「降格したから給料もさげるよ」と言われたら?

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驚くサラリーマン

会社が、人事上の措置として部長から課長へ、課長から平社員へといったように役職を引き下げることがあります。

このような降格処分には「部長としての能力が足りないから」とか「課長としての資質が足りないから」といったもっともらしい理由を根拠とすることが多いですが、実際には会社が給料を下げる口実として役職の引き下げを行っている場合も多いです。

降格処分という人事権の行使は、会社の経営上の裁量権の範疇にあると考えられるため、会社の一方的な判断で役職を引き下げることも認められる余地はあります。

しかし、このような降格処分(役職の引き下げ)が賃金の引き下げの隠れ蓑として使われる場合は、労働者の同意を得ることなく会社側の勝手な判断で労働者の労働条件を引き下げることになりますから、その降格処分の有効性が問題となってきます。

そこで、ここでは役職の引き下げなど降格処分に基づく賃金の引き下げが認められるかという問題について考えてみることにいたしましょう。

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降格処分を行うには就業既定の根拠が必要か?

降格処分を理由とする賃金の引き下げの有効性を判断する場合は、賃金の引き下げの原因である「降格処分(役職の引き下げ)」が有効か否かということを考える必要があります。

この点、降格処分(役職の引き下げ)は「人事権の行使」と考えられますから、使用者(会社・雇い主)の自由な判断で決めることができるとも思えます。

しかし、降格処分を人事権の範疇にあるものととらえ、使用者の自由な裁量によって決められることを認めてしまうと、労働者は使用者の勝手な判断によって役職が引き下げられることになりますから、労働者の労働条件の不利益変更を無制限に使用者に認めてしまうことにつながり不当な結果となってしまう可能性もあります。

そこで、役職の引き下げなどの降格処分を行う場合は、就業規則の根拠規定が必要となるのではないか?という問題が生じてくることになります。

もっとも、この「降格処分を行う際に就業規則に根拠規定が必要か」という問題については、裁判所の判断もわかれており、一概に「必要」とか「必要ない」と言えるものではないのでケースバイケースで考えるしかないでしょう。

就業規則の根拠規定は必要ないと判断されたケース

エクイタブル生命保険事件(東京地裁平成2年4月27日)

※使用者の人事権に基づく降格処分の行使を有効とした事例。

バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件(東京地裁平成7年12月4日)

就業規則の根拠規定が必要と判断されたケース

豊光実業事件(大阪地裁平成12年5月30日)

※賃金の減額をともなう降格は労働契約の内容を変更するものであるため、労働者の承諾を得るか就業規則に根拠がなければならないという理由で降格処分の行使を無効とした事例。

※なお、就業規則による根拠規定が必要と判断される場合でも、就業規則の変更を行って降格処分を行った場合には、就業規則の変更が無効と判断される場合もあります。

就業規則が変更されて賃金が減額されたときの対処法

人事権の行使としての降格処分が人事権の濫用として無効となる場合

前述したように、役職の引き下げという人事権の行使には、就業規則に要る根拠が必要とされる場合と、就業規則の根拠は必要ないとされる場合に判断が分かれます。

しかし、たとえ降格処分に「就業規則の根拠規定は必要ない」と判断される場合であっても、役職の引き下げ(降格処分)という人事権の行使それ自体が権利の濫用として無効と判断される場合があります(東京厚生会事件:東京地裁平成9年11月18日、バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件:東京地裁平成7年12月4日)。

降格処分が人事権の濫用として無効と判断される場合には、降格処分に連動する賃金の引き下げも無効となりますから、降格処分という人事権の行使それ自体に問題はないかということも判断の基準として重要になります。

降格処分が人事権の濫用となるか否かの判断基準

降格を含む人事権の行使は、使用者の経営上の裁量判断に属するものであって、社会通念上著しく妥当性を欠き権利の濫用に当たると認められないかぎり違法とはならないと考えられています(バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件:東京地裁平成7年12月4日)。

そして、この権利濫用に該当するか否かは、次の4つの事情を総合的に考慮して判断されることになります。

① 業務上の必要性の有無・程度
② (労働者の)能力・適性の欠如等の帰責性の有無・程度
③ 労働者の被る不利益の性質・程度
④その企業における昇進・降格等役職制度の運用状況など

参考判例:東京厚生会事件(東京地裁平成9年11月18日)

降格処分による賃金の引き下げがなされた場合の対処法

以上のように、役職の引き下げなど降格処分に連動して賃金が引き下げられる場合は、裁判所の判断もそれを有効と認める場合もあれば無効とされる場合もあります。

そのため、もしこのような賃金の減額を伴う降格処分を受けた場合は、速やかに弁護士などの法律専門家に相談することが最善と思われます。

前述したように、仮に降格処分が人事権の範疇に入る性質のものとして有効とされる場合であっても、その人事権の行使自体が権利の濫用として無効と判断され、賃金の減額も無効となる場合もありますので、会社の言い分を丸呑みするのではなく、冷静に判断して弁護士など法律専門家と協議のうえ対策をとって行くことが必要でしょう。

参考サイト

東京厚生会事件|独立行政法人労働者研究・研修機構

http://www.jil.go.jp/rodoqa/kikaku-qa/hanrei/data/019.html

バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件|独立行政法人労働者研究・研修機構

http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/034.html


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