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採用延期期間中の賃金が支払われない場合の労働局の援助申立書

このページでは、内定先の企業の都合によって入社予定日の繰下げや採用延期がなされた場合において、その採用延期期間中の賃金(当初の入社予定日以降の賃金)が支払われない場合に、労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。

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なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。

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内定先企業の都合による採用延期(入社日の繰下げ)で採用延期期間中の賃金が支払われない場合における労働局への紛争解決援助申立書の記載例

(1)採用延期期間中の賃金が全く支払わない場合


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 奈良県桜井市〇〇三丁目〇番〇号
氏名 真手奈伊代
電話番号 080-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 大阪市中央区〇〇一丁目〇番〇号
名称 株式会社ウェイトアマンス
代表者 塩基須瑠造
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

採用延期期間中の賃金を支払うよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、ダンゴムシの殻を原材料とした建築資材「スーパーダンゴウォール」を製造・販売する従業員88名の株式会社であり、大阪市に本社営業所があるほか和歌山県内にダンゴムシ養殖場と建築資材の製造工場を有している。
 申立人は、平成〇年〇月に違反者の採用試験を受け、翌〇年の〇月から違反者の養殖場においてダンゴムシの養殖業務に携わる労働契約で内定通知を受けていたが、社内における人員配置の再編計画を実施したことに伴い被申立人が入社予定日を1か月繰り下げたことから、当初の入社予定日であった平成○年〇月○日から採用延期後の入社日である同年〇月○日までの1か月間、被申立人の事業所において就労する機会を失った。
 この採用延期については申立人には何ら責任がなかったため採用延期期間中の賃金が支払われるものと考えていたが、被申立人は採用延期期間中の賃金を一切支払おうとしない。
 しかしながら、使用者の責めに帰すべき事由における休業においては使用者はその休業期間中の賃金を支払う義務があることは法律上明らかであるから(民法536条第2項前段)、社内における人員配置の再編計画という被申立人の責めに帰すべき事由における採用延期についても被申立人がその採用延期期間中の賃金を支払う義務があるというべきである。
 したがって、採用延期期間中の賃金(休業手当)を支払わない被申立人には法令上の違反があるといえる。
 なお、仮に被申立人の行った採用延期の理由に民法上の帰責事由が存在しない場合であっても労働基準法第26条の休業手当の規定は労働者の最低限の生活を保護するため平均賃金の最低6割を罰則(労働基準法第120条)をもって確保するために設けられた規定であるから、労働基準法第26条における「責めに帰すべき事由」は民法536条2項における「責めに帰すべき事由」より広く使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するべきであり、天災事変などの不可抗力でもない限り労働基準法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」に該当すると考えるべきであるから(ノースウエスト航空事件:最高裁昭和62年7月17日)、採用延期期間中の賃金を全く支払わない被申立人は少なくとも労働基準法第26条の規定に違反していることは明白である。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年○月○日、内定先企業である被申立人から、社内における人員配置の再編計画を実施することになったため入社時期を1か月間繰り下げる旨の通知を受けた。
 申立人は当初の入社予定日の1週間前に勤務していたアルバイト先を退職する手続をすませていたため、万が一採用延期期間中の給与が支払われない場合には生活費の不足で困窮してしまう恐れがあったことから、同月〇日、念のため採用延期期間中の賃金が支払われるか確認する電話を被申立人に行ったが、被申立人の担当者は「入社日までは当社の社員ではないから採用延期期間中の賃金や休業手当は支払えない」という趣旨の回答に終始し、採用延期期間中の賃金の支払いを明確に否定した。
 申立人はその後も数回被申立人に電話を入れ採用延期期間中の賃金の支給がないと生活が立ちいかなくなる点を相談したものの被申立人が一切取り合おうとしないため、平成○年〇月○日付の採用延期期間中の賃金の支払いを求める申入書を作成し被申立人に内容証明郵便で送付したが、現在に至るまで採用延期期間中の賃金は一切支払われていない。

4 添付資料

・内定通知書の写し 1通
・平成○年○月〇日まで入社日を繰り下げる旨を告知した通知書の写し 1通
・採用延期期間中の賃金の支払いを求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。

(2)平均賃金の60%しか採用延期期間中の賃金が支払われない場合


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 奈良県桜井市〇〇三丁目〇番〇号
氏名 真手奈伊代
電話番号 080-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 大阪市中央区〇〇一丁目〇番〇号
名称 株式会社ウェイトアマンス
代表者 塩基須瑠造
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

採用延期期間中の賃金を支払うよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、ダンゴムシの殻を原材料とした建築資材「スーパーダンゴウォール」を製造・販売する従業員88名の株式会社であり、大阪市に本社営業所があるほか和歌山県内にダンゴムシ養殖場と建築資材の製造工場を有している。
 申立人は、平成〇年〇月に違反者の採用試験を受け、翌〇年の〇月から違反者の養殖場においてダンゴムシの養殖業務に携わる労働契約で内定通知を受けていたが、養殖場で飼育する予定であった中国産ダンゴムシの卵の輸入に遅延が発生したことを理由として被申立人が入社予定日を1か月繰り下げたことから、当初の入社予定日であった平成○年〇月○日から採用延期後の入社日である同年〇月○日までの1か月間、被申立人の事業所において就労する機会を失った。
 この採用延期については申立人には何ら責任がなかったため採用延期期間中の賃金が支払われるものと考えていたが、被申立人は採用延期の原因は原材料の不足(入荷遅延)という企業側の責任の範囲外の問題であるとの理由で採用延期期間中の賃金を支払っていない。
 しかしながら、使用者の責めに帰すべき事由における休業においては使用者はその休業期間中の賃金を支払う義務があるし(民法536条第2項前段)、仮に民法上の帰責事由が存在しない場合であっても労働基準法第26条の休業手当の規定は労働者の最低限の生活を保護するため平均賃金の最低6割を罰則(労働基準法第120条)をもって確保するために設けられた規定であるから、労働基準法第26条における「責めに帰すべき事由」は民法536条2項における「責めに帰すべき事由」より広く使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するべきであって、天災事変などの不可抗力でもない限り、原材料の不足といった原因であっても労働基準法第26条における「使用者の責めに帰すべき事由」に該当すると考えるべきである(ノースウエスト航空事件:最高裁昭和62年7月17日)。
 したがって、採用延期期間中の賃金(休業手当)を支払わない被申立人には法令上の違反がある。

