面接と違う内容の労働条件が雇用契約書に記載されている場合


労働者が使用者との間で労働契約を結ぶ場合、面接で説明を受けた内容が記載された労働契約書(雇用契約書)にサインをし、その控えを受け取るのが一般的です。

しかし、ブラック企業などでは面接の際に説明した労働条件とは異なる労働条件を労働契約書(雇用契約書)に記載して雇い入れようとする求職者にサインを求める事例が多くあるようです。

面接先の企業から労働契約書を提示された場合、面接で説明された内容がそこに記載されていると考えるのが通常の感覚ですから、あらためて労働契約書(雇用契約書)を隅から隅まで事細かくチェックしてからサインする人はあまり多くないでしょう。

そのため、実際に働き始めた後に実際に支給された給料や休日の日数が少ないことに疑問を感じ労働契約書を確認してみたところ、面接の際に受けた内容と違う労働条件が労働契約書(雇用契約書)に記載されていたことに初めて気づいた…といったようなトラブルが発生してしまうのです。

そこで今回は、面接で説明された労働条件と異なる労働条件が労働契約書(雇用契約書)に記載され、面接の際の説明より低い賃金や休日などしか与えられない場合の具体的な対処法について考えてみることにいたしましょう。

※なお、面接の際に説明を受けた労働条件や待遇が労働契約書(雇用契約書)にきちんと記載されてはいるものの、実際に働き始めてみるとそれよりも低い労働条件や待遇で働かされてしまっているというような場合の対処法についてはこちらのページで解説しています。

▶ 実際の賃金・休日等が面接や労働契約書の内容と異なる場合

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面接で説明された労働条件と異なる労働条件が労働契約書(雇用契約書)に記載されている場合、法律上どのような問題があるといえるか

前述したように、ブラック企業などでは、面接で説明した労働条件よりも低い労働条件を労働契約書に記載し、その低い労働条件で労働者を働かさせるという行為が稀に見られるようです。

この場合、法律上どのような違反があるかという点が問題となりますが、このように面接で説明された労働条件よりも低い労働条件が労働契約書に記載されているよう事案については、使用者における「労働契約の内容の理解促進義務」に違反する可能性があるという点が考えられます。

常識的に考えれば、一般の労働者と使用者(会社・雇い主)との間ではその交渉力に差があるのが通常ですので、採用時の面接や労働条件を決める交渉の際に労働者を保護することが必要になります。

そのため、労働契約法(労働基準法ではありません)という法律では「労働契約の内容の理解促進義務」の規定を設けて、使用者側が労働者を雇い入れる際にその労働条件を書面で提示して労働者の理解を深めることを求めています(労働契約法第4条)。

【労働契約法第4条】

第1項 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
第2項 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

この点、前述したように労働者が面接の際に説明を受けた労働条件より低い労働条件が記載された労働契約書にサインをしてしまい、その低い労働条件で働くことを強制されているという状況は、労働者が書面で提示された労働条件について十分に理解できていなかったと判断されますから、使用者側はこの「労働契約の内容を理解促進させる義務」を怠ったと考えることが可能です。

したがって、使用者が「面接で説明した労働条件よりも低い労働条件を労働契約書に記載し、その低い労働条件で労働者を働かさせる」という行為は労働契約法第4条に規定される「労働契約の内容の理解促進義務」に違反する違法な行為であるということができます。

違法だがその違法性を証明するのは困難

前述したように、使用者が「面接で説明した労働条件よりも低い労働条件を労働契約書に記載し、その低い労働条件で労働者を働かさせる」のは労働契約法第4条に違反する違法な行為であるといえます。

しかし、この労働契約法第4条の規定はあくまでも「訓示規定」であって単なる努力義務に過ぎませんから、この労働契約法第4条の規定を根拠として「契約書の内容を面接のときに説明していた内容に修正しろ」と請求するには少々難しいものがあります。

この場合、労働者としては「面接の時に説明していた内容と違うじゃないか」と抗議することは差し支えありませんが、会社側から「そんな説明していませんよ、契約書にもそんな労働条件は書かれていないでしょ」「労働契約書に記載されている条件を確認してサインしたんでしょ?、納得できないならサインしなけりゃよかったんじゃないの?」と反論されてしまうと、労働者の側としては面接の際の会話を録音でもしておかない限り、会社側の反論を覆すのはかなり難しいと思われます。

裁判に訴えたとしても、「その事実があった」という証拠を提出できない限り裁判所は「その事実はなかった」と判断するのが通常ですから、面接の際に説明を受けた内容が記載されている労働契約書が存在していないこのような事案では、「面接の際に説明を受けた内容の労働契約が結ばれた」ということを立証していくのは極めて困難な作業になるでしょう。

そのため、このように面接で説明された労働条件よりも低い労働条件を労働契約書に記載されてしまったというような事案では、その使用者側の行為は違法ではあるものの「その労働契約書に記載されている内容の労働条件は事実とは異なる労働条件だ」という主張を展開していくことは難しいのではないかと思われます。

面接で説明された労働条件と異なる労働条件が労働契約書(雇用契約書)に記載されている場合の対処法

(1)会社を辞める場合

面接で説明された労働条件と異なる労働条件が労働契約書(雇用契約書)に記載され、面接の際に受けた説明よりも低い労働条件に基づく待遇しか受けられないような場合の対処法としては、退職するのが一番良い方法ではないかと思われます。

このような詐欺的な手法で労働者を雇い入れている企業で働き続けたとしても、遅かれ早かれ何らかのトラブルが発生してしまうのは避けられないと思いますので、早めに縁を切った方が無難でしょう。

なお、退職する場合仮に契約期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)の場合には契約期間の途中で退職することになるため形式的には契約違反となりますが、それを根拠に損害賠償請求などをされたとしてもその損害額はたかが知れていますし、ブラック企業が訴えを起こすことは通常考えられませんから、有期雇用契約であっても退職して問題ないのではないかと思います。

▶ 契約期間の途中でもバイトやパートを辞めることはできる?

仮に裁判を起こされた場合は、面接時の内容と異なる内容の労働条件で契約書が作成されたことを裁判官に説明していくほかないと思います。

なお、会社が退職を妨害するような場合についてはこちらのページを参考に対処法を検討してください。

▶ 会社が辞めさせてくれないときの対処法