労働基準監督署と労働局は何がどう違うの?

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労働トラブルにあったときに相談することができる公的機関としては、労働基準監督署と労働局の2つがありますが、実際にトラブルに見舞われた際にどちらに相談に行けばよいかわからないという人は多いのではないでしょうか?

労働基準監督署と労働局はどちらも厚生労働省の機関なので変わりがないようにも見えますが、実際はその役割が異なっていますので、労働トラブルの内容によっては相談にうまく応じてもらえないことも多いようです。

そこで今回は、労働基準監督署と労働局はどのように異なるのか、またどのような労働トラブルの場合に労働基準監督署または労働局に行けばよいのか、といった点について考えてみることにいたしましょう。

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労働基準監督署とは?

労働基準監督署は、所属の職員を”監督”して使用者(雇い主・事業主)が”労働基準法”という法律に違反することがないように調査や臨検を行うのが主な役割です。

仮に使用者(雇い主・事業主)が”労働基準法”に違反している可能性がある場合には、”労働基準法”という法律に基づいてその職員が調査や尋問などを行い、罰則規定のある違反行為がある場合には警察官と同じように逮捕や起訴などを行います。

【労働基準法】

第99条3項 労働基準監督署長は、都道府県労働局長の指揮を受けて、この法律に基づく臨検、尋問、許可、認定、審査、仲裁その他この法律の実施に関する事項をつかさどり、所属の職員を指揮監督する。

第101条1項 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、または使用者もしくは労働者に対して尋問を行うことができる。

このように、労働基準監督署は、その職員を”監督”して、使用者(雇い主・事業主)が”労働基準法”に違反しないように調査や審査をする機関であるところが特徴です。

労働局とは?

一方、労働局の業務は多岐にわたりますが、労働者と事業主との関係においては、事業主と労働者との間に労働関係の紛争(労働トラブル)が発生した場合に、その紛争の解決のために必要な助言や指導、あっせん(裁判所の調停のようなもの)を行うことがで主な役割となっています。

【個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律】

第3条 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者又は事業主に対し、労働関係に関する事項並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての情報の提供、相談その他の援助を行うものとする。

第4条1項 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(省略)に関し、当該個別労働関係紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができる。

このように、労働局は労働者と事業主の間で発生した”個別具体的な紛争”を解決するために助言や指導を行って当事者を”援助”するところが特徴といえるでしょう。

労働基準監督署と労働局の違い

前述したように労働基準監督署と労働局は、労働基準監督署が”労働基準法”という法律に違反した使用者(雇い主・事業主)に権限を行使する機関であるのに対し、労働局は労働者と事業主の間で生じる”個別の紛争”を解決するために援助を行う機関であるところが大きな違いということになります。

機関 主な役割・権限
労働基準監督署 ”労働基準法”という法律に違反しているか調査し違反する使用者を処罰する
労働局 労働者と事業主の間に生じた”個別の紛争”の解決のため助言や指導を行う

労働基準監督署は”労働基準法違反”をしている使用者を監督し行政処分をするだけ

このように、労働基準監督署は”労働基準法”という法律に違反している使用者(事業主・雇い主)に対して、その違法行為を調査したり処罰したりする機関にすぎませんので、個別の労働者が使用者の労働基準法違反行為によって不利益を受けた場合であっても、その労働者を直接救済する行為は行いません。

労働局に相談する場合は、助言や指導によって労働者と事業主の間に生じた”個別の紛争”を「直接」解決することが期待できますが、労働基準監督署に相談する場合はその”相談”は実質的には単に会社が労働基準法に違反しているという事実を”申告”しているに過ぎず、労働基準監督署がその労働基準法違反行為を是正させることによって「間接的」に不利益を受けている労働者が救済されるに過ぎないのです。

たとえば、勤務している会社が残業代を支払わないという労働トラブルがあったとすると、「残業代の不払い」という問題は賃金の支払いを定めた”労働基準法第24条”に違反することになりますので、労働基準監督署に相談に行けば労働基準監督署から会社に対して調査や指導がなされることが期待できますから、結果として残業代が支払われることになるかもしれません。