3 紛争の経過

 申立人は平成○年○月○日、内定先企業である被申立人から養殖のための中国産ダンゴムシの卵の輸入が滞ったため入社時期を1か月間繰り下げる旨の通知を受けた。
 申立人は当初の入社予定日の1週間前に勤務していたアルバイト先を退職する手続をすませていたため、万が一採用延期期間中の給与が支払われない場合には生活費の不足で困窮してしまう恐れがあったことから、同月〇日、念のため採用延期期間中の賃金が支払われるか確認する電話を被申立人に行ったが、被申立人の担当者は「原材料の不足は弊社の責任ではないから採用延期期間中の賃金は支給されません」という趣旨の回答を行い、採用延期期間中の賃金の支払いを明確に否定した。
 申立人はその後も数回被申立人に電話を入れ採用延期期間中の賃金の支給がないと生活が立ちいかなくなる点を相談したものの被申立人が一切取り合おうとしないため、平成○年〇月○日付の採用延期期間中の賃金の支払いを求める申入書を作成し被申立人に内容証明郵便で送付したが、現在に至るまで採用延期期間中の賃金は一切支払われていない。

4 添付資料

・内定通知書の写し 1通
・平成○年○月〇日まで入社日を繰り下げる旨を告知した通知書の写し 1通
・採用延期期間中の賃金の支払いを求める申入書の写し 1通

以上

 


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、A4用紙でプリントアウトするようにしてください。

※「援助を求める理由」の欄について

援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を起こしていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。

採用内定は法律的に考えれば入社予定日から会社と労働者の間に雇用関係が生じる労働契約が有効に成立しているということになりますので、企業側の都合によって入社予定日を繰り下げる(採用延期を行う)という行為は、会社の都合で休業を行って従業員を休ませる会社都合の休業と何ら変わりませんから、会社都合による休業日に賃金の支払いを求めることが出来るかという論点と同じ問題が生じることになります。

この点、上記の事例では、使用者の責めに帰すべき事由における休業においては、労働者は使用者に対してその休業期間中の賃金の支払いを求めることが出来るという「民法536条第2項前段」に規定された休業期間中における賃金支払請求権をまず明記し、それに加えて、仮に会社側に民法上の帰責事由が存在しない場合であっても労働基準法第26条の休業手当の規定は労働者の最低限の生活を保護するため平均賃金の最低6割を罰則(労働基準法第120条)をもって確保するために設けられた規定であるから、労働基準法第26条における「責めに帰すべき事由」は民法536条2項における「責めに帰すべき事由」より広く使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するべきであるという最高裁判所の判例(ノース・ウエスト航空事件・最高裁昭和62年7月17日)の考え方を根拠とした主張を展開しています。

この考え方に立つと、「企業内の人員の再配備」という企業側に帰責性のある原因(※上記の記載例の(1)の原因)で採用延期を行う場合は民法第536条第2項前段の規定に従って採用延期期間中の賃金の100%をの支払いを求めることが可能ですし(※ただし就業規則や内定通知書に「採用延期の場合は60%の賃金を支払う」などと記載されている場合を除く)、たとえ「原材料の不足」といった原因(※上記の記載例の(2)の原因)であっても、少なくとも労働基準法第26条における「使用者の責めに帰すべき事由」に該当することになりますから、天災事変などの不可抗力でもない限り、企業側は採用内定期間中の賃金を支払う義務があるということになります。

なお、この点の具体的な問題点はこちらのページで詳細に解説していますので参考にしてください。

▶ 会社側の都合で採用延期(入社日の繰下げ)された場合の対処法

※「紛争の経緯」の欄について

紛争の経緯の欄には、会社との間に発生した紛争がどのようなきっかけで発生し、会社とどのような交渉を行ってきたのか、ということを記載します。

上記の事例では、会社に対して採用延期期間中の賃金(休業手当)が支払られないと生活に困窮してしまうことを内定先の企業に電話で相談したものの採用延期期間中の賃金(休業手当)が未だ支払われていないということを記載しています。

※「添付書類」の欄について

添付書類の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。

上記の事例では、内定を受けたことを明らかとするために「内定通知書」の写しを、「会社の都合による採用延期があったこと」を明らかにするために会社から送付されてきた「平成○年○月〇日まで入社日を繰り下げる旨を告知した通知書」の写しを、また会社側に書面で請求しても支払いがなかったことを明らかとするために「採用延期期間中の賃金の支払いを求める申入書」の写しを添付することにしています。

ちなみに、「採用延期期間中の賃金の支払いを求める申入書」の記載例についてはこちらのページに掲載していますので参考にしてください。

▶ 採用延期(入社日の繰下)における延期期間中の賃金の請求書

なお、裁判所における裁判と異なり、労働局への紛争解決援助の申立に証拠書類の添付は必須ではありませんので、紛争の事実を証明できるような文書やデータ(画像や音声・画像記録など)がない場合には添付書類の項には「特になし」などと記載して申し立てをしても構いません。

(※「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)

様式について

労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。

上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。

様式 | 東京労働局

もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。