結婚(婚姻)したことを理由に解雇された場合の対処法

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女性が職場で様々な差別を受けることは未だにあるようですが、その数ある差別の中でも比較的多く見受けられるのが、結婚を理由として解雇される場合です。

女性の場合、結婚の後は”出産”することが多く、そうなると長期間会社を休職(産休)することが予想されるため、労働力を確保するため結婚が決まった段階で即解雇を言い渡し、別の従業員を雇い入れるといった会社は今でも数多くみられるようです。

もちろん、そのような結婚を理由とした解雇は不当な処分であり違法なものですから、法律的には無効です。

しかし、実際に解雇された女性労働者は、どのような法律の根拠から結婚を理由とした解雇が無効であって、どのような対処法をとれば会社の違法な姿勢を正すことができるかわからない場合も多く、会社に反論すらできないまま泣き寝入りして会社を退職してしまうことも多いのではないかと思います。

そこで今回は、結婚を理由に解雇されることはどのような法律に基づいて無効(違法)と判断されるのか、また、実際に結婚を理由に解雇された場合にはどのような対処法をとればよいのか、といった問題について考えてみることにいたしましょう。

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結婚を理由にした解雇が無効になる根拠

結婚したことだけを理由とした解雇は労働契約法に違反する

まず、会社が労働者(従業員)が結婚したことを理由に解雇することが無効と判断されるのは、労働契約法という法律に違反することが一つの根拠となっています。

労働契約法の第16条では、会社(使用者・雇い主)が労働者(従業員)を解雇する場合は、その労働者を解雇することについて「客観的に合理的な理由」が存在することが必要で、仮にその「客観的に合理的な理由」があったとしても、その理由によって解雇することが「社会通念上相当」であると認められない限り、その解雇は無効と判断されると規定されています(労働契約法16条)。

【労働契約法第16条】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

これを結婚したことを理由に解雇された場合に当てはめてみると、”結婚したこと”だけを理由に解雇される場合は、その解雇に「合理的な理由」は存在しませんし、”結婚したこと”だけを理由に解雇という重い処分を受けることも「社会通念上相当」とは当然言えませんから、”結婚したこと”だけを理由になされた解雇は無効と判断できるでしょう。

なお、これは社内結婚をしたことを理由に男性(または女性)の一方が解雇される(または退職を強要される)場合も同様です。

仮に同じ会社で働いている労働者どうしが結婚したとしても、夫婦が同一の職場にいるからといって仕事に支障が出るわけではありませんから、解雇することに合理的な理由はなく社会通念上相当とも認められませんのでその解雇は権利の濫用として無効と判断されるでしょう。

結婚したことだけを理由とした解雇は男女雇用機会均等法にも違反する

また、結婚したことだけを理由とする解雇が無効と判断されるのは、男女雇用機会均等法という法律に違反することもその根拠となっています。

男女雇用機会均等法(※正式名称は”雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律”)の第9条2項には「事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない」と明確に規定されていますので、女性労働者が結婚したことのみを理由として行った解雇は法律に違反し無効と判断されます。

【男女雇用機会均等法第9条】

事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。

※なお、男女雇用機会均等法は基本的に”女性”労働者の保護を規定した法律であるため結婚を理由に”男性”労働者が解雇された場合には男女雇用機会均等法の第9条を使って解雇の無効を主張することは難しいと考えられます。

そのため、結婚したことを理由に”男性”が解雇された場合には前述したように労働契約法第16条の規定(一般的な解雇の法理)を使って無効を主張していくことになろうかと思います。

入社時に「結婚したときは退職します」などという誓約書にサインしていたとしても退職する必要はない

前述したように、結婚したことのみをもって従業員を解雇することは労働契約法や男女雇用機会均等法という法律に違反するため認められません。

これは、入社時に「結婚したときは退職します」などという誓約書(念書)にサインしていた場合であっても同様で、このような誓約書は結婚した従業員に退職を強要することを正当化するためのものに他ならず、前述した労働契約法や男女雇用機会均等法の趣旨に反する違法なものといえますので、そのような合意は無効と判断できるでしょう。

したがって、たとえ入社時に「結婚したときは退職します」などという誓約書に署名していたとしても、その誓約は法律に違反する無効なものであり、会社から退職を促されたとしてもそれに従う必要はないということになります。

結婚(婚姻)したことを理由に解雇された場合の対処法

以上のように、結婚(婚姻)したことだけを理由に解雇された場合には、その解雇は法律的に無効となりますので、会社に対して「解雇を撤回しろ」と要求することができます。

もっとも、会社から解雇を言い渡された際に、具体的にどのような対処をとればよいかわからない人も多いと思いますので、具体的に結婚(婚姻)したことを理由に解雇された場合の対処法を説明していくことにいたします。