しかし、それはあくまでも”残業代の不払い”という「労働基準法違反」を労働基準監督署が違法行為と認定して処罰した結果、「間接的」に残業代が支払われるようになっただけなのであって、労働基準監督署が”残業代を支払ってもらえない労働者”の側に立って直接残業代を請求してくれるわけではありませんので誤解のないようにしてください。

労働基準法に違反していない労働トラブルは基本的に労働基準監督署では対処してもらえない

前述したとおり、労働基準監督署は”労働基準法”という法律に違反している使用者(事業主・雇い主)を取り締まる機関ですから、”労働基準法”に違反する事実がない限り基本的に権限を行使することができません。

そのため、たとえ違法な行為を行っている会社があっても、労働基準法に違反しない場合には基本的に労働基準監督署に違法行為の是正申告が行えないことになります。

例えば、セクハラやパワハラ、モラハラといった職場でのハラスメント行為は違法行為となりますが、これらのハラスメント行為は労働基準法で”違法”と規定されているものではありませんから、基本的に労働基準監督署に違法行為の是正行為を行うことは適当ではありません。

なぜなら、セクハラは「男女雇用機会均等法(正式名称は”雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)」の第11条に規定にされた”雇用管理上の措置義務違反”として、またパワハラやモラハラは「労働契約法」の第5条に規定された”労働者の安全配慮義務違反”として使用者(事業主・雇い主)の義務違反が問題となるものであって、労働基準法違反として問題になるわけではないからです。

給料(賃金)や残業代の未払いや、違法な長時間労働などは労働基準法違反となりますので労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うことで改善が見込めますが、労働基準法に違反しない違法行為については労働基準監督署に相談しても解決は望めないと思いますので注意する必要があります。

会社が”労働基準法に違反していない”労働トラブルは、労働局に相談する方がよい

前述したとおり、労働基準監督署は”労働基準法”という法律に違反している使用者(事業主・雇い主)を取り締まる機関となりますので、たとえ労働トラブルの被害に遭っている場合であっても会社側が”労働基準法”に違反していないのであれば労働基準監督署はその労働トラブルの相談先として適当ではありません。

では、会社が労働基準法に違反していない労働トラブルはどこに相談に行けばよいかというと、それは労働局ということになります。

労働局では労働者と事業主の間で発生した”紛争”を解決するための助言や指導、あっせんなどを行っていますから、会社が労働基準法に違反しているかいないかにかかわらず、会社側と争いがある事実さえあれば労働局が対応してくれることになるでしょう。

前述したセクハラやパワハラ、モラハラといったハラスメント行為は労働基準法違反ではないため労働基準監督署に「違法行為の是正申告」をすることはできませんが、会社側がその防止策を適切に取らない場合にはそのハラスメントの被害者である労働者と会社(事業主)との間に”紛争”が生じているということになりますから、労働局に「紛争解決援助の申立」を行うことが可能です。

会社が”労働基準法に違反している”労働トラブルでも労働局に”紛争解決援助の申立”を行うことで解決できる可能性がある

前述したように、会社が”労働基準法に違反していない”労働トラブルは、労働局に「紛争解決援助の申立」を行うことで解決が図れますが、これは労働局は「労働基準法に違反していない紛争しか受け付けない」ということではありません。

労働局では”労働者と事業主の間に発生した紛争”の解決を図る機関ですから、労働者と事業主の間で”紛争”が生じてさえいれば基本的にどのような案件でも紛争解決の援助をすることが可能です。

そのため、仮に会社に労働基準法違反行為があり労働基準監督署に違法行為の是正申告を行っている案件であっても、その違法行為によって会社(事業主)との間に紛争が生じている場合には、労働局に対して紛争解決援助の申立を行うことも全く問題ありません。

例えば、前述したように「残業代の未払い」という法律違反の場合は”労働基準法違反”となりますので労働基準監督署に対して違法行為の是正申告を行うことで解決が図れますが、この場合も「残業代を払ってもらえない」という紛争が労働者と事業主の間で発生していることには変わりありませんから、労働基準監督署への「違法行為の是正申告」とは別に、労働局に対して「紛争解決の援助の申立」を行うことも可能なのです。

このように、労働基準監督署への「違法行為の是正申告」と労働局に対する「紛争解決援助の申立」は全く別のものになりますから、その発生している労働トラブルの性質によってどちらか一方の機関を利用するのか、それとも双方に申立を行うのかということを考える必要があるでしょう。


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