伏せて調査をしなければならず、一般的な臨検の体で調査をしなければならないため、①の場合のように迅速な解決は期待できません。

また、③の労働基準監督署にも会社にも匿名で申告する場合は、申告を受けた労働基準監督署も「単なる情報提供」として受け取るにすぎませんので、実際に調査をするかしないかは監督署の判断次第となります(※同じような情報提供が大量に届くなどの事案でない限り、調査はしないでしょう)。

① 労基署にも会社にも氏名公表 → 迅速な対応が期待できる
② 労基署には氏名公表・会社には匿名 → 場合によっては解決の可能性もある
③ 労基署・会社の双方に匿名 → 対応はあまり期待できない