”退職届”と”退職願”は違う?同じ?退職の撤回の問題点

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退職願

他のウェブサイトやブログを見ていると、「会社を辞めるときに提出した書面に”退職届”と記載した場合には退職の意思表示を撤回することはできないが、”退職願”と記載した場合には退職の撤回が可能である」といった記述を多く見かけます。

書類の表題が”退職届”となっているか”退職願”となっているか、ただの1文字の違いで法律的な撤回の効果が異なるという話なのですが、本当にそうなのでしょうか?

1文字だけの違いで法律的な効果が異なってくれば、単なる書き間違いであっても不利益を受けてしまうため問題となります。

この点、退職の意思表示の撤回が争われた裁判例(全自交広島タクシー支部事件:広島地裁昭和60年4月25日)では、退職の意思表示は「労働者が使用者の同意を得なくても辞めるとの強い意志を有している場合を除き、合意解約の申し込みであると解するのが相当」と判示されています。

これは、退職の意思表示を撤回できるか否かは、その労働者に「使用者の同意がなくても退職する」という強い意志があるか否かといった点で判断されることを意味しますから、会社に提出した書面に”退職届”と記載したか、”退職願”と記載したかといった形式的な問題は全く関係ないことになります。

”退職願”は「退職をお願いすること」であり、”退職届”は「確実に退職する意思を届け出ること」だから、”退職届”と書面に記載した場合には「使用者の同意がなくても退職するという強い意志がある」と考える人がいるかもしれませんが、上記の裁判例はそのような”願”と”届”の文字の違いで判断するとは一切言っていませんので、これも誤りと言えます。

そもそも裁判の手続では形式的なものよりも、当事者の実質的な意思がどこにあったのかといったものを判断基準にすることが一般的です。

そのため、仮に会社に提出した書類に”退職願”と記載していても、そのことが「使用者の同意がなくても退職するという強い意志がある」ということを推定させる証拠の一つとなる可能性はあっても、「”退職願”と記載していたから使用者の同意がなくても退職するという強い意志があった」と形式的に判断されることはありません。

大切なのは、退職の意思表示をした労働者に「使用者の同意がなくても退職するという強い意志」があったかなかったかという点です。

ですから、会社に提出した書類に”退職届”と記載していようが”退職願”と記載していようが、はたまた”辞表”や”依願退職願い”、”ご通知”や”お知らせ”と記載していても、本人に「使用者の同意がなくても退職するという強い意志」がなかったのであれば、問題なく退職の意思表示の撤回をすることは可能なのです(※もちろん、会社側が退職の意思表示に承諾を与える前であることが必要です)。

しかも、会社側が退職の意思表示の撤回に応じない場合に、仮に裁判になったとしても、「使用者の同意がなくても退職するという強い意志があった」ということを証明しなければならないのは会社側の方ですから、仮に”退職届”と記載した書面を会社に提出していても、会社側がその退職の意思表示をした労働者に「使用者の同意がなくても退職するという強い意志があった」ということを立証しなければならなくなります。

そして、そのような立証をすることは、極めて困難なので、結果的に退職の意思表示の撤回は認められることになるでしょう。

このように、法律的には”退職届”と記載していても”退職願”と記載していても、その一文字によって法律的な効果に違いが生じるということはありません。

会社に提出した退職の意思表示をする書類に”退職届”と記載している場合であっても、会社側がその退職の意思表示を承諾する前であれば何ら問題なく退職の意思表示を撤回することができますので、誤解しないよう注意してもらいたいと思います。

退職届を撤回することはできるのか?


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