① 解雇に対する異議の意思表示をしておくこと

まず、結婚を理由に解雇された場合には、その解雇に承諾できないことを示すため、会社に対して「解雇に対する異議の意思表示」をしておかなければなりません。

解雇された際に、そのまま何もしないでいると「解雇を黙認した」と判断されて後で解雇の効力を争う際に不利な事情の一つにされてしまいますので、解雇されたらすぐに「異議の意思表示」を行うようにしましょう。

なお、解雇に対する異議の意思表示は口頭で行うことも可能ですが、後で「言った、言わない」の水掛け論になってしまいますので、「解雇の無効・撤回通知書」を作成して会社に内容証明郵便などで郵送しておくようにした方がよいでしょう。

≫ 解雇の無効・撤回通知書【ひな形・書式】

≫ 解雇されたときにこれだけはやっておきたい4つのこと

② 会社に”解雇理由証明書”を発行するよう求めること

会社に「解雇の無効・撤回通知書」を内容証明郵便で郵送するのと並行して、会社に対して「解雇理由証明書」を発行を求めることも重要です。

会社は、労働者から退職の証明書(解雇の場合は解雇の証明書)の発行を請求された場合には遅滞なく発行することが法律で義務付けられており、退職の理由が解雇の場合にはその解雇の理由も証明書に記載しなければならない義務も負っています(労働基準法22条)。

【労働基準法22条】

第1項 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その解雇の理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、遅滞なくこれを交付しなければならない。

そのため会社から解雇の通告を受けた時点で会社に「解雇理由を記載した解雇理由の証明書を発行してください」と請求すれば、会社から解雇理由証明書を受け取ることができるでしょう。

もちろん、会社が結婚したことを理由に解雇している場合には、その解雇理由証明書の”解雇の理由”には「結婚したから」という文言が入っていることになるはずです。

この解雇理由証明書を受け取っていないと、後で裁判などになってから「解雇したのは結婚したことが理由ではなくて○○だったからだ」などと解雇の理由を勝手に変更する場合がありますので、解雇の理由を確定させておくためにも必ず発行を求めておく必要があります。

なお、会社が解雇理由の証明書を交付しない場合は労働基準法違反ということになり、労働基準監督署に違法行為の是正申告を行けば監督署から会社に対して「証明書を発行しなさい」という指示が出されることになりますので、どうして発行してもらえない場合には最寄りの労働基準監督署に相談に行ってください。

解雇の理由が記載された証明書の交付を請求する手順

解雇の理由の証明書の交付を請求する通知書【ひな形・書式】

③ 会社が解雇を撤回しない場合には、労働局に紛争解決援助の申立を行う

会社に対して解雇の無効・撤回通知書を送付しても会社が解雇を撤回しない場合には、労働局に”個別労働紛争解決の援助の申立”を行うことをお勧めします(※④で後述する労働局の調停制度を利用するのも良いです)。

各都道府県に設置された労働局では、労働者と事業主(会社)との間で争いが発生した場合には、その紛争を解決するための助言や指導、勧告を行うことができますから、労働局に紛争解決の援助の申立を行うことで会社が解雇の撤回を行うよう促してもらうことが期待できます。

なお、労働局への申立は無料で利用することができますので、経済的な負担も考えなくて済むでしょう。

④ 会社が解雇を撤回しない場合には、労働局に調停の申立を行う

会社に対して解雇の無効・撤回通知世を送付しても会社が解雇を撤回しない場合には、労働局に”個別労働紛争解決の援助の申立”を行う以外に、労働局が実施する”調停”を申立てても良いと思います。

労働局が主催する調停は、労働問題に詳しい弁護士や学識経験者などが調停委員となって労働者と事業主(会社・雇い主)の間に発生した紛争を解決するための調停案を出し、両者の話し合いを手助けする制度です。

この労働局の調停を利用すれば、労働局から選任された調停委員が間に入って中立的な立場から会社との間で話し合いを進めてくれますので、会社側が結婚を理由とした違法な解雇を撤回してくれる可能性が高くなると思います。

なお、労働局に調停を申し立てる場合の申立書は厚生労働省のウェブサイトからダウンロードすることができますので、興味がある方はプリントアウトしてみるのも良いでしょう。

≫ 職場でのトラブル解決の援助を求める方へ |厚生労働省

なお、労働局の主催する調停も無料で利用することができます。

⑤ 弁護士などの法律専門家に相談する

労働局に紛争解決の援助の申立や調停の申立を行っても解決しない場合には、弁護士などの法律専門家に相談して有効な解決法を見つける必要があります。

労働局が間に入っても解決しないということは、よほど解雇をしてしまいたいか、解雇を撤回しなくても訴えられることはないと高をくくっているかのどちらかだと思いますので、そのまま放置しても問題は解決しないでしょう。

そのため、労働局に申立を行っても会社が解雇を撤回しない場合には、弁護士に示談交渉をしてもらうか、一般の民事訴訟や労働審判の申立、または裁判所における調停などの手続きを進めてもらうほかないかもしれません。


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